日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

アメリカのファーウェイ対策は恣意的な面あり。日本は禁輸参加に加え、独自に同社の安全保障上の脅威を調査し、対応を。

今日の要点

アメリカによるファーウェイへの輸出禁止、日本政府も日本企業も協力の姿勢なのは結構なことです。ただ、アメリカは今回の措置を、米中交渉のカードとして恣意的に使っている面もあります。日本は、制裁への単なるお付き合いではなく、同社に関する安全保障上の脅威につき、独自に調査し、国民に公表して対応すべきです。

交渉カードとしてのファーウェイ禁輸。日本は独自の対策を。

アメリカが、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に事実上の輸出禁止措置を発動しました。中国による貿易交渉の先延ばしを警戒し、「切り札」を出した形、と日経が報じています。

www.nikkei.com

 菅官房長官は、アメリカの動きを注視し、輸出規制に関する対応も、必要であれば検討する、としていますし、

日本の輸出規制「必要なら検討」 官房長官 :日本経済新聞

日本企業も、おおむね協力的です。朝日によると、心配だ心配だと言うばかりの会社もあるようですが、パナソニックは、「細かな内容は確認している段階だが規制には従う」との方針を示し、一昨日16日にファーウェイの高性能スマホを発表したばかりのNTTドコモは、吉沢和弘社長が輸出規制にふれて、「影響が分かった時点で適切に対応していく」と述べています。

米国の一撃、華為の経営難に現実味 日本企業も不安視:朝日新聞デジタル

フィナンシャルタイムズの日経孫引き・翻訳によると、ファーウェイは既に自社の部品の内製化を進めてはいたものの、4Gの高級スマホに重要なRFチップをアメリカ企業に依存しています。代替調達先は限られていて、日本の村田製作所が候補だそうです。

[FT]ファーウェイは米制裁措置に耐えられるか (写真=ロイター) :日本経済新聞

その村田製作所は、「状況を注視している」とだけ言っていますが、安全保障上の問題で禁輸となる以上、政府が規制したら当然従うべきです。高品質の部品で日米が協力すれば、効果的です。

なお、菅官房長官は必要なら輸出規制を検討するとしていますが、日経は、別の?政府関係者が「地政学的に日米は異なる。米国と完全に行動を共にするわけではない」と語った、としています。「政府関係者」は、まさかオフレコでの菅官房長官自身ではないでしょうけれど、政府全体でしっかりしてほしいものです。

ファーウェイ禁輸、日本企業に業績影響も :日本経済新聞

国際的な包囲網で言えば、イギリスがファーウェイ製品を厳しい監視下に置き、情報漏れの危険がある製品や部品にかぎり、排除しようとしていますが、ドイツは同社の排除には慎重です。EU、イギリスはアメリカと協調してほしいところです。

トランプ政権、同盟国に「踏み絵」も :日本経済新聞

ということで、多少頼りないところはあっても、これまでのところ、日本政府と日本企業は、他の先進国に比べても、アメリカの輸出規制に理解を示して、協力する姿勢です。これは大変結構な話です。

ただ、アメリカの言われるままに制裁にお付き合いするのではなく、ファーウェイ等の中国企業が、日本の安全保障上どのようなリスクとなっているのか、自ら調査・公表し、対策をとる姿勢を見せるべきだと思います。

なぜなら、アメリカのファーウェイ対策は、安全保障上の脅威への対応というよりも、米中交渉での恣意的なカードに使われている面があるからです。

それがはっきりしたのが、同社に対するイラン制裁違反での起訴に関する取扱いです。米中貿易交渉がまだ続いていた2月、トランプ大統領は、貿易協定の一環としてファーウェイへの起訴を取り下げる可能性について聞かれて、これから米国の連邦検事や司法長官らと話して決める、と答えました。

ウォールストリートジャーナルの社説(の翻訳版)は、これを批判しています。これでは、政治的目的による起訴そのものではないか、と。

同社説は更に、米企業によるZTEへの製品販売を禁止についても、トランプ氏が習近平から直接要請を受けて(恐らくはその後の中国による農産品等の大量購入決定等も受けて)、解除したことを批判しています。ZTEはその際に12億ドルの罰金を払っていますが、政治交渉で左右されるような事案で罰金を課すのでは、米国の処罰が中国の処罰と同様に恣意的になってしまうからです。

jp.wsj.com

私も、この点については、同社説に賛成です。

本ブログでは、国際社会は、中国の政治体制の変革を目指すべきであり、そのため、中国共産党が内外で支配を強化するための一帯一路政策から国際社会は手を引くべきであり、米中貿易戦争では日・EU・イギリス等はアメリカに協力すべき、と主張してきました。

その理由は、中国が自由主義、民主主義を基本とする国となることが、中国の国民はもとより、国際社会全体にとって、大変大きなメリットがある、と考えるからです。一帯一路批判も、米中貿易戦争で米国への協力が必要なのも、すべては、自由と民主主義という普遍的な価値観を実現すべきだからです。

ところが、アメリカが、肝心の自由主義や人権保障という基本的な価値観について、特定の中国企業だけを恣意的に起訴ないし処罰対象にするというのでは、本末転倒との批判を招いてしまいます。ここが、あらゆる中国企業が対象となる関税引き上げと異なるところです。

ファーウェイ問題の出発点は、同社が自社製品にバックドアを仕込んで米国等でスパイ活動を行っているという疑惑です。同社が中国軍の影響下にあり、中国の国策の下、中国政府全体での技術盗用に協力し、中国が軍事を含めた技術力をつけることでアメリカや日本の安全保障上の脅威になることを防止すべき、というのが重要な点です。

この目的から言えば、今回の禁輸措置は、今後、特に6月のG20等で多少の譲歩が中国から得られても、ただちに解除すべきものでもないでしょう。そもそも、アメリカは、今回の機器等の取引制限にとどまらず、OS提供を含めて一切の取引を禁じることもできます(この見方は、以下リンク先のニューズウィーク記事のものです)。今回の発表でも、まだ小出しとも言えます。

www.newsweekjapan.jp

安全保障上の脅威に基づく対応なら、それに必要な範囲で行い、必要な対策は貿易交渉がどうあれ、続けるべきです。その範囲は、今回のアメリカの決定より広いかもしれません。

今回のファーウェイに対する禁輸措置に、私は賛成します。ただ、事実上特定の企業が対象となる今回の措置は、今後の交渉次第で、簡単に上げ下げされるものでしょう。日本は、そのたびに右往左往しないためにも、ファーウェイをはじめとする中国企業の安全保障上の脅威につき、米政府の判断はもちろん参考にしつつ、独自の調査・評価を行い、必要な対応は日本独自でも実施すべきです。