日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

安倍総理は小池都知事に感謝すべき:政府の中途半端な目標(2050年までCO2を80%削減)を、小池知事が議長のメイヤーズ・サミットが助け船(100%削減)。

今日の要点

・東京で行われていたメイヤーズ・サミット(U20)が、パリ協定と政府間パネルの方向通り、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロという方針を決めました。また、再生可能エネルギーの比率を100%に高めること、等も決まりました。

・日本政府は、パリ協定の義務である長期目標提出が遅れたうえに、内容も不徹底で、2050年までにパリ協定等の求めるCO2の100%削減を下回る80%削減という内容でした。これに対し、G20直前に行われた今回のU20で、日本の小池知事が議長として、100%削減を取りまとめ。これに安倍総理が真摯に対応すれば、日本の名誉は守られるでしょう。

メイヤーズ・サミットが、パリ協定と政府間パネル通りの野心的な決定。

東京で昨日・今日と行われていた「Urban 20(U20)メイヤーズ・サミット」、通称、都市版サミットが、先ほどコミュニケを発表して、閉幕しました。会議概要等はこちらで、

www.metro.tokyo.jp

取りまとめられたコミュニケのポイントは、以下です。

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出所:東京都

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/05/22/documents/04_01.pdf

このコミュニケは、冒頭にある通り、G20に向けて、世界を代表する大都市の立場から、政策提言を行うものです。

地球温暖化対策についての要点は、上のポイントのハイライト部分にある通り、2050 年までに、①温室効果ガス排出実質ゼロの達成、②再エネ 100%の達成、等を行う、というものです。

具体的な達成方法は各都市が決めますが、日経によれば、小池知事は既に昨日、都独自の環境施策を一部発表しています。「CO2排出ゼロに向け、都内にある電気自動車(EV)用の充電器を現在の約2500基から25年に5000基に倍増させる計画。廃プラスチックの焼却量も30年までに4割削減を目指す」ということです。

www.nikkei.com

これだけではもちろん、2050年までのCO2排出ゼロにも再エネ100%にも、とても届きませんので、今後の計画をあらためて決める必要があります。東京都環境局に問い合わせたところ、今年12月に「ゼロエミッション東京戦略」を策定する方向ということでした。

ではなぜ、ここまで厳しい対策を、メイヤーズ・サミットは打ち出したのでしょうか?それは、パリ協定と政府間パネルが求める各国の義務を、大都市の立場で自国政府に遵守させたい、という意志からです。

パリ協定は、2050年までに「世界共通の長期削減目標として,産業革命前からの気温上昇を2℃未 満に抑制することを規定するとともに,1.5℃までへの抑制に向けた努 力の継続」を定めて、各国にそのための努力を求めています。

パリ協定 | 外務省

目標を「温度」で決めるのは、体感的には分かりやすいですが、各国政府が何をすれば良いかが、これだけでは不明確です。そこで、気候変動に関する政府間パネルIPCC)が昨年10月に韓国の仁川で開かれ、温室効果ガスの排出経路やリスク等につき、報告書を発表しました。

www.env.go.jp

その結果は極めて厳しいものでした。日経による報告書の要約を引用します。

特別報告によると気温上昇は既に1度に達し、早ければ2030年にも1.5度になる。そこで食い止められれば、熱波や豪雨の頻度、海面上昇による浸水リスクなどをある程度抑えられる。
ただし、それには30年の世界の排出量を10年に比べて45%減らし、50年ごろには実質ゼロにしなければならない。
果たして実現できるのか。「科学的には可能だが、経済社会の激変を伴う」というのが特別報告の執筆陣の答えだ。

温暖化特別報告が突きつける厳しい現実 :日本経済新聞

つまり、パリ協定と政府間パネルが求めるものは、「2050年までに温室効果ガスの排出ゼロ」なのです。

厳しい要求ですが、温暖化は既に現実の脅威となりつつあり、日本国民も実感し始めています。

今日、気象庁が発表したのですが、昨夏の猛暑は、やはり温暖化が原因だったようです。報道発表資料から引用します。

気象庁気象研究所、東京⼤学⼤気海洋研究所、国⽴環境研究所の研究 チームは、平成30年7⽉の記録的な猛暑に対する地球温暖化の影響と猛 暑の発⽣回数の将来⾒通しを評価しました。 その結果、⼯業化以降の⼈為起源による温室効果ガスの排出に伴う地 球温暖化を考慮しなければ、昨年のような猛暑は起こりえなかったこと が明らかになりました。また、⼯業化以降の世界の気温上昇が2度に抑 えられたとしても、国内での猛暑⽇の発⽣回数は現在の1.8倍となると推定されました。

http://www.mri-jma.go.jp/Topics/R01/010522/press_release.pdf

こうした差し迫った現状を考えると、今日までのメイヤーズ・サミットで、東京都・大阪市を含む世界の大都市が、パリ協定と政府間パネルの求める義務にしっかりコミットをしたことは、大変意義のあることでした。

温室効果ガス排出ゼロも大変なことですが、再エネ100%も、極めて野心的な目標です。これはつまり、東京都が石炭火力等はもちろん、原発由来のエネルギーも2050年には使わない、という「脱原発」宣言でもあります。小泉純一郎氏の掲げる「原発ゼロ」の理念を、小池都知事が実現しつつある、と言えるでしょう。目標達成に向けて、12月に策定予定の「ゼロエミッション東京戦略」を楽しみに待ちたいと思います。

国連への「レポート提出」が遅れ+中途半端な日本政府、東京都知事が議長のアーバンサミットに救われる。

では、日本政府は、パリ協定の義務履行のためには何をしてきたでしょうか?これまでのところ、あまり褒められた対応はしてきませんでした。

まず、パリ協定は、各国が義務履行のための長期戦略を作成して国連に提出することを求めています。しかし、日本は、G7の中では、イタリアに並んで提出が遅れていました。そうこうするうちに、去年10月、先に紹介した政府間パネルの特別報告書が出て、「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロが必要」ということが分かったわけです。この知見を、日本は長期戦略で生かさざるを得なくなりました。

このままでは、今年6月に大阪でG20があるのでさすがにまずいということで、日本政府は今年4月に、長期戦略をまとめました。内容は以下の通りでだいぶ細かいですが、温室効果ガス排出については、ハイライトで示した通りで、「2050年までに80%の削減」であり、政府間パネルの求める100%に達しません。ここを目立たなくするために、こんな細かい字の一枚紙にしたんでは、と勘繰りたくなります。

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出所:経済産業省

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/chikyukankyo_godo/pdf/049_03_01.pdf#search=%27%E3%83%91%E3%83%AA%E5%8D%94%E5%AE%9A%E9%95%B7%E6%9C%9F%E6%88%A6%E7%95%A5%E6%A1%88%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%27

以上の経緯については、日経も社説で批判しています。遅れたうえに内容も中途半端、そのうえ、将来の技術革新に期待するというばかりで、規制やカーボンプライシング(炭素価格付け)等は見送りだ、という点も、日経が叩いているポイントです。

www.nikkei.com

この状態のままで、G20となれば、地球温暖化に対する日本政府の姿勢が問われかねないところです。これに対し、G20直前に行われた今回のU20で、日本の小池知事が議長として、100%削減を取りまとめました。総理は、小池知事から今回のコミュニケの手交を受けたら、真摯に対応し、現在の長期戦略の見直しも含めて検討すべきです。そうすれば、この問題に関する日本の対面が守られることになるでしょう。

安倍総理は、助け船を出してくれた、環境問題の大先輩である小池都知事に、感謝すべきです。