日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

インスタのアカウントまで担保にする低格付け債権で出来た金融商品CLOの保有規制を強化し、国内投融資促すため、国債で家計向きバウチャー発行を。

今日の要点

・日本の金融機関が、低格付け企業への債権で組成したローン担保証券(CLO)を増やしています。CLOの危険性は、サブプライムローン危機を起こしたCDOと共通する部分があり、保有規制を強化すべきです。

・日本国内が低金利のうえ経済成長率も低いので、日本の金融機関がリスクの高い外債投資に頼っています。国内投融資を促すために、社会投資収益率の高い家計向きバウチャー発行を国債を財源に行うべきです。

融資条件の緩い債権を集めたCLOは危険。リスク・リテンション規制を大幅に強化すべき。

昨日、本ブログで、農林中金が巨額のローン担保証券保有しているのは問題だ、と書きました。

ローン担保証券(CLO)保有残高7.4兆円の農林中金、リーマン・ショック時の二の舞となるか。農協と金融事業の完全分離を! - 日本の改革

昨日、書き切れなかったのは、CLOを買い進めているのは、農林中金だけではない、ということです。ブルームバーグによれば、既に今年2月、金融庁が、3メガ銀行、ゆうちょ銀行、農林中金に対して、CLO投資について金融調査を行い、今後も調査を継続して保有拡大の動きがあれば個別調査を行う、としていました。

www.bloomberg.co.jp

CLOを組成する元の債権は、低格付け企業に対する債権です。日銀の3月のレポートによると、アメリカでは、低金利の上に好景気で借り手有利の状態が続いており、金融機関がリスクの高い融資を増やしているということです。これが、レバレッジドローンと呼ばれる低格付け企業向きの債権の増加と、そのレバレッジドローンを組み合わせて作ったCLOの増加につながっています。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/data/rev19j03.pdf

レバレッジドローンの特徴は、融資の契約を行う際に盛り込む特約事項である「コベナンツ」が、緩められていることです。つまり、借り手が借金を返せなくなったときに、債権を回収したり、担保になった資産を売却したりする権利について、かなり緩められているということです。野村総合研究所木内登英氏は、このため、投資家が高いリスクにさらされることになるので、レバレッジドローンは米国経済・金融が抱える大きな潜在的リスクの一つだ、としています。そして、CLOはサブプライムローンを引き起こしたCDOと違って安全だ、という見方に疑問を投げかけています。

fis.nri.co.jp

レバレッジドローンの担保条件の緩さの例については、FTの翻訳日経孫引きに出ていましたので、引用します。

多くのファンを持つ米化粧品会社アナスタシア・ビバリーヒルズのインスタグラムのページでは、同社の製品を巧みに使って眉や唇を完璧に仕上げる方法を教えてくれる。(中略)

プライベート・エクイティ(PE)ファンド、TPGキャピタルが同社の買収に6億5000万ドルを融資した際の契約書には、このアカウントがアナスタシア社の「一般無形資産」の一つとして挙げられている。

この担保には驚かされるが、より衝撃的なのは、この融資にはこれまで融資契約書の標準だった、借り手による資産移転の制限などの投資家保護条項がほとんど付いていない点だ。こうした条項は財務に問題が生じた場合、インスタのアカウントであっても投資家の担保に対する請求権を損なうとして批判されてきた。アナスタシア社とTPGはコメントを差し控えるとしている。 

www.nikkei.com

「借り手による資産移転の制限などの投資家保護条項がほとんど付いていない」とありますが、資産移転の「制限」さえないなら、担保であるアカウントの売却・換金はおろか、差し押さえさえ出来ない、ということかもしれません。だとすると、投資家は、借り手が借金を払えなくなったとき、全く守られないことになります。ちなみに、このアカウントのようですね。

www.instagram.com

そもそも論ですが、サブプライムローンのように個人向け債権を集めたCDOだろうが、レバレッジドローンのように企業向け債権を集めたCLOだろうが、リスクの高い借り手向けの債権を多数集めて一つの金融商品にした、という点は同じです。

リーマン・ショック後の世界の金融規制に大きな影響を及ぼした「ケイ・レポート」を作ったジョン・ケイ氏は、著書で、あるべき金融制度改革の一つにつき、以下のように述べています(ジョン・ケイ著・薮井真澄訳(2017)『金融に未来はあるか』ダイヤモンド社p300-301)。

仲介の鎖は短く、シンプルで直線的なものとする。市場参加者同士のを結ぶ鎖の輪は多過ぎる。貯蓄者と資本の使い手を結ぶ輪は、少なすぎて弱過ぎる。エンドユーザーとの取引よりも仲介業者同士の取引を優先したせいで、金融仲介のコストが過剰になり、金融システムは不安定化し、適切なコーポ―レートガバナンスと効率的な資本配分に必要な情報を生み出せなくなっている。既存の金融機関のトレーディング活動を支えるために資本をさらに積み増しても、こうした問題の解決に結びつかないのは明白だ。

金融に未来はあるか―――ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実
 

 つまりは、多数の債権を集めて金融商品を作ったり、そのまたファンドを作ったりするような「鎖の輪」は減らして、投資家と借り手との間に入る中抜き金融業者を出来るだけ少なくするべきだ、そのためには、金融商品自体をシンプルにすべきだ、という哲学です。

こうした理念から考えて、現状の金融庁によるCLOに対する規制、リスク・リテンション規制は、不十分です。内容は、要するに、レバレッジドローンを貸し付けた債権者(オリジネーター)が、その債権を売った後もリスクをある程度(5%以上)負担していなかったら、証券保有に伴う自己資本規制が厳しくなる(通常の3倍のリスクウェイトが適用される)というものです。ただし、「深度ある分析」によって不適切な原資産の組成がなされていないと判断できれば、この規制は適用されません。

https://www.jurists.co.jp/sites/default/files/newsletter_pdf/ja/ja_newsletter_201902_finance.pdf

CLO市場で高まる邦銀のプレゼンス――急拡大する証券化商品に死角はないか - ニュース・コラム - Y!ファイナンス

一言で言えば、最初に貸した債権者がほんの一部でもリスク負っていなかったら、自己資本に比べて普通より少ししか買ってはだめですよ、ただし、自分で債権のリスク等をある程度調べていたら(「深度ある分析」…)他の金融商品同様に買っていいですよ、ということです。

ケイ氏によれば、「既存の金融機関のトレーディング活動を支えるために資本をさらに積み増しても、こうした問題の解決に結びつかない」のですから、自己資本規制を通じた規制では不十分ということになりそうです。ただ、現状では、CLO保有をただちに規制するためには、このリスク・リテンション規制を強化するのが現実的でしょう。

まず、金融機関が「深度ある分析」をやろうがやるまいが、通常の金融商品より厳しい自己資本規制にする、つまりリスク・ウェイトを高めるべきです。そして、リスク・ウェイト自体も徐々に高めて、たとえば、経過措置を置きながら時間をかけて、3倍から10倍くらいにする、という形で、事実上、このような商品の保有を禁じてしまうべきです。ケイ氏が言うように、「仲介の鎖は短く、シンプルで直線的」するためには、まずは、このCLOというCDOまがいの多層的な商品を、日本の金融機関のバランスシートから外してしまうべきです。

国内の投融資機会を作るため、国債で家計向きバウチャー発行を。

CLO投資を規制すると同時に、日本の金融機関が、このようなリスクの高い債券を含めて、外債に投資せざるを得ない状況を変える必要があります。

国内の投融資機会を増やすには、規制改革、地方分権等の徹底した改革が必要ですが、一方で、マクロでの財政政策が何と言っても即効性があります。金融緩和は当然続けるべきですし、可能な限り更に緩和して国債購入を増やすべきですが、金融政策だけでは限界があります。そこで財政政策の出番になります。既にマーケットは、消費税増税時の財政政策を織り込み始めています。

www.nikkei.com

しかし、財政政策は、やり方が重要です。企業・団体向けの支出で無駄に基金等で滞留したり、地方の非効率的な企業がいつまでも延命させられて経済の新陳代謝が進まないのでは意味がありません。

このブログで訴えてきた通り、当面は国債を財源にして、金融緩和でそれを日銀に吸収させつつ、企業・団体向け支出ではなく、むしろ企業・団体向けの補助金を削って長期的な財源とすることで、家計向けの教育バウチャー、介護バウチャーを大規模に発行すべきです。これにより、需要を増やして経済成長を促し、国内に投融資機会を作ることで、国内の金融機関がしっかりした「目利き」をできるような状態にしていくべきです。

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