日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

最低賃金は全国一律引き上げを。緩やかな上昇なら雇用減らず、ブラック企業も淘汰。あわせて、技能実習制度廃止と内部留保課税を!

今日の要点

・政府・与党は最低賃金を早期に全国平均で1000円に引き上げる目標を掲げるようです。緩やかな最低賃金上昇なら、全体として雇用は減らず、ブラック企業淘汰、生産性向上等の効果が見込めます。本来は、全国一律にすべきです。

・問題は、執行を徹底することです。特に、外国人労働者については、従来から最低賃金制度が存在しても無視されてきました。技能実習制度を廃止して、国内で働く全ての労働者について最低賃金制度の実効性を高めるべきです。

・更に、内部留保課税を導入し、企業に賃上げのインセンティブを与えるべきです。企業の税負担は増えずに、賃上げを実現することが可能です。

最低賃金は、全国一律で緩やかに引き上げ続けるべき。

日経によると、政府・与党は最低賃金を早期に全国平均で1000円に引き上げる目標を、今年の骨太の方針に盛り込むようです。賃上げのペースも3%か5%かで議論していたようですが、3%を上回る方向で検討するとのことです。

政治的な背景について、日経は、参院選対策だと言っています。

地方への目配りは、夏の参院選を意識しているからだ。自民党は13年参院選の1人区で29勝2敗だったが、野党が候補者を一本化した前回の16年参院選は21勝11敗となった。東北5県や甲信越3県のほか三重、大分、沖縄で敗れた。自民党は昨年末、この11県を最優先で人やお金を割り振る「激戦区」に指定した。

最低賃金が低い地域は自民が敗北した地域とも重なる。青森、岩手、大分、沖縄は762円と、最も低い鹿児島に次いで低位にとどまる。山形も763円だ。地域経済や雇用問題への有権者の関心は高く、政府が水準を設定しやすい最低賃金に与党の関心が集まる。

www.nikkei.com

この見立てが正しいなら、面白いのは、自民党が地方の中小企業よりも一般の労働者の方を向いた政策を、選挙対策として掲げようとしていることです。もう、田舎の中小企業の支持団体よりも、普通のサラリーマンの方が自民党にとってさえ重要になりつつあるのでしょう。特に賃金という敏感な問題については、安倍政権は、これまでも賃上げの旗振り役を務めてきました。労働組合が全くあてにならない今、政権としてはうまいやり方です。

最低賃金引き上げは、雇用を減らしてしまうので、経済にはマイナスだ、という考え方が、1980年代頃までは主流でした。ところが、1990年代になると、アメリカはじめ各国で、これに反する実証分析が出てきました。更に、1990年代になってイギリスが最低賃金制度を導入したうえに最低賃金を段々と上げていく政策をとっても、雇用は減りませんでした。

このため、雇用が「必ず」減る、という主張はさすがに成立しなくなりました。最低賃金引き上げに慎重な立場のサーヴェイ論文でも、全体として雇用に影響がなくても、雇用が減る特定のグループはあり得るから、そこに注意すべき、という言い方になっています。

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/13j008.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB+%E6%9C%80%E4%BD%8E%E8%B3%83%E9%87%91+%E5%8A%B4%E5%83%8D%E4%BE%9B%E7%B5%A6+%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E7%A0%94%E7%A9%B6+%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%27

更に積極的に最低賃金引き上げのメリットを強調し、自民党の議論にも大きな影響を与えているのが、デービッド・アトキンソン氏の主張です。アトキンソン氏は、この問題に関する大量の論文のメタ分析の知見等も著書の中で紹介しています。結論として、最低賃金引き上げは、緩やかに行うなら、雇用には悪影響を与えないどころか、これまで働こうとしなかった女性等の労働参加率を高めて労働供給を増やし、企業の労働生産性を高めることで経済成長率を高める、という主張をしています。

アトキンソン氏の著書はこちらで、

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 

 タダでさわりが読める記事はこちらです。

toyokeizai.net

アトキンソン氏の主張は、自民党の「最低賃金の全国一元化の議員連盟」にも影響を与えています。同議連の務台俊介議員は、アトキンソン氏の「最低賃金と人口減少には相関がある」という主張を取り上げて、地方からの人口流出を止めるためにも、全国一律の最低賃金が必要だ、と言っています。

www.mutai-shunsuke.jp

アトキンソン氏による、全国一律の最低賃金が必要という主張はこちらで読めます)

toyokeizai.net

経済財政諮問会議の議論では、新浪剛史氏が民間議員ペーパーの共著者として説明、特に、最低賃金引き上げによる消費喚起と生産性向上のメリットを強調しています。世耕氏が経産相として立場上慎重、安倍総理も案外慎重に見えるコメントですが、先の日経の報道等を見る限り、少なくとも「全国平均で」1000円を目指す方針にはなるのでしょう。 

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0514/gijiyoushi.pdf

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0514/shiryo_05-1.pdf

私は、アトキンソン氏の主張が正しいと思います。韓国のように急激に最低賃金を引き上げると失敗するようですが、イギリスのように数%ずつ緩やかに引き上げ続けるなら、確かに、雇用中立または改善、労働参加率上昇、生産性向上、消費喚起といった効果が見込めるでしょう。

特に、地方のブラックな中小企業を淘汰して、日本全国で生産性を高める効果が重要です。現在の地方創生政策は、何が何でも地方に若者を縛り付けようという愚策ばかり。その目的は、政治的な既得権者ともなっている田舎の非効率的な中小零細企業の救済です。安倍政権からさえ見放されつつあるこうした企業のために、ちまちました補助金から東京の大学定員の制限まで、下らない政策を打ち続けるムダはもうやめるべきです。

地方創生政策だけでなく、あらゆる政策決定で、補助金頼り、政府の保護頼りの田舎中小企業が、日本の成長の芽を摘んでいます。こうした企業を緩やかに退場させるために、最低賃金の緩やかな上昇は、有効な手段になります。

そして、そのためには、「全国一律で」高い最低賃金を設定するという方法で構わないと思います。この点はまだ政府も調整不足のようですが、高い水準に合わせた全国一律最低賃金を実現すべきです。

技能実習制度の廃止で、外国人労働者含めて全国的に実効性ある最低賃金に。

以上のように、せっかく最低賃金を引き上げても、それが守られなければ意味がありません。労基の体制を強化すべきなのはもちろんです。それ以上に重要なのが、やはり外国人労働者について、最低賃金制度自体の執行を徹底して厳格化することです。

それには、やはり技能実習制度の廃止が必要です。もともと最低賃金労働が保障されているはずが、執行がいい加減なうえ、「実習」名目で寮費等を差し引かれることで、制度の意味がなくなっています。人間以下の生活を強いられることに耐えかねて職を変わることも禁じられている、現代の奴隷制を一刻も早く廃止しなければ、日本国民の生活も底上げされません。

「時給400円」で働かされていた外国人の悲惨 | 政策 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

失踪の技能実習生 最低賃金超は15%未満|日テレNEWS24

更には、本当に腹立たしく情けないことですが、外国人を人としてその権利を完全に保障する、つまり、外国人労働者社会保障と教育の人権を確立する必要があります。この点でコストの低い労働者、という扱いになると、たとえ最低賃金が同じでも、やはり労働者の生活水準は穴の開いたバケツ状態になり、全体としての向上が図れないからです。これが、企業の生産性向上をも阻んで成長率を押し下げることにもなります。

外国人労働者について、以前のブログをあらためて挙げておきます。

改正入管法施行。国は自治体に丸投げで、自治体は財源不足で準備できず。田舎のブラック企業は、新在留資格でなく、技能実習制度を継続利用。 - 日本の改革

更に内部留保課税。あらゆる手段で、賃上げの実現を!

こうして、最低賃金を引き上げる、その実効性を確保する、技能実習制度を廃止して外国人労働者の教育・社会保障上の権利を保障する、といった政策をしたうえで、賃上げ目的の内部留保課税を導入すべきです。これも、以前のブログで書いた通りです。

政府・与党・野党・国民は、力を合わせて、経団連の抵抗を排して、内部留保課税を実現しましょう! - 日本の改革

とにかく、あらゆる手段を使って、賃上げを実現し、経済の好循環を実現すべきです。この問題について、与党も野党もない、という姿勢で、政治家は臨むべきです。