日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

伝統は、国民一人一人の心の中にある。女系・女性継承を望む民意に体現された伝統を畏れよ。

今日の要点

皇位継承問題は、男系男子という伝統と、女系・女性天皇女性宮家に賛成する民意との対立、と見る必要はありません。国民一人一人の意思も、長い歴史や伝統に育まれてきたもので、民意にも伝統が反映されるからです。民意に表れた伝統は、男系男子という皇位継承の手段ではなく、皇位継承そのものです。「女系・女性天皇女性宮家の承認で皇室制度という伝統を生かす」、この民意を実現しましょう。

皇位継承で守るべき伝統は、皇室継承の存続であり、継承の方法ではない。女系・女性天皇に賛成する民意は、伝統を生かそうとするもの。

秋から始まる見込みの、皇位継承に関する議論。いわゆる保守派に支持される長期政権である安倍政権だからこそ、議論の進展を期待できます。

私は、他の面では、安倍政権を批判することも多いのですが、この点については、静かに、一方で着実に検討して、女系天皇女性天皇女性宮家を認める結論を出してくれるもの、と信頼しています。安倍総理旧宮家復帰に対する反対を国会で明言し、官房長官は速やかに議論を始めると言っているからです。以前も本ブログで書きましたが、恐らく、もう議論の方向性は決まっているから、旧宮家復帰反対と言ったのでしょう。

女系天皇・女性天皇を認めることは、国民を分断するのではなく、国民を統合する。愛国者が目指すべきは、論争での勝利ではなく、国民の統合。 - 日本の改革

小泉政権や野田政権が言ったことには反発した保守派の方々も、安倍総理の言うことなら、理解し、納得すると思います。

これまで、この問題につき、本ブログでは、女系・女性天皇女性宮家を、圧倒的多数の民意が支持していることを中心にして、論じてきました。最近の調査では、産経・FNNの合同世論調査があります。

 今までの調査の傾向と同じで、特徴は、女性天皇に賛成が、女性宮家に賛成よりもはるかに多いことくらいです。

今日は、こうした世論、国民の意思と、伝統との関係について考えたいと思います。

「伝統」とは、一般的に、どういうものでしょう。まず、上皇上皇后両陛下のお言葉を見てみます。御結婚満50年に際しての記者会見でのお言葉で、記者から、「お二人で築きあげてきた時代にふさわしい新たな皇室のありよう,一方で守ってこられた皇室の伝統について」質問されたことへのお答えです。

まず、上皇陛下です。

新嘗祭のように古い伝統のあるものはそのままの形を残していくことが大切と考えますが,田植えのように新しく始められた行事は,形よりはそれを行う意義を重視していくことが望ましいと考えます。

(中略)

皇室の伝統をどう引き継いでいくかという質問ですが,先ほど天皇の在り方としてその望ましい在り方を常に求めていくという話をしましたが,次世代にとってもその心持ちを持つことが大切であり,個々の行事をどうするかということは次世代の考えに譲りたいと考えます。

次に、上皇后陛下です。少し長くなります。

伝統と共に生きるということは,時に大変なことでもありますが,伝統があるために,国や社会や家が,どれだけ力強く,豊かになれているかということに気付かされることがあります。一方で型のみで残った伝統が,社会の進展を阻んだり,伝統という名の下で,古い慣習が人々を苦しめていることもあり,この言葉が安易に使われることは好ましく思いません。

また,伝統には表に現れる型と,内に秘められた心の部分とがあり,その二つが共に継承されていることも,片方だけで伝わってきていることもあると思います。WBCで活躍した日本の選手たちは,鎧よろいも着ず,切腹したり,ゴザルとか言ってはおられなかったけれど,どの選手も,やはりどこか「さむらい」的で,美しい強さをもって戦っておりました。

陛下のおっしゃるように,伝統の問題は引き継ぐとともに,次世代にゆだねていくものでしょう。私どもの時代の次,またその次の人たちが,それぞれの立場から皇室の伝統にとどまらず,伝統と社会との問題に対し,思いを深めていってくれるよう願っています。 

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両陛下とも、形・型は大事であるが、どうするかは次世代に委ねるものとされ、上皇后陛下は、伝統には型と心の両面があり、型だけが残っては駄目で、心の形で残る伝統もある、とされています。

皇位継承問題に関する伝統で、守るべき形・型は何であり、心とは何でしょうか?

守るべき型とは、皇室制度が続くことそれ自体であり、心とは、皇室が続いてほしいと願う国民の心です。

そうした国民の心は、どのようにして形作られるのでしょうか?国民一人一人の意思は、全く何の制約もない状態で生まれるものではありません。私たちの意思決定は、家族、教育、地域社会、国家、それらが負う歴史、によって、一定程度はあらかじめ決められているものです。皇統に関する国民の意思決定も、既に伝統の力を牢固として受け継いでいます。その意味で、伝統は、国民一人一人の心の中にあります。だからこそ、国民は何度世論調査をしても、天皇制それ自体には圧倒的に賛成と答えているのです。

そのように伝統に規定されて、保守的とも言われる日本国民が、なぜ、これまで例のない女系天皇女性天皇という「型」に圧倒的に賛成なのでしょうか。国民は、男系か女系か、という皇位継承の制度的な違いに、本質的な意味を見ていないからです。この伝統の本質は、皇位継承が安定的に続けられる、ということです。そのように考える民意を、これほど圧倒的な民意を、この問題に関わる人は、畏れるべきです。そこには、長い長い日本の伝統が生きているのですから。

前近代から戦前のように、上から下まで男系男子による継承が当たり前だった時代と、現代は大きく変わりました。時代の変化に応じて、伝統を型でも心でも大切にするならば、安定的な皇位継承こそが重要であり、継承の方法は幅広く考えるべきです。

京都産業大学名誉教授の所功氏は、皇室典範の文言上も、本質的に重要なのは、「皇統」の概念であり、「男系」「男子」は、その下位の概念である、というか、男系だの女系だの、という議論は明治以降のものだ、と言っています。所氏の発言を引用します。

皇室典範には『皇位は皇統に属する男系の男子が、これを継承する』とあるが、これには概念が3つある。『皇統』という1番大きい概念の次に『男系』という概念があり、その次に『男子』という概念だ。でも、男系だの女系だのという言葉を使ったのは基本的には明治以降。それ以前にそのような議論はない」

www.nhk.or.jp

明治からはるかに古い時代までさかのぼる「皇統」という言葉。その重み。小さい頃に家庭や学校で聞いた神話とのつながり。学校で教わった歴史。日常生活の行事や仕事や地域の行事等で感じる神道や皇室との関連。天皇・皇族の登場する日本の古典文学。御製。それらを扱った小説、映画、マンガ、アニメ。そして、第二次世界大戦から東日本大震災まで、苦しさや悲しさを皇室と国民が共有してきた現代史。等々。

伝統とは、上皇后陛下の言われる、伝統の「内に秘められた心の部分」とは、そうした全てによって、国民一人一人の心の中に育まれ、形作られたものです。その一人一人の心の発露が大きな形となって表れた民意を、伝統の一部として、畏れをもって、皇位継承の制度に生かすべきです。