日本の改革

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ローン担保証券(CLO)保有残高7.4兆円の農林中金、リーマン・ショック時の二の舞となるか。農協と金融事業の完全分離を!

今日の要点

農林中金ローン担保証券(CLO)の保有残高が7.4兆円にのぼり、リスク管理について懸念されています。同証券は、企業融資に関する証券ですが、リーマンショック時に破たんしたサブプライムローン(個人向け融資を束ねた証券)と、信用度の低い借り手への融資を束ねて証券化した点は共通しているからです。

農林中金を含むJAバンクへの監査を強化するとともに、農協からJAバンクの有する金融事業を完全に分離し、日本の農業を強化するとともに、グローバルな金融リスクから遮断すべきです。

農林中金のCLO保有残高が7.4兆円、1年で倍増。CLOの健全性には懸念相次ぐ。

農林中金保有するCLO(ローン担保証券)残高は3月末時点で7.4兆円だった。前年同期(3.8兆円)に比べ2倍近くに増えました。このニュース、日経だけでなく、朝日も比較的大きく報じています。

農林中金のCLO残高、7兆円超 3月末時点、全てAAA格 :日本経済新聞

農林中金、CLO残高7兆4000億円に増加 案件見極め積み増し方針 - ロイターニュース - 経済:朝日新聞デジタル

この証券は、格付けの低い企業への融資をまとめて証券化したものです。リーマン・ショックの引き金となったサブプライム・ローンは住宅ローンで個人向けの融資を束ねたもので、CLOは企業向け融資を束ねたものなので、借り手が企業か個人かという違いはあります。しかし、どちらも、信用度の低い借り手への融資を束ねた証券という点は共通しています。

このCLOについて、全国銀行協会の藤原弘治会長邦銀の投資について「監視レベルを上げるべきだ」と述べています。

ローン担保証券の監視強めるべき 全銀協会長 :日本経済新聞

最近、証券を組成する企業向け融資の健全性について、欧米の金融当局が警告を発し始めています。FT社説(の翻訳の日経孫引き)によると、主要国の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)のクォールズ理事長(FRB副議長)は、1兆4000億ドル(約156兆円)規模のレバレッジドローン市場の一部について、現在調査をしているそうです。引用すると、

FSBは、レバレッジドローンを束ねて切り売りするローン担保証券(CLO)に焦点を合わせている。CLOには銀行と、米規制当局が低リスクと見なすようになった銀行以外の金融機関の両方が投資している。さらにレバレッジドローンのバブルは、信用市場がピークを迎えたことを示すさらなる証拠のように見える。

ということで、CLOに神経を尖らせている様子です。

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FRBのパウエル議長も、サブプライムローンのバブル時ほどのリスクではないとしつつ、警戒しています。日経から引用します。

パウエル議長は講演で「『サブプライムの再来だ』という人から『心配する必要はない』までいるが、真相はその中間にありそうだ」と述べた。いまのところ金融システムを揺るがすリスクは低いが、決して楽観はできないという趣旨だ。

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このように、日本の金融業界も、世界の金融当局も警戒するCLOの市場で、農林中金保有高は突出しており、世界が注視しています。日経によれば、市場推計では2018年末時点で約8千億ドル(約88兆円)のCLO全体のうち、約1割を国内勢が保有し、そのほとんどを農林中金が占めており、保有額は2年前の約2.5倍になったと言います。

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格付けは全てトリプルAだから安全だと農林中金は言いますが、もちろんそんなことは全くあてになりません。周知の通り、リーマン・ショック時のサブプライムローンも、でたらめな格付けが行われていたからです。

そもそも農林中金は、リーマン・ショック時の外債運用の巨額損失で経営破たん寸前まで追い込まれ、全国の農協が、これまた経営体力のぎりぎりまでかけて、1兆円もの増資を行い、ようやく乗り切ったという過去があります。

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それが喉元過ぎれば熱さ忘れて、今また、リスク管理が懸念される事態となっています。

農林中金はじめJAバンクの金融事業を農協から完全に分離すべき。

安倍政権の農協改革は、掲げた目標については評価できる部分もありましたが、残念ながら、農協の抵抗でほぼ骨抜きになりました。

農林中金との関係で重要なのは、農協から金融事業が分離されないまま温存されたことです。

2017年5月26日の日経記事でおさらいすると、2014年6月の農業改革では、地域農協の金融事業を都道府県の上部機関や農林中央金庫に譲渡し、経営資源を農協本来の経済事業に振り向けることを促しています。しかし、事業を残したまま周辺の農協と合併しても、現状維持でも良いということになっています。以下、記事から引用します。

農協の組合員は15年度で1037万人と1985年度に比べ3割近く増えた。准組合員と呼ばれる非農家組合員が2.3倍に拡大し、全体の6割弱を占めるようになったからだ。農中に集まる貯金の残高は100兆円に迫り、規模でメガバンクと肩を並べる。
農協は農家の組合だからこそ生損保、銀行兼業などの特権が認められている。非農業者を顧客に金融事業に注力する姿は農協の設立目的とかけ離れている。少なくとも准組合員や組合員以外の利用が、正組合員(農家)を超えないようにすべきだ。

農協は金融依存を改め本来の姿に戻れ :日本経済新聞

このように、農業などやっていない准組合員の資金を日本中で吸い上げて、農協の赤字部門の補填に使ってしまっています。このため、競争力のない農家が、農林中金をトップとするJAバンクによって守られています。これでは、農協以外の新規参入者は、最初から資金的バックアップの点で、極めて不利なスタートラインに立たされることになります。

もちろん他にも、競争力のある株式会社等の参入は農地所有禁止等の参入規制で阻まれ、高関税と国家貿易で海外の農産品も遮断され(TPPでは関税率引き下げ対象の割合は参加国で断トツに低くなって)います。これにより、国内消費者は高い農産品を買わされています。

そもそも、農林中金が農業融資などほとんどやっていないことは、小泉進次郎氏が農林部会長時代に資産総額のうち、農業融資に回るのは、0.1%だ、という数字を挙げてアピールし続けた通りです。

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そして、農林中金は巨額の資産の運用先に困って、低金利の国内ではなく、CLOのようなリスクのありそうなものも含めて、外債に投資しています。

一応、政府の農業改革では、先に書いた通り、金融事業を上部機関に譲渡するか、金融事業を残して周囲の農協と合併するか、何もしないか、のどれかを、農協の「自主的な改革」として選ぶ、ということになっていました。案の定、金融事業を農林中央金庫等の上部機関に譲渡した農協は、現在まで3つしかありません。農協に自主改革など、出来るはずがないのです。

農協が生き残るためには 論説委員 志田 富雄 :日本経済新聞

本当に日本の農業の成長力を高めるためには、農協と金融事業の分離を徹底する必要があります。山下一仁氏の案では、農業協同組合法と地域協同組合法の2法を制定して、地域組合は、これまでJAが行ってきた金融事業や生活資材供給を行い、JA農業部門は解散するか、新たに作られる農協に移管すべき、としています。

bizgate.nikkei.co.jp

私は端的に、JAバンクは信用金庫や信用組合等にしてしまっても良いように思いますが、制度設計の仕方については、山下氏の主張する新たな地域協同組合でも構わないと思います。

いずれにせよ、農協から金融事業は完全分離して、日本の農業の競争力を高めると同時に、農林中金が直面するグローバルな金融リスクからの遮断も図るべきです。