日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

スーパーシティ法案の二つの問題点:①規制担当大臣の同意必要なので、実効性に乏しい。②住民の同意の取り方が検討不足。

今日の要点

・スーパーシティ法案は、AI等の技術利用のために、包括的な規制改革を可能にするはずでしたが、骨抜きになっています。法令の規制に特例を認めることが出来ますが、そのためには、総理が担当大臣から同意を得ないといけません。これでは、復興特区法と同じく、規制改革は規制を所管する大臣次第なので、あまり意味がありません。

・スーパーシティ(スマートシティ)の発想自体は有用なので、今後、地域住民の意思をどう生かすかをより具体的に定める形で、改善してはどうかと思います。当然、住民のプライバシー権が守られるようにする必要があります。

スーパーシティ法案、条例による法律の上書きは、規制を所管する大臣次第。

国家戦略特区諮問会議で議論されてきた「スーパーシティ法案」の概要が、昨日、同諮問会議で了承されました。

www.nikkei.com

国家戦略特区法の改正案(の概要)で、AI等の最先端技術を利用するため、法令による各種の規制の特例を一括して設けることが目的です。これまでの国家戦略特区と違うのは、複数の規制について、一括して扱えるようにすることです。

概要は以下のようになっていますが、残念ながら、大きな問題があります。

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出所:内閣府(国家戦略特区諮問会議)

「改正案の概要」(1)にある通り、結局は、

内閣総理大臣は各規制所管大臣に対し、一括して、特例措置の【検討を要請】」して、

「 【各規制所管大臣は】、要請のあった各特例措置を講ずるか否かについて、国家戦略特区諮問会議の意見を聴いた上で、遅滞なく【通知・公表】」

する形をとっています。

つまり、規制について複数の特例措置を同時に扱えるけれど、最後は、規制を担当する大臣が決めることになっています。総理はあくまで「検討を要請」、つまりは「お願い」が出来るだけです。

このため、規制特例について規制担当大臣が決めるというのでは、骨抜きではないか、ということで、叩かれています。

mainichi.jp

実は、全く同じ形で批判された法律が、復興特区法です。正式には、東日本大震災復興特別区域法と言って、東日本大震災からの迅速な復興のため、被災地域で、規制に特例を認めるというものです。この法律でも、 内閣総理大臣は、申請があったときは、【関係行政機関の長の同意を得たうえで】認定するものとされています(4条10項)。また、条例による上書きも認めているのですが、総理が認定のうえ、政令、省令の定めによって決める、となっていて、ここも結局は、担当大臣次第になっています(36条)。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=423AC0000000122#C

これでは、使い勝手が悪すぎるとして、法制定当初から批判されてきました。リンクはありませんが、新聞では、河北新報(社説)2012年5月29日、福島民報(論説)2015年5月26日が取り上げています。また、特に条例の上書きが政令・省令によるとされている部分については、自治総研の雑誌が強く批判しています。

http://jichisoken.jp/publication/monthly/JILGO/2012/05/hisozaki1205.pdf#search=%27%E5%BE%A9%E8%88%88%E7%89%B9%E5%8C%BA%E6%B3%95+%E6%89%B9%E5%88%A4+%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9%27

スーパーシティ法案についても、条例の上書きについて、内閣法制局がうんと言わなかったと報道されています(最初に挙げた日経の記事等)。結局は、規制の特例を設けるかどうかは規制担当大臣が決める、という原則は、全く変えられなかった、ということです。

法案の発想自体は有用。民主主義との関係が課題なので再検討を。

スーパーシティ法案の考え方自体は、これからの社会に必要な発想です。自動走行、自動配送、キャッシュレス支払い、オンライン治療・投薬、オンライン教育等々を実現して、住民が最先端技術の恩恵を十分に得られるように、法令の規制を緩和していく、ということだからです。

こうした改革は出来る限り進めるべきですが、一方で、住民の個人データの収集・利用について、住民からの一定の同意も必要でしょう。改革とは、一部の人達の利益ではなく、国民(住民)全体のために行うものだからです。

この点でも、スーパーシティ法案の概要では、中身がはっきりしません。以下の概要の、「スーパーシティ実現までの流れ」の「特例的手続」のところに、総理が大臣に検討を要請する際に、「住民合意を証する書面等を添付」と小さくカッコ書きで改訂ありますが、これは何を意味するのでしょう?

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出所:内閣府(国家戦略特区諮問会議)

日経の論説委員によると、スーパーシティ法案の考え方について、強権的にすぎるという批判が出たのに対し、内閣府で、それなら住民投票をしてはどうか、という案が出てきたようです。

www.nikkei.com

事実なら、いかにも場当たり的です。概要の書き方でも、「住民合意を証する書面等を添付」とあるので、住民投票が必要なのかどうか、必要ならどんな住民投票なのか、住民合意を証する書面「等」とあるから、住民合意があったことをうかがわせる別の何かでよいのか、要は、肝心のことが分かりません。

日経の社説は、新制度のモデルの一つが中国の杭州市で、IT大手のアリババ系の企業が主導する街づくりだと言います。そして、「強力な国家権力のもとで、変化が容易な社会づくりが本当に望ましいのか」と疑問を呈しています。

www.nikkei.com

私も、昨日のブログで書いとおり、中国の進める監視社会化には大反対ですし、中国が自国の通信機器や監視カメラのバックドアを利用して、日本国民を監視しようとするおそれは十分にあると思います。このため、中国政府系企業の製品については、スマートシティから排除するべきだろうと思います。

日本は、中国の監視カメラ販売の規制を!世界最大手ハイクビジョンが、ウイグル等の人権抑圧で大儲け。 - 日本の改革

国家戦略特区諮問会議や、その前の有識者懇談会の議事録を見ると、こうした批判は一応意識はしていて、自由で民主主義的な体制下での実現、ということが当然必要としています。実際、トロントではグーグル系の企業が進めようとする街づくりでは、人権団体が訴訟まで起こしているので、そうならないようにしましょう、という議論は一応されています。

www.bbc.com

ただ、実際には、住民の生活に関するあらゆるデータを24時間把握するという一面もあるので、住民のプライバシーを守りつつ、民間企業からもデータ提供の理解を得つつ、進める必要があります。そこについては、内閣府内の懇談会や諮問会議だけで決められるものではありません。

データの自由流通を実現するとともに、個人のプライバシーを徹底して守る、大手プラットフォーマーにもこの点で規制をかける、という別の課題がまだ進行中で、こちらも着地点はまだ見えません。6月のG20で日本がデータの流通について提案するというので、それ以降でないと、動きにくいのではないでしょうか。

今回の法案、片山大臣の調整力不足とよく言われています。が、それ以前に、AI等の最先端技術とプライバシー権の関係について、国民が納得のいくような形での政治的決定がなされる必要があります。逆に、そこがクリアできれば、担当大臣・既得権者の抵抗は排して、住民・国民全体の利益を重視した形で、スーパーシティ(スマートシティ)の実現を急ぐべきでしょう。