日本の改革

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WTO、韓国による日本の水産物の輸入禁止を容認。日本の水産外交は失敗続き。まずは、日本の漁業の改革を!

今日の要点

WTOが、韓国による福島県等の水産物輸入禁止を容認。この判断には疑問がありますが、外交の失敗とも言えます。このところ、日本の漁業に関する外交は失敗続きです。捕鯨ではICJで敗訴、クロマグロ等の資源管理では国際的な批判も浴びています。

・漁業外交の失敗の根本には、日本の漁業改革の遅れがあります。被災地での水産特区による漁業を、漁業団体はむしろ批判しています。昨年の漁業法改正も既得権を崩せず、全く不十分で、水産大手は冷ややかに見ています。まずは、国内の漁業改革で生産性を高めることが必要です。

WTO、韓国による輸入禁止を容認。日本の水産外交は失敗続き。

世界貿易機関WTO)は、韓国が福島など8県の水産物の輸入を禁止している問題で、韓国の措置を事実上容認する最終報告書をまとめました。日本産食品が科学的に安全であること等は認めたものの、韓国による輸入規制が日本に対する恣意的で差別的なもの等にはあたらない、としたものです。「衛生植物検疫(SPS)」協定の解釈につき、輸入制限する際の基準が正当か等はWTOに判断できないとしています。

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日本を勝たせた一審の判断が、本当に協定の解釈を誤っているのか、最終審の考え方で、科学的根拠に基づいた判断ができるのか、疑問はあります。ただ、国際機関での解決を図ろうとして裏目に出たのですから、日本の外交の失敗とも言えます。

そもそも、この紛争を国際機関で解決して、韓国含め各国の規制を緩めようとしたのは日本です。それが失敗し、かえって韓国側の規制が認められたのですから、逆に、他国に規制が広がるおそれさえあります。河野外務大臣は、これから韓国政府に対して規制撤廃を求めていくと言うのですから、最初より極めて不利な形で振り出しに戻ったことになります。

同様に、2014年、南極海での調査捕鯨が条約違反だとしてオーストラリアが中止を求めた訴訟で、日本は敗訴しています。国際司法裁判所(ICJ)で日本は科学的データを使って違反ではないと主張しましたが、判決は「科学的研究を逸脱している」と退けました。結局、日本は国際捕鯨委員会IWC)から脱退し、正面から商業捕鯨を再開することにしました。

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絶滅危惧種であるクロマグロの漁獲高管理では、日本が甘すぎる提案をして、他国を呆れさせました。2016年、日本主導で出来た甘すぎる基準は、2017年に結局は変更されました。昨年2018年には現実的なスタンスになったようですが、それまで国際的孤立が続いていました。

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日本の漁業、問題は海外よりも国内。新規参入を促し、漁業改革の徹底を!

なぜ、日本の水産外交は、失敗を繰り返したり、ぎくしゃくしたりするのでしょうか。私は、国内からの政治的圧力が強くて、妥協の余地の乏しい立場で外交交渉に臨んでいるのではないか、と思います。既得権者としての漁業団体と一部の政治家が、外交でも、国内の漁業のあり方でも、選択肢を狭めています。

捕鯨の例で言えば、IWCを脱退して商業捕鯨を再開したところで、産業としての捕鯨は、先が見通せません。日経によると、IWCの管理対象外である小型捕鯨すら日本では6業者が5隻で操業しているにすぎません。にもかかわらず、政府は今年度予算に捕鯨対策として51億円も計上しています。自民党の大物議員が軒並み、捕鯨団体とつながりがあるからです。日経から引用します。

脱退の決定には、安倍晋三首相と自民党二階俊博幹事長という2人の政権幹部の意向が働いた。
衆院和歌山3区選出の二階氏は、捕鯨が盛んな和歌山県太地町を選挙区に抱える。商業捕鯨の再開は二階氏の持論で、早くから外務省などに要望していた。首相の地元である山口県下関市も「近代捕鯨発祥の地」として知られる。
千葉県の地元に捕鯨拠点を持つ自民党浜田靖一捕鯨対策特別委員長も、同日の党捕鯨議員連盟の総会でIWC脱退への支持を表明。「伝統的な捕鯨をしっかり後世に伝える目的を達成するための判断だ」と評価した。

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最初に紹介した、WTOによる韓国の水産物輸入規制の容認は残念です。これが韓国の規制撤廃を難しくするだけでなく、他国にも規制がまた広がり、大震災被災地の漁業がますます苦しくなるからです。

一方、被災地の漁業者を苦しめてきたのは、外国の輸入規制だけではありません。日本の漁業団体が、被災地での水産特区での取り組みを批判してきました。

三陸水産業を復活させるために宮城県が導入した「水産特区」は、漁協が事実上独占する漁業権を、企業にも与える仕組みです。石巻市桃浦地区のカキ養殖で、成果もあげています。

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ところが、これに全漁連が反対です。長屋信博JF全漁連代表理事専務は、こう言います。

周りからは今まで話し合いで決めてきたのに、あの企業だけなぜそこで牡蠣の養殖をやれるのか、ということになり、実際に地元との軋轢を生んでいます。このような地元の漁業者を追い出し、強引に参入していくということが本当に地方創生になるのでしょうか。

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「話し合い」という美名の下に、企業の参入を阻止する。特区だけでも認めたら、「なんであの会社だけが」と文句を言う。被災地の漁業を本当に苦しめているのは、こういう団体ではないでしょうか。よくも、被災地の復興の努力に対して、こんなことを言えるものです。

こうした問題を解決するために、昨年の漁業法改正が行われたはずでした。持続可能な漁業の発展のために、漁業権を企業にも付与できるようにする方向でした。ところが、実際の法律では、

「既存の漁業権者が漁場を適切かつ有効に活用している場合は、その者に免許。既存の漁業権がない等の場合は、 地域水産業の発展に最も寄与する者に免許(法定の優先 順位は廃止)(第73条) 」

ということになっています。

http://www.maff.go.jp/j/law/bill/197/attach/pdf/index-9.pdf

このように、割当基準が極めてあいまいで、結局は既得権者である漁協が守られる可能性が高い制度です。今後成長が見込める沿岸の養殖業について、これでは参入が進みません。水産大手企業は、既に冷めた目で見ています。なお、漁業改革の対策ということで、昨年度補正予算と今年度予算の漁業関係の予算は増額されています。

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日経の志田編集委員も、今回の漁業法改正の基準のあいまいさについて、先ほどの特区の件と合わせて、こう批判します。

東日本大震災後の宮城県石巻市では水産業復興特区の制度を利用し、2013年に民間企業であるカキ生産会社が漁業権を取得した。しかし、多くの漁業者はこれを地域の調和を乱す「悪例」ととらえ、後続は現れていない。規制改革とともに、新規参入者を拒む沿岸漁業の閉鎖性を改めなければ漁業に活気は戻らない。

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韓国による福島県等の水産物輸入禁止は問題ですし、撤廃を働きかけるべきです。ただ、WTOに提訴して大負けしたという大失敗は、猛省すべきです。この機会に、日本の水産外交全般について、それが日本国内の漁業団体と一部政治家のエゴで歪められていないか、全体的に再点検すべきです。そして、国内の漁業改革を徹底して、特区はもとより、漁業権については、当面は行政上の指針であっても、公平で透明なルールとして、法律自体も出来るだけ早くそのように改正すべきです。

漁業に限らず、日本の農林水産業の復活のために、国民はどうすべきでしょうか。まずは、漁業の既得権者達が何を考え、何をしているか知って、おかしなところは厳しく批判しましょう。TPP騒動もそうでしたが、外国を仮想敵にして騒いで、対策が必要だと言って補助金を増額させる、新規参入は形だけ、特区で新しい取り組みをしたら袋叩きにする。既得権者と一部政治家のこういうやり方を、やめさせましょう!