日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

「日の丸液晶」ジャパンディスプレイは「五星紅旗液晶」へ:国策失敗の責任をとり、世耕経産大臣は辞任せよ。政府は官民ファンドを全廃せよ。

今日の要点

ジャパンディスプレイ(JDI)は経営再建のため、中台連合3社から金融支援を受け入れます。JDI失敗の原因は、無駄な官民ファンドで企業を延命させて非効率的な経営をさせた政府と、法的整理を避けて政府の支援と干渉を甘んじて受け入れた民間企業にあります。

・中台連合出資で外資筆頭株主になります。また、今後の経営は中国政府の補助金目当てになるので、JDIは実質的に中国共産党の手先となります。

・JDIを経産省が主導して作り、経産省所管の官民ファンドが7年間で3000億円近くを出してきたのは、「日の丸液晶」が必要だから、という理由でした。ところが全く逆に、「五星紅旗液晶」を作る結果になりました。

・この結果を招いた世耕経産大臣は、政策を進めてきた行政機関のトップとして、責任をとって辞任すべきです。また、政府は、官民ファンドを全廃すべきです。

ジャパンディスプレイは中台連合から金融支援を受けて、中国主導の外資

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は一昨日、台湾・中国連合3社から、最大800億円の金融支援を受け入れることで大筋合意しました。これで、外資筆頭株主になり、日本の官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)は筆頭株主ではなくなります。

www.nikkei.com

ジャパンディスプレイという会社は、2012年に産業革新機構の主導で、ソニー東芝・日立のディスプレイ部門が統合されて出来ました。最初から国策会社として生まれたため、経営判断にも、経済産業省と官民ファンドの産業革新機構との調整が必要でした。これも一因で経営が行き詰まったと言われています。

日経が2017年8月10日の記事で紹介しているエピソードは、企業経営に政府がからむと、本当にろくなことにならないという見本のようなものです。

ジャパンディスプレイは、アップルのiPhone6sへの液晶の提供を計画していましたが、この機種が全然不人気で売れず、アップルから、石川県白山市の新しい工場の建設をすぐに止めてくれと言われたそうです。

ところが、同社の取締役会は中期の経営計画を産業革新機構経産省に報告し、承認を得てきたため、その協議を続けている間に建屋がほぼ完成してしまいました。そこで既存の工場を止めようと決めて、千葉と愛知の二つの工場の一部停止と早期退職者の募集をやろうとしました。すると、どうなったか。日経から引用します。

だが、思わぬところから「待った」がかかった。
アベノミクスの失敗を想起させる経営判断は慎んでほしい」。経産省幹部が苦言を呈したのだ。とりわけ雇用は安倍政権が重視する経済指標。「国策企業」の人員削減に神経をとがらせた。革新機構幹部も経産省の意見に同調、16年3月の構造改革案は「中途半端なまま終わってしまった」(関係者)。

出所:日経新聞

www.nikkei.com

また「忖度」です。官邸に食い込んだ経済産業省の幹部が言うなら、総理自身の判断もあったかもしれません。だいたい、白山工場一つ作ったり作るのをやめたりするにも政府と機構にお伺いを立てるのでは、市場の変化に対応できません。

一方、政府だけが悪いのではありません。もともと、ソニー東芝、日立のディスプレイ部門が、それぞれに大したリストラもせずに、政府に助けを求めてきた、という形でもあります。

最初から官民ファンドなど作らず、政府が支援などせずに、再建型の倒産手続きに進むべきでした。大西康之氏は、民事再生法や改正会社更生法のような再建型倒産手続きが整備されたのだから、革新機構の前身の産業再生機構から不要だったと主張しています。同氏の主張は、私も以前、ブログで紹介しました。

ゾンビ企業を支援するゾンビ・ファンド:官民ファンドは全廃を - 日本の改革

最初のニュースに戻ります。以下、ダイヤモンド・オンラインの2019年2月7日の記事によります。

中台連合というのは、中国シルクロード・インベストメントキャピタル(CSIC)と、中国最大の資産運用会社の嘉実基金管理(ハーベスト・ファンドマネジメント)、台湾のタッチパネルメーカーの宸鴻集団(TPKホールディング)、中国の自動車部品メーカーの敏実集団(ミンス・グループ)が参加しています。

中台連合とJDIの目標は、アップルのiPhone用の有機ELパネル生産のための大規模投資を行うことです。JDIは液晶工場しか持っていないので、有機ELパネル工場の建設のため、中台連合を通じて、

「中国政府の補助金を活用するのが肝」

と、ダイヤモンド・オンラインは報じています。

diamond.jp

「日の丸液晶」は「五星紅旗液晶」へ。世耕経産大臣は辞任せよ。政府は官民ファンドを全廃せよ。

ジャパンディスプレイは、中台連合を通じて、中国政府の補助金をあてにして、企業再建をすることになります。支援する中国企業の一つ、中国シルクロード・インベストメントキャピタル(CSIC)は、社名からして、一帯一路を思わせます。この企業が一帯一路政策の先兵なのかどうか分かりませんが、いずれにせよ、中国政府の補助金頼りの経営をこれからしよう、というのが、国策会社ジャパンディスプレイと、日本国政府経済産業省の判断です。

ジャパンディスプレイは、経産省が主導して作り、経産省所管の産業革新機構が、7年間で3000億円近くも投融資してきました。すべては、「日の丸液晶」が必要だから、という理由でした。ところが全く逆に、「五星紅旗液晶」を作る結果になったのです。

この結果を招いた世耕経産大臣は、政策を進めてきた行政機関のトップとして、責任をとって辞任すべきです。これは歴代の大臣のせいです、などという言い訳がきくはずがありません。この政策を続けてきたのは政府であり、継続的に所掌しているのは経済産業省という行政機関なのですから、政策担当者である大臣が、失敗、それも政策目的と180度正反対の結果を招いた時点で、責任をとって辞めるべきです。

また、政府は、官民ファンドを全廃すべきです。今後、企業再建は原則として全て、再建型倒産手続きによるべきです。バブル崩壊後に出来た民事再生法と改正会社更生法は、有益な事業を清算せずに継続する仕組みを十分備えています。法的手続きでなくとも、私的整理によって債権放棄等を行うことも可能です。このためのガイドラインも整備されており、公正で迅速な企業再建は裁判外でも十分に可能です。

経営者に責任があれば会社更生法で経営者をクビにする、なければ民事再生法でそのまま経営してもらう、あるいは私的整理でよりスピーディーに再建を始める。当然、株主は責任を負い、銀行等の債権者も損失をかぶる。身軽になる前提なら、スポンサーというかバイヤーも国内で見つけやすいでしょう。

このように再建型倒産手続きを進めて、それでも、どうしても国内で資金の出し手がない、しかも、中国企業に買われては安全保障上問題だ、という場合にのみ、政府が資金を出すべきです。出し手は、政策金融公庫だけで十分。小泉改革の通り、政策金融も一本化するべきです。アメリカは対米外国投資委員会(CFIUS)による規制で、中国企業の買収から米国企業を守っています。今回のJDIも、CFIUSの今後の判断待ちと言われています。日本も同様の仕組みを作り、企業再建での政府投融資は、原則として安全保障上の必要性や信用秩序維持のような場合に限って行うとすべきです。

もう、色々と言い訳をつけて、ゾンビ企業を政府が支えるのはやめましょう。企業の再生も、原則として民間に任せましょう。