日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

改正入管法施行。国は自治体に丸投げで、自治体は財源不足で準備できず。田舎のブラック企業は、新在留資格でなく、技能実習制度を継続利用。

今日の要点

・改正入管法が施行されました。懸念された通り、地方自治体は受け入れ体制が全く整っていません。改正法が、従来通り、地方自治体に全てを丸投げしたためです。

・新たな在留資格だと転職もできるので、企業は外国人を自社に縛り付けておくため、技能実習制度を選び続ける可能性があります。技能実習制度は廃止しないと、外国人の人権は結局は守れません。

・新外国人受け入れよりも、まずは在留外国人、特に永住外国人につき、教育と、転職可能で日本人の最低賃金以上のまともな仕事と、社会保障に関する権利を認めるべきです。

改正入管法、施行。地方自治体の準備は全く間に合わず、法務省は実態も明らかにせず。

昨日、改正入管法が施行され、新たな在留資格による就労が14の分野で認められることになりました。政府は、法律には、外国人支援を行う旨のみを定め、

f:id:kaikakujapan:20190402055837p:plain

出所:法務省

http://www.moj.go.jp/content/001278518.pdf

具体的な方策は、総合対応策や基本方針として、役所が整備する形をとりました。

その目玉として、日本語教育の充実があります。行政サービスや生活情報の相談に原則11言語で対応する「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を全国に約100カ所整備することを打ち出していました。補助金は国が一部を出しますが、実際の設置・運営は自治体が行います。下の(やたらに細かい字の)ポンチ絵の左上、「生活者としての外国人に対する支援」の一番最初に挙がっています。

f:id:kaikakujapan:20190402060718p:plain

出所:官邸ウェブサイト

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai3/siryou3-1.pdf#search=%27%E3%80%8C%E5%A4%9A%E6%96%87%E5%8C%96%E5%85%B1%E7%94%9F%E7%B7%8F%E5%90%88%E7%9B%B8%E8%AB%87%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%80%8D%27

ところが、予想通り、準備が全然間に合っていません。朝日によると、補助対象は、47都道府県と20の政令指定市、さらに外国人住民が一定の人数・割合以上の44自治体、合計111自治体としましたが、地方議会に諮る時間が足りない等の理由で、申請したのは37自治体のみです。法務省は昨日の時点で何カ所にセンターが整備されるか、公表していません。たぶん、まだほとんどないのでしょう。

外国人から多額の保証金を徴収するような悪質な仲介業者の排除についても、政府は2018年度中に、送り出し国として想定される9カ国と協力覚書の締結を目指していましたが、3月末時点での締結はフィリピン、カンボジアミャンマー、ネパールの4カ国だけです。

朝日は、外国人が多く住む全国の74自治体を対象にアンケートを行いましたが、「多文化共生総合相談ワンストップセンター」については、過半数が財源不足などを理由に開設予定がないと回答しています。そもそも、人口規模の小さい市町村は、どれほど外国人が多くても、国の補助対象となっていません。

digital.asahi.com

 外国人受け入れについて、教育に関する支援が不十分という点は、以前、本ブログでも書きました。

人手不足解消ではなく、多様化のための外国人受け入れを - 日本の改革

施行されてみると、それ以前に、窓口の設置についてすら、施行日に全く間に合っていません。そもそも、対策は相変わらず自治体任せで、その自治体も国が言うような窓口は設置できず、小さな自治体ではその目途さえ立たないのが現状です。

田舎のブラック企業は結局、新たな在留資格より技能実習制度を選択。まず、技能実習制度を廃止しないと、改正入管法は生かされない。

以上のように、外国人への支援は全く不十分ながら、せめて労働力としては使える体制になるのでしょうか。実は、それさえ全くあてになりません。入管法は、技能実習制度という抜け道での事実上の就労ではなく、外国人を正面から労働者として扱い、その権利も保障しようとしています。その点では必要な法律です。ただ、課題は支援体制の不備、というのが、先に述べたことです。

ところが、そもそも、田舎のブラック企業は、この改正入管法の新在留資格というのを歓迎していません。技能実習生なら転職の自由がなく、ひどい待遇で自分の会社に縛り付けておくことが出来るけれども、新在留資格では、外国人をちゃんと労働者として扱うことになり、転職の自由もあるからです。

改正入管法が施行された昨日の岐阜新聞から引用します。

だが新制度は技能実習と異なり、同一業務や業務内容に共通性がある場合は転職も認める。このため賃金の高い都市部に移ってしまうと危惧する。同社の実習生の受け入れ団体である山県市商工会は「新制度がどう運用されるのかを見ながら活用を検討したい」と慎重だ。
 新制度について企業に聞き取り調査する県商工政策課の担当者は「新制度は未確定な部分が多い。企業は当面、従来の実習制度で対応していくのではないか」とみる。

www.gifu-np.co.jp

地元の商工会まで、低賃金で拘束したいと本音を言っていますし、県庁も、企業は技能実習制度を使い続けるだろう、と言っています。

千葉県を中心に和食チェーン「はな膳」などを展開するグリーンダイニング(船橋市)の担当者は、更に露骨です。

同社の人事担当者は「それでも技能実習生に魅力を感じている」と話す。最大の理由は、転職が認められていないことだ。

「真面目で仕事の習得も早い。何より、早期離職の多い日本の高卒と違い3年間は働いてくれるのが魅力だ。同時期に大卒のビザで採用した6人中、2人は転職した。技能実習の後に特定技能に移行することは歓迎するが、最初から転職ができる特定技能での採用には抵抗がある」

dot.asahi.com

政府は、技能実習制度には問題が多いから、改正入管法の新在留資格で、まともな労働者として扱うんだ、と説明してきました。しかし、これでは、技能実習制度から新在留資格に切り替わることなど期待できません。劣悪な環境の低賃金労働で転職の自由もない、事実上の奴隷労働を認める技能実習制度は、即刻廃止すべきです。こんな制度があるから、淘汰されるべき非効率的な企業がいつまでものさばって、日本国民の賃金水準を下げています。

こうした企業は更に、政治を通じて、自分達の延命を図ることになります。それが今回の改正入管法です。いざ法律が出来てみれば、転職可能では困る、それなら元のままでいいや。何という自分勝手、何という無責任。こんな連中に言われるままに法律を改正する方もする方です。

まず永住外国人の人権保障を!外国人共生基本法の制定で、支援の財政的裏付けを!

そもそも、日本は移民政策をとらないという政府の説明自体が、既に大嘘となっています。移民の定義は色々あるというのは事実ですが、在留外国人は既に263万人、永住外国人に限っても、107万人にもなっています。

digital.asahi.com

永住外国人のうち、周知の通り、特別永住者は減り続け、それ以外の、新たに入国した外国人が多数を占めています。単なる「戦後処理」という範疇の問題ではありません。

出所: 望月優大「ファクトで押さえる「日本の移民問題」。在留外国人300万人時代をどう捉えるか」

note.mu

もう、特定の分野でのみ、一時的な在留のみで帰国、などという建前はとっくに崩れています。改正入管法も、最初は、5分野の特定技能についてのみと言っていましたが、ブラック労働をさせたい業界が我も我もと 加わって、14分野となりました。それぞれの業界の各企業は、転職の自由などない方が良いと得手勝手を言っていますが、対象分野をこれほど増やして、逆に転職の可能性を増やしたのは自分達です。最初から転職の自由を認めて、あらゆる業種について就労を認める、ただし、受け入れ人数の上限は、国と自治体がまともな人権保障が出来る範囲に限る、とするべきです。

一次的な在留で帰国させるという建前も、最初から無理に決まっているから、これほど多くの在留外国人と永住外国人が住んでいます。まずは、現状で日本に住んでいる外国人について、教育・就労・社会保障について、出来る限りの人権保障をするところから始めるべきです。

人手不足対策については、高齢者の就労はこれから頭打ちになるとしても、働きたい女性のための環境整備は全く足りていません。働きたい女性が全て働きに出ても問題ない程度の保育サービスの受け皿を作り、在留・永住の外国人も今以上にまともな職場に移れるようにして、ブラック企業が人手不足と言っても取り合わずに、むしろ淘汰圧を加えて退場させる、という対策を国全体としてとる必要があります。

人手不足だから外国人受け入れ拡大、その後に外国人支援、という発想で改正した今回の入管法は、結局は技能実習制度に負ける可能性があります。今からでも発想を転換して、まずは在留・永住の外国人も含めて、外国人も出来るだけ日本国民と同じ権利を保障することにして、それが可能な受け入れ上限を決めるべきです。こうした政策の実現には、やはり、外国人との共生に関する基本法が必要です。