日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

F35Aの良し悪し以前に、防衛省の調達体制は問題だらけ。事故のリスクを減らし、国民も隊員も守るために、徹底した調達改革を。

今日の要点

・F35Aが海上に墜落。原因が何であれ、現在の防衛省・防衛装備庁では、そもそも調達時に、装備品の性能・安全性や費用について正確に理解できるか、疑問があります。防衛省は、装備品調達につき、会計検査院にも、財務省にも、多くの問題点を指摘されてきました。

・日本国民を守り、自衛隊員の安全を守るためにも、防衛省・装備庁の調達全般にわたる改革が必要です。

最新鋭機が海上に墜落。防衛省・防衛装備庁は、そもそも調達時に十分な注意を払えているか。

三沢基地のステルス戦闘機F35Aが、海上に墜落しました。

www.jiji.com

行方不明の操縦士・三等空佐の安否が気遣われます。

最新鋭戦闘機の墜落事故に、政府は衝撃を受けています。まだ現時点では、何が原因かは分かりません。機種自体の欠陥によるのか、整備不良含めた人的ミスか等、航空幕僚監部の航空事故調査委員会が、これから調査します。原因が何であれ、最新鋭の戦闘機であっても、安全神話など許されません。何らかのリスクは必ずあります。問題は、そのリスクをいかに減らすか、ということです。そのためには、防衛省や防衛装備庁がどうするべきか、考えてみます。

去年の時点で、この機種に欠陥があったということは、既にメディアで報じられていました。まず、アメリカの会計監査院(GAO)が、966もの欠陥を指摘していた、ということです。

https://www.gao.gov/assets/700/692307.pdf#search=%27GAO+F35%27

これは日本のメディアでも、右はSankeiBizから、真ん中は日刊工業新聞、左は赤旗まで指摘していました。赤旗は、今年2月の衆議院での共産党の質問に関して報じています。

F35、欠陥未解決の生産批判 米監査院「ゴール急ぎすぎ」 - SankeiBiz(サンケイビズ)

【電子版】ステルス機F35の欠陥、フル生産前に改善必要 米政府監査院が国防総省に勧告 | 政治・経済 ニュース | 日刊工業新聞 電子版

安倍政権の“浪費的爆買い”/F35戦闘機 欠陥把握せず/衆院予算委 宮本徹議員に防衛相答弁

それ以前の2017年の時点で、東京新聞の半田滋氏が、その当時にはF35Aの重要なソフトが未完成だった、と報じています。

同じ記事で、半田氏は、この機種の選定過程について、まとめています。

F35をめぐる問題は、機種選定が行われた2011年当時、筆者が東京新聞で指摘するなど複数の新聞で繰り返し、取り上げられた。
機種選定の際に候補になったのはF35(米ロ社)、F/A18(米ボーイング社)、ユーロファイター(英BAEシステムズ社)の3機種。F35以外の2機種はステルス機ではないものの、リビア空爆などに参加した現役機なのに対し、F35は開発途上にあった。
何としてもステルス機が欲しい航空自衛隊は、選定基準から飛行審査を排除し、カタログ性能だけで選定すると主張した。実際に飛ばして性能を比べれば、未完成のF35が脱落するのは確実だったからである。
(中略:引用者)
航空自衛隊の言い分を丸飲みした防衛省は、重要視する順に(1)性能、(2)経費、(3)国内企業参画、(4)後方支援の4項目で3機種を比べ、2011年12月、「最高得点はF35」と発表した。これにもとづき野田内閣がF35導入を閣議決定した。

gendai.ismedia.jp

このように、完全に見切り発車で導入が決まったようです。

更に問題は、この機種の購入が、FMS、対外有償軍事援助によるものだったことです。大雑把に言えば、兵器の輸入ということですが、アメリカ政府が軍事機密等のある重要な兵器を、特別に他国に「軍事援助」して代金を得ることから、こう呼ばれています。この契約の特徴を、日経新聞から引用します。

FMS契約では価格は米国政府が決め、代金は日本政府が前払いする。装備品を提供する時期は決めず、契約内容が変わる場合もあるなど、米国側が取引の主導権を握る。ライセンス供与も原則認められない。

出所:日経新聞2018年1月18日

 最近では、このFMSによる防衛装備品導入が急増しています。同じ記事からグラフを引用します。

日本の防衛費、米がさらう 装備調達で不利な契約 :日本経済新聞

ただでさえ一方的になりがちな契約での装備品購入が急増していたのですが、やはり問題が発生しました。

2017年、会計検査院は、FMAによるF35A調達につき、防衛省が価格上昇要因を把握できていないこと、納品完了後の余剰金の返済について詳細が定められていないこと、本来は国内企業が製造すべき部品が搭載されていなかったこと、等の問題点を指摘しています。

当該の会計検査院報告はこちらです。

report.jbaudit.go.jp

特に最後の点は、「国内の防衛産業を育てるためには、日本企業が部品を製造することで、F35Aの価格が高くなってもやむを得ない」という理屈が全く通らないことを意味しています。契約に反して国内産業の部品が搭載されていないのに、きちんとした対応をとっていなかったのですから。こうした問題点につき、一昨年、財務省は、こんなポンチ絵にまとめていました。

f:id:kaikakujapan:20190410174544p:plain

出所:財務省

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291031/03.pdf

それだけではありません。先の会計検査院報告では、その他にも、2017年に装備庁がコスト見積りに計画を文書として作成していなかったとか、2018年に文書を作った後も装備庁長官の決裁を得ていなかったりとか、およそ役所とは思えないようなデタラメぶりだったことを指摘しています。

F35Aに限らず、FMSの問題点ということでは、東京新聞も去年、記事にしているので、一部引用します。主としては、アメリカ側を叩いている記事です。

パーツ番号が合わない、数量が異なる、空欄のままになっている…。検査院が調べたところ、早期警戒機など二〇一四~一五年度の六十四契約(総額六百七十一億円)すべてで、米側から届いた納品書と精算書の記載に食い違いがあった。検査院の担当者は「官の会計処理としてありえない」とあきれる。
 しかも、食い違いは常態化していた。原因は米側にあるというのに、森室長は「こういうものだと思って米政府には改善を求めてこなかった」と釈明する。

出所:東京新聞2018年11月19日

www.tokyo-np.co.jp

こうした点については、もちろん、第一義的には、アメリカ政府、アメリカ企業にこそ問題があります。一方で、ここまでメチャクチャなことをされて、何も言わない防衛装備庁も防衛装備庁です(記事中の室長氏の所属先です)。ちゃんと防衛大臣にまで上げて、アメリカ政府にしっかり文句を言って是正させるべきだったでしょう。

それ以前に、防衛省、防衛装備庁による装備品の調達体制があまりにお粗末で、アメリカになめられ切っているという構図に見えます。おそらく、アメリカだけでなく、国内の防衛産業にも、なめられていることでしょう。天下りまでしていたらなおさらです。

昨年2018年10月24日の財務省財政制度等審議会では、防衛省・防衛装備庁の調達体制を、財務省の主査が徹底的に批判していました。いくつか列挙すると、

・中期防で装備品の新規後年度負担を管理できていない

・装備品の単価さえ書かれていない(これはこのときの指摘で一応改善済)

・計画単価より最終単価等が数十%もアップしている装備品が多数ある

・防衛監察本部は予算の適正執行も所掌事務なのに今まで改善したのはモップ等の清掃用具の一者応札という一件だけ

・システム調達で「大手ITベンダーの型番を指定して、この汎用PCを入れないとだめですというような入札仕様書」を使用

・防衛装備庁が、新たなコスト管理方法(ライフサイクルコスト算定とコストデータベース)を全く使えておらず、効果なし

・調達部門の人材育成は座学中心で装備品製造について現場の知識乏しい

等々です。このように、現在の防衛装備品の調達体制は、深刻な問題を抱えています。装備品の中身がよく分からず、費用の管理も出来ず、という状態では、殉職さえ引き起こす事故のリスクは高まるでしょうし、何より、国民を守れません。

(審議会(分科会)のリンクは以下の通りです。議事録はリンク先の一番最後の方、それほど長くないのでよろしければご一読を。資料のリンクも貼っておきます)。

www.mof.go.jp

配布資料

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia301024/03.pdf

防衛装備品につき、徹底した調達改革が必要。

こうした問題点を克服するためには、多くの調達改革が必要でしょう。財務省も、先の審議会でいくつかの提案をしており、それぞれに説得力があります。

私はとりあえず、三つだけ挙げたいと思います。

第一に、防衛装備庁のスタッフ充実です。これは財務省に限らず、軍事ジャーナリストの清谷真一氏も言っています。

toyokeizai.net

まともに防衛装備品の調達を行えるようにするためには、軍事、会計、製造業、IT等の各分野の専門知識を持った人材が多数必要です。そのための人員を増やすことは、かえって防衛費を抑え、有用な装備品を十分購入できることにつながるでしょう。

第二に、これも財務省の資料によりますが、アメリカの国防総省の「契約監査局」のような、独立性の高い専門的な機関を作り、調達等に関する審査・助言等を行うようにすべきです。先に紹介した財政制度等審議会の資料を貼っておきます。

f:id:kaikakujapan:20190410185440p:plain

出所:財務省

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia301024/03.pdf

第三に、契約方法を工夫すべきです。

防衛装備品は、技術上、または国防上の理由から、競争入札ではなく、一者応札にならざるを得ない場合が多くあります。その際、現行の契約方法では、大雑把に言えば、製造費用に一定の利潤率等を上乗せした価格を決めています。

このやり方では、企業はいくらでも費用をかけ放題にした方が儲かることになり、コスト削減の誘因が働きません。装備庁はそのため、企業の製造技術・費用等をある程度理解する能力が求められますが、限界があります。

そこで、契約価格の上限を規制するプライス・キャップ制等を検討すべきです。適切な上限を設定できれば、企業は価格が決まっている以上、コストを下げることが自分の利益になるからです。

あるいは、企業にコストを報告させて、コストが低ければ高い利潤率、高ければ低い利潤率(場合にってはゼロやマイナス)を認めるという形で、複数の契約を企業に提示して、企業が自分が一番得だと思う契約を選ばせる、というのも一つだろうと思います。こうすれば、企業は、自分の技術水準によって、「高いコストが認められるが低い利潤率」の契約か、「低いコストしか認められないが高い利潤率」の契約か、自分に得になる方を選ぶことになり、コストをやたらに増やそうという誘因がなくなります。他にも、経済学者等が色々なタイプの契約を提案しており、実務でも一部取り入れられているようです。防衛の経済学という分野でも、こうした議論はされているようなので、とにかく、国民負担を減らして有用な装備品をきちんと調達するために、色々な手段を検討してみるべきです。 

防衛の経済学

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