日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

日本政府、北朝鮮に対する国連非難決議の共同提案から初めて降りる。「日朝首脳会談」は自己目的化、国内世論向きのパフォーマンスに。

今日の要点

・日本政府は、北朝鮮の人権状況を審査する国連人権理事会で、これまで続けてきた、北朝鮮の人権状況を非難する決議の共同提出を見送りました。日朝首脳会談実現に向け、北朝鮮のご機嫌をとったと見られています。核問題も拉致問題も進展の見通しがない以上、日朝首脳会談の模索は、ただの「やってるふり」のパフォーマンスです。

国連人権理事会で、日本は、自らが主導してきた北朝鮮への非難決議の共同提出を行わず。ご機嫌取り外交で、拉致問題解決を「やってるふり」。

今朝の朝日新聞によると、日本政府は5月9日、北朝鮮の人権状況を審査する国連人権理事会で、これまで続けてきた、北朝鮮の人権状況を非難する決議の共同提出を見送りました。朝日から引用します。

日本政府は08年以降、欧州連合(EU)と共同で人権理事会に対北朝鮮非難決議案を提出し続けてきた。北朝鮮などの人権問題に取り組むヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)日本の土井香苗代表は、「北朝鮮の人権問題を国際水準に引き上げたのは安倍晋三首相の功績だった」と評価する。

 だが、今年3月、政府は突然、人権理事会への共同提案者から降りると発表した。複数の日本政府関係者によると、提案見送りを主導したのは安倍首相の意向を受けた首相官邸だった。首相は1月半ば、2回目の米朝首脳会談が2月末に開催されることが決まったのを受け、日朝首脳会談に意欲を示して環境整備を急ぐよう周囲に指示。政府は米朝会談直前に、提案見送りを決めた。

 外務省では当初、この結論に対し、国際社会の理解が得られないことを懸念する声が上がった。だが、官邸の強い意向に、「やってみて駄目なら従来の方針に戻せばよい」と、見送り受け入れに傾いたという。

digital.asahi.com

日本人拉致問題を、せっかく人権侵害として国連人権理事会で取り上げることに成功したのに、日朝首脳会談の実現さえ出来れば、結果などどうでも良い、という態度です。日朝首脳会談を行うのは、当然、拉致問題という人権問題を解決するためです。その人権問題解決という「目的」実現のために、自分達が主導してきた国際的圧力を捨てて、単なる「手段」である日朝首脳会談を実現しようとしています。

もともと、第二次安倍政権発足当初から、拉致問題解決への本気度は強く疑われてきました。その一番ひどい例が、2014年のストックホルム合意です。北朝鮮が日本人拉致被害者らを今さら「再調査」するという無意味な約束で、日本は独自制裁を一部解除する等というものです。その後、北朝鮮がミサイル・核実験を繰り返すので、結局は日本は新たな制裁を課し、それでも日本政府は合意は有効と言い続けてきたのに、北朝鮮が一方的に破棄した、というものです。

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政権の比較的最初の頃から、こんな有様です。ストックホルム合意の際には、北朝鮮から生存者情報が伝えられたけれど、横田めぐみさんと有本恵子さんの名前がなかったことから、政府は発表をしなかった、と『選択』が去年9月号で報じています。いずれにせよ、拉致問題解決には経済支援を求められることにもなり、世論の反発を考えれば、実は首脳会談など実現しない方が好都合ではないか、ただの「やってるふり」だ、と、『選択』は、当時厳しく批判していました。

www.sentaku.co.jp

今年3月の米朝首脳会談で、トランプ大統領拉致問題金正恩に提起したと言うことで、安倍総理が5月1日、産経新聞の単独インタビューで、「条件を付けず話し合いたい」として、拉致問題での進展を前提としなくても、日朝首脳会談をまず実現したい、と述べました。

special.sankei.com

産経は、社説でこれを支持。既に北朝鮮がミサイル実験を再開していたのに、それでも、無条件に首脳会談を目指す方針で良い、と言っていました。

www.sankei.com

北朝鮮のミサイル実験につき、最初は日米政府ともに飛翔体と呼んでいたのを、2回目以降の実験を受けて、やっとミサイルと言い始めました。

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アメリカは、来年の大統領選に向けて、北朝鮮外交でミサイル実験を抑止できなくなったのをなるべく認めたくない、日本は、何でもいいからとにかく日朝首脳会談を実現したい、拉致問題が進んでいるように見せたい、ということで、最初は北朝鮮をはばかって呼び方まで配慮していたのを、結局は諦めた形です。

拉致被害者の家族は、首相方針を歓迎し、期待を表明しています。一方で、横田めぐみさの弟拓也さんは、

「全拉致被害者の即時一括帰国の実現が果たされない限り、(北朝鮮に)経済支援をすることはない。部分的な解決や段階的な解決では納得しない」

と、5月3日に、アメリカで発言しています。安倍総理の言う、文字通りの「無条件」の会談実現とは、当然、期待する内容が違っています。

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横田拓也さんは、その後も、

「(会談は)拉致問題解決に資するものにしなければならない」としてきた方針の転換ともとれるが、拓也さんは「被害者全員の即時一括帰国を最低条件とする考え方がリセットされたわけではない」

と釘を刺していますし、飯塚耕一郎さんは

「まずは互いが持つ不信感の殻を破りたいということなのだろう。会うこと自体を目的にせず、具体的成果をあげてほしい」

と求めています。

www.sankei.com

政府も苦しい立場なのは分かります。核・ミサイルの問題をはじめとする安全保障については、日本に出番がないのは百歩譲ってやむを得ないでしょう。

しかし、冒頭に書いた国際人権理事会での非難決議のように、国際社会全体で平和的な手段でかけてきた圧力、それも、日本政府自身が主導してきた圧力を、易々と撤回してしまうのを見ると、もう安倍政権には、拉致問題を解決する意志がない、と考えざるを得ません。