日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

丸山穂高氏の発言に思うこと:「日本は第二次世界大戦の結果を受け入れるべき」である。政府は、北方領土に関する「勝ち組」教育・広報の総括を。

今日の要点

丸山穂高議員の、北方領土は戦争でないと取り返せないのでは、という趣旨の発言。音声が録音された状況は精査が必要ですが、分かり次第、結果責任をとるべきです。

・今回のトラブルは、日本政府が長年にわたり、「北方領土は日本固有の領土」と徹底した教育・広報を行ってきたことも一つの背景です。総理大臣さえ、この表現を避けている今、これまでの立場をどうするのか、政府は国民に対して、説明を行うべきです。

丸山穂高議員発言、意図や状況がどうあれ、発言・行動がメディアで広まった結果責任をとるべき

朝日新聞から引用します。

 北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として同行した日本維新の会丸山穂高衆院議員(大阪19区)が、国後島訪問中の11日夜、北方四島の返還に関し、「戦争しないと、どうしようもなくないですか」と訪問団の団長に詰め寄るなどして、訪問団から抗議を受けていたことがわかった。

(中略)

丸山議員は記者会見で当時の発言について「団長に考えをたずねただけだ。交渉でわが国の立場を伝えていくのが当然と考えている」と語った。丸山議員は、衆院沖縄北方問題特別委員会の委員。
 丸山議員は自らの発言が大きく報じられた後の13日深夜、都内で記者団に「心から今回の発言について謝罪し、撤回する」と表明。議員辞職するかについては「党と相談し、決めていきたい」と述べるにとどめた。

digital.asahi.com

日本維新の会松井一郎代表は丸山氏を厳重注意し、党として戦争で取り返すような考えは一切ないと述べました。

news.tv-asahi.co.jp

①日本政府が不利な交渉中の北方領土で、②親善目的のビザなし交流に参加中、③衆院沖縄北方問題特別委員会の委員が、④領土目的の戦争という選択肢につき、⑤一番真剣な思いの元島民に執拗にからんで、⑥以前もあった酒乱でその他のトラブルも起こす。言語道断です。

私が日本維新の会にお世話になっていた期間に、丸山氏にプライベートでお酒のトラブルがあり、その後、丸山氏はちゃんと禁酒していました。トラブルというのも、状況を聞いたところでは、どうも酔っ払いにからまれてもみ合いになったというだけの話で、必ずしも丸山氏のせいではないようにも思えました。

ただ、国会議員という立場を重く考えたのでしょう、私が見聞きした範囲では、党の集まりでは、懇親会も含めて、本当に全くお酒を口にしていませんでした。他の議員の方も、茶化しながら気の毒がっていましたし、丸山氏は立派に御自身を律していたと思います。

それだけに、今回の話は、ちょっと信じられない思いです。前回のプライベートでのトラブルとは訳が違います。

録音については、誰かがおとしめようとした可能性もあるとは思いますが、仮にそうだとしても、これほどうまくはめられるようではいけません。

暴言を吐かれた島民の方は、冷静沈着です。訪問団の団長を務めた大塚小彌太氏は、根室港に戻った後、「すべての日程を【無事】こなすことができた」と話しています。親善目的のビザなし交流で、何かがあってはいけないからです。本音でどう思っていても、本気で北方領土返還を目指す立場の元島民として、さすがの立派な態度です。

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島民の立場や北方領土問題だけを考えれば、丸山氏の言動は一切不問にして、ビザなし交流では何のトラブルもなかった・・・ということにした方が良いかもしれません。

しかし、憲法改正の議論への影響や、今後の維新(ひいては保守系の改革政党全体)に対する社会的評価を考えれば、それだけを考えるわけにはいかないでしょう。

録音がされた状況だけは精査のうえ、やはり本人の責任が大きいということであれば、議員辞職すべきだと思います。発言の撤回・謝罪で世間の反応を見てから考えるより、なるべく早く辞めた方が良いのではないでしょうか。こう言っては何ですが、衆院選も近いでしょうし、選挙には強い人ですし、まだ若いのだから、真摯に出直す姿勢を再度見せれば、理解も得やすいはずです。党にとっても、その方が傷が浅いと思います。

これまでの北方領土「勝ち組」教育・広報をどうするのか、政府は国民に説明を

いずれにせよ、丸山氏の進退等については、維新も御本人も、出来るだけ迅速に、国民と国際社会に説明のつく形で、的確な危機管理を行っていただければと思います。

それよりも、なぜ、国会議員がこんなことを言い出すようになったのでしょうか。私は、こういう極論を、身内の会議等で言っている国会議員は、案外多いのではないかと思います。

このトラブルの根本には、「北方領土は日本固有の領土であり、四島は全て返還されるべきである」という、長年にわたる日本政府の主張と、ソ連・ロシアによる長きにわたる実効支配とのギャップが大きすぎるという現実があります。ギャップは近年、大きくなるばかりなのに、日本政府は頑としてその現実を認めようとしません。これに対する、一部議員のフラストレーションが暴発したのが、今回のトラブルです。

政府は、日ロ交渉が全く進まないどころか、むしろ実効支配が強化され、外交交渉もどんどん押され続けているという現実を踏まえ、さすがに少しずつ、主張を現実に近づけるようになってきました。

安倍総理は今年2月6日の参院予算委員会で、「北方領土は日本固有の領土か」という質問に直接答えず、「わが国が主権を有する島々だ」と繰り返しました。政府はまず、「日本固有の領土」という表現を撤回しました。

mainichi.jp

更に、2019年版の外交青書で、2018年版にあった「北方四島は日本に帰属する」との表現が削除されました。もう、北方四島の主権についても、外交青書で言及しなくなりました。

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これに対し、自民党外交部会と外交調査会の合同会議では「固有の領土という表現は基本原則のはずで残すべきだ」「ロシアから文句を言われ、自発的に日本の基本原則を捨てた」と、議員からの批判が相次いだと、上の朝日の記事は報じています。

では、政府に相次いで批判を浴びせた自民党の国会議員達は、どうすればいいと思っているのでしょう?「北方領土は日本が主権を有する日本固有の領土」という、現実とはかけ離れた主張をこれからもロシアと国際社会と日本国民に言い続けるのでしょうか?政府の主張と現実のギャップをどう埋めるのでしょうか?

私は以前、本ブログで、そもそも北方領土国際法上、本当に日本の領土と言えるのか、たとえば、国際司法裁判所がそのように判断してくれるのか、甚だ疑問だ、と書きました。最近の国際法の考え方では、もともとの権原よりも、長い実効支配の現実等が重視される可能性があるからです。

www.kaikakujapan.com

更に言えば、もともとの権原についてさえ、日本の主権に疑問符はつきます。ソ連による占領は、アメリカと組んだ「連合国」の一員としてソ連が行ったものだからです。美根慶樹氏は、次のように述べています。

 この「占領」に対し日本として言えることは限られている。ソ連の対日参戦は法的に認められないという議論を戦わすことはできても、「占領」は連合国の行動の一環であり、戦争に負けた日本としては法的立場を越えた、抗うことのできない現実であった。現在、日本がロシアと平和条約を締結すれば、この「占領」は終了すると米国を含め各国が想定しているであろう。その意味では「占領」問題も日本がロシアと解決することと思われているが、「占領」はほんらい連合国の行動であったという性格がなくなったのではない

www.canon-igs.org

曽根氏は、アメリカの関与がないと北方領土問題は解決できない、という主張のようですが、それくらいのことは日本政府もやろうとして、結局は実現していないのでしょう。

前回、北方領土について書いたときのブログのタイトルは、正直言って恐る恐るでしたが(笑)、ロシアのラブロフ外相の表現をあえてそのまま使って、『「日本は第二次大戦の結果を受け入れるべき」ではないか』としました。そのときは疑問形にしましたが、今回のブログでは、タイトルで言い切ることにしました。

『「日本は第二次世界大戦の結果を受け入れるべき」である』、即ち、日本は、平和条約締結の際の条件次第で、北方四島の主権はロシアに帰属すると認めても良いと思います。そのうえで、北方四島での経済活動を通じて、事実上日本の島のような状態にするのを目指すべきでしょう。このままでは交渉が全く進まないどころか、状況は悪化する一方だからです。

私は、先の自民党の部会で威勢の良いことを言っている国会議員の中にも、丸山氏ばりに、原則と現実のギャップに耐えきれずに、下らない極論を言いかねない人達はたくさんいると思っています。かつて、橋下さんも呆れていましたが、丸山氏だけではなく、国会議員の中には、法律・国際法・国際社会の常識からも、国民世論の常識からもかけ離れたことを平気で言う人が少なくありません。

私は、たとえロシアに押される形ではあっても、これまでの強硬一本槍の主張から現実に近い主張に変えようとする日本政府の方が、部会でわあわあ文句言っているだけの自民党の議員達より、はるかに信頼するに足りると思います。言わば、政府は現実に主張を近づけようとしており、丸山氏のような議員は、主張に現実を近づけようとして、戦争だの何だのと言っている、ということです。

日本政府が、自分達のこれまでの主張を、少しだけ現実に近づけようとしているのは、率直に言って評価します。ただ、それならそれで、これまで強硬一本槍で「北方領土は日本が主権を有する日本固有の領土だ」と、国民に何十年も「勝ち組」教育をし、広報をし、国際社会でもそのように主張し続けてきたことは何だったのか、それをどう変えるのか、なぜ変えるのか、日本国民に対して、納得のいく説明をするべきです。もちろん、国際社会に対してもです。

はっきり言えば、いま2019年という有利な地点から振り返れば、過去の主張・手法は、間違っていたのです。それを認め、国民にも国際社会にも、必要があれば謝罪もし、北方領土について、平和条約で良い条件を得られるなら、主権の帰属についても従来の立場を変える旨を表明すべきです。

第二次世界大戦の結果をいったんは受け入れ、主権の帰属では譲らざるを得なくても、経済的・社会的な実を取り、北方四島は日本人ばかりで日本の影響力が最も強い形にしてしまえば良いのです。そして、長い時間をかけて北方四島を実質的に日本のものとして、国際情勢の変化を辛抱強く待って、日本が十分な力をつけたうえで、平和的な形で、主権の帰属について、あらためて話し合うべきです。