日本の改革

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過激主義者を排除するフェイスブック、「連邦当局が承認したプライバシー担当幹部」を受け入れへ。IT大手の規制は、価値観を共有する各国で国際的枠組みを!

今日の要点

フェイスブックが、過激主義者を自社SNSから排除すると発表しました。また、自社の経営陣に、連邦当局が承認したプライバシー担当幹部を置く方向で、米連邦取引委員会(FTC)と協議しています。

・IT大手プラットフォーマーは今後、あらゆる面で、アメリカ民主党のウォレン上院議員の言う「プラットフォーム公益企業化」が進むでしょう。民主的な政府の監督なら、必要悪です。一国の利益のみ反映しないよう、G20で国際的枠組みを示してほしいところです。

フェイスブックが、政府承認の役員を経営陣として受け入れへ

フェイスブックが、自社SNSフェイスブックやインスタグラムから、極右思想や反ユダヤ主義等を排除する、と発表しました。排除の対象となった人物は反論していますが、人権団体は評価しています。

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これはネットの健全性に関する判断です。加えて、フェイスブックは、プライバシー保護の観点からも、重要な決定をしたようです。

同社は、昨年3月に8700万人もの個人情報の流出が起きた件で、米連邦取引委員会(FTC)から調査を受けてきました。既に日本円で3000億円規模の制裁金を課されることが決まっており、業績にも大きな影響が出ています。制裁金のほか、プライバシー保護のための費用もかさんで、総費用が急上昇する一方、スナップチャット等の若者向きSNSに押されて、売上高も落ちています。これまでのビジネスモデルの転換を迫られています。

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そんな中、政治情報サイトのポリティコがスクープとして、フェイスブックとFTCの協議内容を報じています。ブルームバーグ(でポリティコの孫引き+翻訳)によると、フェイスブックの経営陣に、「連邦当局が承認したプライバシー担当幹部」を置くことや、プライバシー監視委員会を新たに設置する形で、協議しているとのことです。監視委員会のメンバーには同社の取締役が就くこともできるようです。

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この「連邦当局が承認したプライバシー担当幹部」なのですが、ポリティコの原文では、「a federally approved privacy official」となっており、字面では、まるで公務員の現役出向か何かのように見えます。いずれにしても、連邦政府フェイスブックの経営への監督・関与を強めることになります。元の記事では、それでも経営は結局ザッカーバーグ氏が中心で行うから実効性は乏しいという批判も紹介していますが、ザッカーバーグ氏自身の責任も重くするようなので、一定の効果はあるでしょう。

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これに先立ち、先月末の決算発表時、ザッカーバーグ氏は、ネットの健全性について、インターネット上の個人情報や有害コンテンツの取り扱いに関しては、政府や業界レベルの対応が必要と発言していました。

また、その際、プライバシー保護については、対話アプリなどプライバシーを重視した私的なプラットフォームの構築に力を入れていくと発言しました。日経によれば、具体的には、メッセージや投稿内容の暗号化やデータ保存期間の短縮等を挙げている、とのことです。これにより、現在の主要な収入源である広告収入に加え、Eコマースや決済サービスの収益化にも取り組もうとしています。

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要するに、フェイスブックは、①ネットの健全性保護のために過激主義者を排除するとともに、②プライバシー保護のために政府の関与を受け入れ、今後はプライバシーが特に重視される会話や決済の分野にも進出する、ということです。

IT大手プラットフォーマーは、公益企業となる。民主主義国家による国際的な監督を。

ネットの健全性保護やプライバシー保護に関する、こうした動きは、IT大手に対する独占禁止法上の規制強化や課税強化と同時に進んでいます。

このうち、独占禁止法については、アメリカ民主党のエリザベス・ウォレン上院議員が、グローバル市場で250億ドル以上の売上を持ち、一般消費者にオンラインで市場等を提供している企業を「プラットフォーム公益企業(platform utilities)」と定義して、企業統合を規制すべきだ、と主張しています。

具体的には、これらの企業は、オンライン市場等のプラットフォームに、自ら出品等の形で参加してはならない、という規制を課すという案です。これによると、既に自社のプラットフォーム上で自社製品を売っているグーグルやアマゾンは分割されることになります。この案については、以前、本ブログでも紹介しました。

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ウォレンが大統領選で民主党候補に選ばれるチャンスはなさそうですが、民主党で「政策マシーン」として次々に政策を発表しているところは、存在感を示しているようです。少なくとも、彼女の政策提言は真面目に受け止められてはいます。

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ウォレンの主張するように、IT大手プラットフォーマーを単なる私的企業とみないで、「プラットフォーム公益企業」と考えて、然るべき規制を課す、というのは、独占禁止法の分野で今後も議論の対象になるでしょう。

更に、現在の欧米政府当局やIT企業自身の動きを見ると、独占禁止法以外の分野でも、IT大手プラットフォーマーは、一種の「公益企業」として、規制される存在になる可能性があります。最初に紹介したフェイスブックの動きは典型的です。

私は、各国の国民・消費者の利益を守るためには、IT大手プラットフォーマーについて、テロの助長等を防ぐというネットの健全性は必要だし、独禁法、プライバシー保護、課税の、いずれも、必要な範囲では強化すべきと考えています。

もちろん、IT大手への規制が、消費者の犠牲によって国内の非効率な企業を保護することになってはいけないので、不当廉売の禁止規制の適用等は慎重な判断が必要と思います。特に、独禁法の改正や運用については、国内企業べったりの経済産業省の関与は出来るだけ避けて、公正取引委員会がもっと独立した形で行うべきと考えています。

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それでも、ネット健全性、自由で公正な競争秩序、個人情報保護、効率的で公正な課税、という理念から考えれば、IT大手プラットフォーマーへの規制強化はやむを得ません。現在では、SNSが言論のためのインフラを提供していることを考えれば、企業規模と活動の範囲による線引きで、こうした企業を公益企業と捉えたカテゴリカルな規制を行うのは意味があります。

ただ、政府の規制は、当然、恣意性や一部企業・団体との結託等の問題を生みます。フェイスブックによる「連邦当局が承認した」幹部受け入れというのは、一歩間違えば、天下りまがいの現役出向やアメリカ人の言う回転ドアになりかねません。

ネット健全性について言えば、当該ネット企業だけに、サービスのアクセスについて判断させることが適当かどうかも、考えるべきです。利用者の排除の基準が不明・曖昧等の問題点も大変深刻です。

またフェイスブックの例ですが、最初に紹介した日経の記事によると、今回の過激主義者の排除につき、人権団体(アメリカ自由人権協会=ACLU)は歓迎しました。しかし、昨年8月には、フェイスブックがこうした排除を行う際のテロ定義は、反体制派の弾圧を助長する、として、国連人権専門家が批判したこともあります。

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まして、フェイスブックは、中国でのビジネスがしたくてたまらず、経営者が中国政府に媚を売るような姿勢を見せたり、台湾政府が中国からの偽情報流入阻止をしようとしたら、そんなときだけ言論の自由を持ち出したりしています。

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[FT]台湾、中国からの偽情報流入阻止へ規制強化検討 (写真=ロイター) :日本経済新聞

こうした点を考えれば、政府の関与は、癒着や腐敗を生みやすい自国一か国だけの規制ではなく、各国が相互に監視し合うような国際的な枠組みでの規制が必要です。もちろん、自由主義・民主主義という価値観を共有する諸国間で合意できる、透明性のある公平なルールであるべきです。更に、こうした枠組みの目的は、結局は、各国の国民・消費者一人一人の保護なのですから、個人を救済する実効性のある制度を、各国に義務付ける取り決めとすべきです。今年のG20では、是非、そうした方向性を打ち出してほしいところです。