日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

リベラルを代表するメディアの朝日新聞こそ、中国政府の「国際メディアの新秩序」に対する明示的な批判を!

今日の要点

・中国政府は、習近平政権になってから、「国際メディアの新秩序」樹立を目指し、世界中のメディアに中国政府・中国共産党への批判をやめさせ、逆に賞賛させようとして、あらゆる手段を使っています。日本のメディアは、中国国内の報道の自由への批判だけではなく、この体系的な政策の存在自体を批判し、やめさせるべきです。

中国政府の目指す「国際メディアの新秩序」

ウォールストリートジャーナルによると、アメリカが中国に対する関税を引き上げるニュースを、中国の投資家は知りませんでした。中国政府が、このニュースに関する報道を統制したからです。それでも完全にはニュースの拡散を防ぐことは出来なかったようで、投資家たちは、SNSで事実を非公式に知ったようです。

jp.wsj.com

こうした事実は、今さら取り上げるまでもないほど、中国のメディア統制等の表現の自由の否定は良く知られています。

今さら取り上げるまでもない、と書きましたが、実はそれこそが大問題です。もう、中国の国内で行われている非人間的な統制に関するニュースに、世界中が慣れてしまっているからです。

それでも、ここ数年は、先進国で中国のメディア規制等に対する批判が多く表れています。習近平政権になってから、以前にもまして、言論弾圧が徹底されているからです。

最近、朝日新聞が中国を厳しく批判する素晴らしい記事を二つ書いています。

一つは、ネットメディアへの統制について。数年前まで比較的自由だったネットメディアにも、徹底的な締め付けが行われている実態を報じています。各ネットメディアの責任者には、管理当局からショートメッセージが1日に何度も届き、以下のような事細かな「指示」が出されていると言います。

習近平総書記が開いた会議の記事は、パソコンとアプリのトップページで一番上に置くように。次には習氏と外国要人の会見の記事を」
 「江西省で起きた無差別殺傷事件では必ず権威部門(政府や新華社)の情報を使うこと。血が写っている動画や写真は禁止。記者は派遣しないこと」
 「(党幹部とのつながりが指摘される企業)安邦集団への国の監督が延長される報道は公式発表を使い、独自の取材、評論、解説は禁止。トップへの配置や速報も禁止」
 メッセージがいつ届くかは分からないが、指示は絶対だ。

その結果、新聞もネットメディアの見出しや内容もほとんど同じになり、トップニュースはほとんどが習近平に関するものだということです。

digital.asahi.com

ましてや、もともと統制の厳しかった新聞では、ますます何も書けなくなり、統制と戦いつつ必死で政治や社会の問題について調査報道をしてきた記者がどんどん辞めざるを得なくなっているという記事です。印象的な一節を引用します。

党や政府がメディアに求めるのは中国語で「正能量」(プラスのエネルギー)と表現する前向きなニュースだ。指導者をたたえ、中国の良い面を宣伝する。不正を暴く調査報道は「負能量」で「社会の安定」には役立たないというわけだ。

(中略:引用者)

昨年11月8日。中国でこの日は「記者の日」とされている。だが、記者たちが交流するSNSで流れたのは「(真相を追究する)記者はほとんどいなくなったのに、まだ記者の日を祝うのか」「今はニュースが最も多く、内容が最もひどい時代である」といった嘆きの声だった。

digital.asahi.com

「今はニュースが最も多く、内容が最もひどい時代である」

何と言う痛切な嘆きでしょう。もちろん、先進国だって、政治による歪曲やフェイクニュースはあるので、だからこそ、この言葉が我々の心に響くと言う一面はあります。しかし、中国の国内でなされていることは、全く異次元のものです。政府や共産党が直接、明るいニュースだけ書け、後ろ向きのニュースは書くな、と命令するのですから。

朝日の中国への弱腰はよく批判されますし、かつては確かにそうだったでしょう。ただ、私自身は、2008年の北京オリンピックのとき、中国のチベット弾圧を強く批判していた記憶があり、それ以来、朝日の中国報道を少し見直して見てきました。当時、私は生まれて初めて、デモというものに参加し、フリーチベットというコールをしました。朝日が中国を厳しく批判しているのを、とても心強く思ったものです。最近では、習近平政権の国内での強権政治への批判は割とやっているように思います。

それだけに、中国が現在、世界中で進めているメディア対策について、それこそ調査報道で、しっかり批判してほしい、と思います。特に、「国境なき記者団」が徹底して習近平政権と戦っているのを、しっかり援護射撃するべきです。

2017年、国境なき記者団ののクリストフ・ドロワール事務局長は産経新聞に寄稿し、表現や報道の自由を弾圧する中国の習近平体制を強く批判しています。彼の立場は、冒頭の一文から明確です。

習近平総書記は立憲民主主義、報道の自由の敵だ」

www.sankei.com

その通り、習近平とは、自由と民主主義を基本的な価値として共有するすべての国民、とりわけ、全てのメディアにとって、敵なのです。

なぜ、敵なのか。彼は、「メディアの新たな世界秩序」を目指し、世界中のメディアに、中国共産党への批判をやめさせ、賞賛だけをさせるため、大規模で一貫した政策を世界中で展開しているからです。ドロワール氏の寄稿から引用します。

新華社元社長の李従軍によると、目的は情報が「西洋から東洋、北方から南方、先進国から途上国」にのみ流れる時代遅れの世界秩序を覆すことだ。彼は世界の報道機関が「社会発展を積極的に促す力」になることを呼びかけている。それはもちろん「中国的な」発展を意味する。

新華社元社長の李従軍による、この目標設定とそれに基づく中国政府・中国共産党の政策については、今年3月に「国境なき記者団」が発表した報告書に、詳しく書かれています。

https://rsf.org/sites/default/files/en_rapport_chine_web_final.pdf

中国、海外メディアへの影響力行使図る-国境なき記者団 - Bloomberg

www.jiji.com

そこで引用されているガーディアンの調査報道(2018年12月7日)は、日本のメディア全体にとっても衝撃的でした。

中国は、世界中のメディアに広告を出し、プロパガンダ記事を掲載させているし、China Watchというプロパガンダ・メディアを広めさせている、日本では毎日新聞がそれを行っている、というのです。

www.theguardian.com

私が不勉強なだけかとは思いますが、この問題につき、大手メディアがはっきり批判している記事等があまり見当たりません。

ネットでは色々なサイトが批判しています。たとえば、「政治知新」というサイトは、この件を詳しく書いていて、毎日新聞の折り込みになっているチャイナウォッチがどれほどひどい内容か批判しています。

seijichishin.com

そこでは、チャイナウォッチの内容を紹介している別のブログを引用しています。なんと、強制収容所による民族浄化が進行中のウイグル新疆自治区をウインタースポーツの観光地だとして宣伝しています。

ssbo1003.hatenablog.com

「政治知新」は、毎日新聞の小川社長の釈明も、チャイナウォッチが実は中国のプロパガンダだということを暗に認める内容だ、と厳しく指摘しています。

seijichishin.com

「政治知新」というサイトの、他の記事については、賛成できない主張も色々あります。いわゆる右派系のサイトなのでしょう。しかし、毎日新聞に対する批判は、全く正鵠を得ています。

そこで、朝日新聞や、朝日が代表するリベラルの大手メディアにお願いです。自由と民主主義を大事にし、多様な価値観を大事にするからこそ、中国の習近平政権と、本気で戦ってほしいと思います。中国の政治体制を、自由主義、民主主義に変えるために努力することは、リベラルな価値観と矛盾しないどころか、その価値観の実現の方法です。

しかも、メディアにとって、世界でこれほどやりがいのある仕事も、他にめったにないのではないでしょうか。ペンの力で、中国の国民と、全世界を苦しめている全体主義体制を倒すという、長く続く困難で偉大な仕事です。

朝日には、是非、「国境なき記者団」とともに、本物の言葉の力を見せてほしいと思います。