日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

令和では、象徴としてのお務めはどうなるか:「天皇の旅」(行幸啓)が減っても、天皇が国民とともにあるなら、国民は陛下と皇室を敬愛する。

今日の要点

・今上陛下は、慰霊の旅を含む行幸啓を重視され、超人的な克己心で内外の旅をされました。陛下は、日本国内では、国民とともにあることを重視され、国民もこの姿勢に共感し、陛下と皇室を敬愛しました。

・令和の天皇陛下は、象徴としてのお務めについて、別の形を模索されるかもしれません。どのような形であれ、陛下が「国民とともにある」姿勢をお示しなら、国民は別の形で共感し、陛下と皇室に敬愛の念を抱くはずです。

慰霊の旅、行幸啓を重視された今上陛下を、国民は敬愛している。

いよいよ、令和が近付いてきました。4月17日、天皇、皇后両陛下は、御在位中最後の地方訪問として、伊勢神宮に行かれました。

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なお、皇居外での最後の御公務は、みどりの式典への御出席でした。両陛下への正しい敬語の使い方も分からず、失礼かもしれませんが、自分の気持ちをそのまま言葉にしてしまえば、本当に、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

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本ブログでも繰り返して書いてきましたが、両陛下は、国民とともにあることで、象徴としての務めを果たすために、大変な数の行幸啓をこなされてきました。平成の30年間で、両陛下が旅をされた総距離を計算した竹内正浩氏によると、地球15周半になるそうです。

被災地への慰霊やお見舞い、第二次大戦の戦没者への慰霊の旅等をはじめとして、両陛下は、日本国民はもとより、内外のあらゆる人々と接してこられました。竹内氏は、これを、「全身全霊をかけて30年間、さまざまな儀式、公務で励んでこられた」、「凄まじい」と表現しています。

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朝日新聞は、両陛下の旅を「祈りの旅」という特集で紹介しています。

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こうした行幸啓について、批判的な見方もあります。一か所だけに行くのは不公平だ、という声もあるからです。そして、公平を期して横並びで行えば、公務は膨大になりすぎます。

今上陛下は、批判はもちろん御存知のうえで、それでも、国民とともにあることを優先されたのでしょう。日経の井上亮編集委員は、以下のように表現しています。

災害被災地訪問は「1カ所に行くと、すべての被災地に行かなければ不公平になる」と疑問視された。膝をついてのお見舞い批判は表層的なもので、これこそ本質的問題だった。「天皇の強い希望で」と語られている海外慰霊の旅も、外国訪問は政治が絡む。天皇の意思が前面に出ることは憲法に抵触するという見解もあった。

昭和時代には考えられなかった天皇像に対する抵抗を"力業"で突破し、自身の信じる道を貫き通すには、屈しない意思が必要だった。昭和の前例をそのまま踏襲する方がずっと楽だったはずだ。しかし、「国民から超越した非人間的な存在であれ」という近代以降の天皇に要請された役割をよしとせず、人間的で人々に寄り添う「国民の象徴天皇」像を追い求めてきた。

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こうした、今上陛下の「強さ」は、マッチョの代表格・石原慎太郎都知事も驚かせました。東日本大震災の被災地お見舞いについて、体調不良を押して御自分で行かれる決意を陛下が述べられたとき、石原氏は、「男だねえ」と、石原氏なりの最高の誉め言葉で陛下を讃えたのでした。

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まさに、昨年8月8日の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」で述べられた通りのことを実践してこられたわけです。このおことばについては、本ブログで、繰り返し取り上げてきました。

女系天皇・女性天皇を認めることは、国民を分断するのではなく、国民を統合する。愛国者が目指すべきは、論争での勝利ではなく、国民の統合。 - 日本の改革

皇室制度は、日本会議や政府のためにあるのか:元号、大嘗祭、退位 - 日本の改革

そこでも触れましたが、朝日の世論調査では、「新天皇に期待する役割」(複数回答)では、「被災地訪問などで国民を励ます」が66%で最多、次いで、「外国訪問や外国要人との面会」55%、「戦没者への慰霊など平和を願う」52%等でした。そして、「皇室に親しみを持っている」との回答が76%です。

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つまり、国民は、「天皇の旅」に共感し、苦しいときに慰め励ましてくれる今上陛下に共感し、陛下と皇室を敬愛している、ということです。

令和になっても、陛下が「国民ととみなる」なら、お務めの形は変わっても、国民はやはり陛下を敬愛するはず。

では、令和になって、新しい天皇陛下は、どのような形で、「象徴としてのお務め」を果たされるのでしょうか。

これについて、東京大学客員教授御厨貴氏がふれています。御厨氏は、天皇陛下生前退位(譲位)を可能にするための「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の座長代理でした。

生前退位につき、御厨氏は、皇室典範改正ではなく、一代限りの退位特例法とした理由として、右派からの反発に対応することで時間やエネルギーを取られたくなかったとしています。「宮中祭祀以外の、行幸啓、慰霊の旅など今の陛下が拡大してきたお務め自体に疑義を持っている」からです。

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これは以前、靖国神社の前宮司が、天皇陛下の慰霊の旅を悪しざまに批判したことに表れています(以前、本ブログでは、この宮司を強く批判しました)。

天皇陛下+国民vs一部の神社関係者:神道には「宗教改革」が必要だ - 日本の改革

続けて、御厨氏は以下のように述べて、次の天皇陛下では、今のように被災地慰問や慰霊の旅を続けるのは難しいのではないか、としています。要は、右派の批判があるだけでなく、数が増えすぎた、という趣旨です。

たまたま平成の時代は自然災害が多く被災地を見舞われる機会が増えたこと、そして昭和天皇から引き継いだ戦災地への慰霊の旅とが重なって、お務めが肥大化しました。これが次代にも継続されるかというと難しい面があります。

「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」への批判に応える――象徴を語れる研究者はいるか?(中央公論) - Yahoo!ニュース

「右派の批判」は、どうせ国民全体から見れば少数者の言うことで、しかも時代に送れているのですから、意味はありません。

ただ、お務めが増えすぎた、というのは、一面の真理でしょう。正確に言えば、今上陛下と皇后陛下が、若い頃から続けてこられたような形で、令和になってからの陛下が「天皇の旅」を続けるのは難しい可能性が高い、ということです。御即位になられた年齢も違いますし、雅子様の御体調も心配です。それに、女性宮家がただちに出来ないと、皇族の数自体が、やがて秋篠宮殿下と紀子様、あとは悠仁様お一人になってしまいます。新しい両陛下と数の減った皇族で、平成の両陛下が超人的な努力で成し遂げた行幸啓を含めたすべての公務を遂行するのは、難しいでしょう。

今上陛下が言われる通り、天皇陛下の象徴としてのお務めは、天皇が国民とともにあるために不可欠のものです。ただ、お務めの形については、時代とともに変わっても、国民は理解するし、かえって、その時代ごとの国民の共感が得られるはずです。

今上陛下は、第二次大戦を経験されました。平成には、まだ国民にも生々しくその記憶が残り、戦争経験者の数もまだまだ多かったです。この時代には、慰霊の旅が国民の共感を得ました。令和の時代には、また別の形のお務めがありうるでしょう。具体的な形については、新しい陛下のお考え、ご信念にもよるところと思いますし、私がいいかげんな例は挙げるべきではないと思います。

いずれにせよ、令和においても、両陛下が、国民のことを忘れず、国民と苦楽をともにする姿勢を示され、国民と共にあるならば、象徴としてのお務めが、地球15周分の旅でなくとも、国民はやはり陛下と皇室に心からの敬意を持つことと思います。