日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

日経新聞、「地域おこし協力隊」を持ち上げる。過疎地の臨時公務員や田舎ブラック企業の給料を国の税金で支えるべきか。移住が自己目的の地方創生は中止を。

今日の要点

・日経が地域おこし協力隊の人数が増え続けていると報じていますが、多くの場合、国の税金で過疎地に臨時公務員やブラック企業の従業員等が増えただけです。

・そもそも、地方創生政策が、地方への移住を促進し、東京への人口流入を防ぐことを最大の目的としているのが間違っています。政策目的はあくまで各地域の住民の厚生水準の合計=日本国民全体の厚生水準を上げることです。

・地方創生政策は、政策目的を誤っているうえ、手段としても中央集権的に交付金バラマキをしている点で間違っています。静岡県の屍累々の失敗例を見るべきです。地方創生政策は、もうやめるべきです。

日経が地域おこし協力隊の人数増加をポジティブに報道。実態は、過疎地の臨時公務員や地場産業の人手を、国の税金で増やしているだけ。

昨日の日経で、地域おこし協力隊の人数が増え続けて5000人を超えたという記事が出ていました。自治体が移住者の仕事を最長3年間保障し、地方への移住を促進する制度です。国が隊員1人当たり年400万円を上限に自治体を財政支援します。始まったのは2009年度ですが、現在は、地方創生政策の一環として、財政支援も増やされています。

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なかには、大分県竹田市(受け入れ人数最多)のように、芸術を通じた地域振興を目指し、廃校での芸術活動を支援するような取り組みもあります。事業予測がしっかりしているなら、こうした試みは有意義でしょう。

しかし、過疎地の臨時公務員として使ったり、人手不足が深刻な地場産業用に使ったりしている例が多いようです。過疎地の自治体ではは、隊員数が職員数の2~3割に相当することが珍しくないと日経の記事に出ています。全国で最も比率が高い新潟県粟島浦村は86%に及ぶそうですから、もう過疎地の自治体運営を国が丸抱えしている形です。

「人手不足が深刻な」地場産業の雇用に使っている、というのも、非常に気になります。よく言われることですが、地方の産業が人手不足なのは、生産性の低いブラック企業が多いからです。そんな企業はさっさとつぶれるにまかせるべきです。ところが、そんな企業、産業に若い働き手を提供するため、国が一人当たり400万円もの税金を使うというのですから、政府がブラック企業の片棒担ぎをしているようなものです。

財源も人手も全然足りない自治体は、広域で統合する等、効率化を図ればよいことですし、ブラック企業は淘汰されるべきです。いずれも、国の税金と、若い人材という、二つの貴重な資源を投入すべき対象ではありません。

地方創生は、人口を地方に分散させると言う政策目的自体が間違い。要は地方自治体の延命政策。

そもそも、地方創生政策は、政策目的自体が間違っています。この政策の背景となる考え方に、いわゆる「地方消滅論」があります。地方消滅論は、こんな風に地方創生政策と結びついています。

日本は人口が減っている、特に地方は、東京に人口が移るから急激に減っている、このままでは「地方が消滅する」、そして、移住先の東京は出生率が低いブラックホールだ、だから、日本の人口を維持するために、東京から地方に無理やりにでも人口を移動させるべきだ、したがって、地方創生政策は、東京から地方に人口を移動させることを目的とすべきだ。

以上のお話で言うところの、「地方が消滅する」とは、どういう意味でしょうか。地域おこし協力隊の例を見れば分かる通り、消滅しないように維持しようとされているのは、地方自治体や田舎のブラック企業です。一言で言えば、これまで地域を支配してきた既得権者達の権益、これが消滅することを称して、「地方が消滅する」と言っているのです。

地域再生の専門家の木下斉氏は、こうした視点から、「地方消滅論」も、地方人口の増加を政策目的とした地方創生も、批判し続けてきました。

diamond.jp

木下氏の、地方創生政策への批判的著書はこちらです。

地方創生大全

地方創生大全

 

 私からは、東京ブラックホール論というのが、本当に下らないものに見えます。要は、東京が少子化対策に本気になればいいだけのことです。小池都知事の下でこの点は急速に改善しています。

東京の待機児童は、2018年6月の時点で、前年比3,100名減少して、5,500名弱です。今後、2019年度末までの待機児童解消ということを目標にしています。潜在需要が数千人掘り起こされることがなければ十分達成可能ですし、それほどの需要が顕在化するなら、それは一層素晴らしいことです。

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こうした東京都の努力も、東京都民の思いも一切無視して、どうしようもないしがらみだらけの地方自治体を延命させ、農林水産業を含めた田舎のブラック企業・産業を延命させるため、ただただ東京から地方に人口を移動させようというのが地方創生政策です。だから東京の大学の定員を抑制するなどというバカバカしい政策まで出てくるのです。地方創生政策は、政策目的の設定の仕方自体が間違っています。

本当に目指すべきは、地方の人口を無理やり増やすことではなくて、地域経済の活性化です。政策目的とすべきは、各地域の住民の経済厚生の水準を上げることです。ひいては、その合計である日本国民全体の経済厚生を向上させることです。

地方創生は、政策手段も間違い。中央集権的に交付金ばらまくので、交付金目当ての無駄な事業ばかり。地方創生政策はもうやめるべき。

そのために手段として必要なのは、地方への権限と財源の移譲です。後は自治体と地域住民の才覚次第です。首長の才能と努力で大阪のように大発展をするか、ナショナル・ミニマムに甘んじるか、全ては地方の努力次第です。「東京一極集中ガー」などと、甘ったれてはいけません。日本維新の会の国会議員の中にさえ、そういう感覚の甘ったれ議員がいるのは全くけしからん話です。

地方創生政策は、何よりも、中央集権的な交付金バラマキを主とした政策になっているのが最大の問題です。既に本ブログでも書いたのですが、中央集権的に交付金をばらまくだけの政策なので、地方自治体は、交付金目当てに無駄な事業をやっており、しかも結果をきちんと検証もしていません。

日経の懺悔「下らない地方創生事業を紙面で紹介してゴメンナサイ」:地方創生は来年度で終了を! - 日本の改革

上記のブログを書いた後、静岡県での地方創生事業の失敗について、地方版にいくつもの事例が掲載されたので、少し紹介します。

まずはおさらいですが、地方創生の「地方版総合戦略」につき、静岡県内35市町が掲げた計約1300項目に上る目標の平均達成率が49%だけだった、ということです。多くの計画が「補助金目当て」だったのが理由だと、自治体の職員自身が告白しています。

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県内で見ると、東の方がうまくいっていないようです。引用すると、

計画の中には「(不審者による)子どもへの声かけ件数を減らす」(御殿場市)、「スポーツ大会の出場者数」(藤枝市)など将来の人口目標との関連性が分かりづらいものも少なくない。「社会増6010人」(静岡市)など実現性に乏しい計画もある。市町の実情に合った計画の修正も急務になっている。

・・・自治体が見直すというより、国はもうやめるべきでしょう。

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極めつけは、新産業創出の失敗です。

唯一の顧客は静岡県の難波喬司副知事――。裾野市が地元事業者と組み、2015年12月に立ち上げた屋上緑化事業の顧客は18年12月時点で難波副知事の1件のみだった。

なんでこんなことになったかというと、

この屋上緑化は市が「先進的」とみて事業化に乗り出したが、実は以前にもあったものだった。緑化市場では「過去に廃れたもの」と見なされたのが不振の要因だ。行政がいったん決めたことは容易にはやめられない。市は長い目で支援するという。市役所には今も屋上緑化を宣伝する鉢が並ぶ。

ダメ事業の典型例ですね。他にも、成果はシラス缶詰だけだったという「先進的」事業もあります。

静岡市の海洋産業クラスター創造事業も鳴かず飛ばずの状態だ。東海大学海洋学部や海洋研究開発機構JAMSTEC)を生かす狙いで、事業概要には「次世代型漁船の開発」「海洋観測システムの構築」などと先進的な言葉が並ぶ。

だが、19年2月時点で事業化したのは静岡県立大学などの協力を得て完成したシラス缶詰と海洋動物向け記録計のみだ。当初目標とは大きく乖離(かいり)した「成果」だったことは否めない。

 

県内市町の新産業創出担当者は「長い目で見てほしい」と口をそろえているそうですが、一言、「いやです」。

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現状で成功している例も紹介されています。いずれも、東京等から人口を移住させるのではなく、人口流出を抑えるための施策を行っているようです。企業誘致に事業をしぼったり、国の交付金頼みでなく自前補助金通勤手当やUターンに補助出したり、というところはうまくいっているようです。

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要するに、うまくいったところは、従来型の振興策を交付金だけに頼らない発想でやっているということで、地方創生などという新たな政策でやる必要があったのか疑問です。企業誘致のときに交付金でまとまったお金が国から出ればありがたいでしょうが、これも、地方に財源を移譲すれば解決です。

結局、政府が出来ることは、地方への権限、財源の移譲、あとはナショナル・ミニマムの保障だけ。失敗が明らかになり始めた地方創生政策は、日経の南関東・静岡版がやったようにまず全国的な実態調査をやって、現実がはっきりしたところですぐやめるべきです。