日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

中国の「鉄のカーテン」がヨーロッパに。米・EUとの結束のためにも、日本政府は一帯一路から撤退を!

今日の要点

・イタリアが一帯一路に参加することにより、アドリア海トリエステ港が中国の勢力圏内に入ります。中国は既に「16+1」という枠組みで、中東欧の旧共産圏国と一帯一路に関する関係を築いています。米ソ冷戦時代の「鉄のカーテン」と同様の事態であり、しかも「カーテン」はどんどん西に移動しています。

・日本政府は、我が国の自由と民主主義を守り、価値観を共有する米・EUと結束するため、一帯一路への協力を撤回するべきです。

バルト海のシュチェチンからアドリア海トリエステまで」:チャーチル演説の21世紀版

日経で中国総局長を務めた中沢克二氏が、「欧州に新冷戦の影、中国が狙う「鉄のカーテン」南端」と題する記事を書いています。

イタリアが一帯一路への協力を決めたことで、アドリア海トリエステ港が、中国の勢力圏に入ります。これを、米ソ冷戦時代の「鉄のカーテン」になぞらえたものです。トリエステは、米ソ冷戦の最前線の一つで、チャーチルが「鉄のカーテン」演説で言及した都市です。「バルト海のシュチェチンからアドリア海トリエステまで」というわけです。トリエステ港のターミナルや周辺鉄道網の整備で、中国国有企業が投資すると報じています。

www.nikkei.com

既にギリシャの首都アテネの外港であるピレウス港は、中国の国有企業が買収・運営しています。そのうえ、アドリア海の最深部にあるトリエステ港にも中国の国有企業が投資するとなれば、この地域への中国の影響力は決定的になります。同時に、中国の言う「一路」=海のシルクロードが西欧に至ることを意味します。この記事のこうした主張は、記事中の地図を見れば、よく分かります。

出所:日本経済新聞2019年3月27日記事

既に中国は、一帯一路戦略の一環として、中東欧の共産圏諸国と「16+1」と呼ばれる経済協力の枠組みを作っています。加盟国は、以下の地図の通りです。

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出所:European council on foreign relations

https://www.ecfr.eu/publications/summary/chinas_investment_in_influence_the_future_of_161_cooperation7204

去年7月、この「16+1」の7回目の首脳会議がブルガリアの首都ソフィアで開催されました。250社を超える中国企業や700人以上の実業家が、会合に合わせて実施される経済フォーラムに参加ということです。

この枠組みは、EU本部や一部の西欧諸国からは、EUを分断する企てと懸念されてきました。

www.newsweekjapan.jp

そのうえ、「16+1」各国以外にも、正式に一帯一路で中国と覚書をかわした国としてギリシャポルトガルがあり、今回、イタリアも加わったことになります。21世紀の「鉄のカーテン」は、もう東欧、西欧の境界よりもはるかに西に移っていて、最終的には大西洋にひかれることを狙っているのでしょう。

フォーリン・アフェアーズのような外交専門の雑誌には、中国がロシアとともに、民主主義国家を切り崩しているとして警戒する論説も出ています。

たとえば、昨年11月のティラー、シュルツマンの論文では、ロシアが「選挙への干渉と介入、政治腐敗の輸出、偽情報キャンペーン」で欧米の民主的制度を攻撃する一方、中国が「困難な状況にある国に援助や投資を注ぎ込むことで、弱体な民主国家が欧米から離れていく環境」が作り出されており、両者が相乗作用を持っている、としています。

特に懸念されるのは、中国共産党の統制が、民主主義国家にも及ぶことです。同論文によると、「中国は顔認識システムを輸出し、いかに効率的に電話盗聴やインターネット監視を行うかについて権威主義政府のスタッフを訓練することで、監視システムや警察活動の手法を外国に輸出している」と言います。中国共産党の狙う監視の対象は、権威主義的な国の国民ばかりではなく、民主主義国の国民も含むはずです。

フォーリン・アフェアーズ論文、日本語版ですいません(^_^;)が、以下です。)

www.foreignaffairsj.co.jp

こうした動きを踏まえ、フランスもドイツも、さすがに中国への姿勢を改め始めています。朝日は、マクロン大統領とメルケル首相が、厳しいことを言いつつ、経済面での中国との協力は進んでいるとしていますが、

digital.asahi.com

仏独がリードするEU全体の正式な立場こそ重視すべきです。

今回の習近平の訪欧時の首脳会談に先立ち、EUの指導部は、中国を「システミック・ライバル」とする公式の戦略文書を発表しました。この中でEUは、一帯一路での説明責任と透明性の向上を求め、「EU一体となって圧力をかけていくよう加盟国に呼びかけて」いますし、「さらに3月18日には全ての加盟国に対して、中国企業の公的調達プロジェクトへの入札を禁じるよう呼びかける提案を発表」しています。

ニューズウィーク2019年3月26日号)

www.newsweekjapan.jp

それ以前から、EUは、何とか一帯一路の浸透を食い止めようとしてきました。

たとえば、中国の投資によるハンガリーセルビア間の鉄道建設です。これにつき、「中国企業に初めから委ねるのは、公共事業の調達に透明性と開放性を求めるEUの規則に反する恐れがある」として、調査が入り、ハンガリー部が入札になって建設が遅れている、ということです。

digital.asahi.com

日本は、目先のお金のために自由と民主主義を捨ててはならない。一帯一路からは撤退を!

実は安倍政権は、中国の一帯一路が東欧各国に及んでいるという危険をきちんと認識し、手を打っていました。安倍総理は昨年1月、日本の首相として初めて、バルト三国エストニアラトビアリトアニア、東欧のブルガリアルーマニアセルビアを訪問しています。引用した産経はじめメディアは、対北朝鮮や対ロが目的と書いていましたが、

www.sankei.com

安倍総理のこれらの国への訪問は、実は、中国主導の「16+1」を牽制するのも目的だったと言われています。

http://www.iti.or.jp/report_67.pdf#search=%27%EF%BC%91%EF%BC%96%EF%BC%8B%EF%BC%91%27

この点では、安倍総理は立派な仕事をしていました。それだけに、習近平と安易に会談して、向こうが言ってもいない「競争より協調」などというお題目を並べたり、ましてや、一帯一路への事実上の協力を打ち出したのは、本当に残念でなりません。この点は、これまでも本ブログで厳しく批判してきました。

米中冷戦のなか、一帯一路への協力は早くやめるべき。目玉プロジェクトが早くも頓挫。対中外交の転換を。 - 日本の改革

外交での成果アピールによる世論対策、親中派の二階氏への配慮、経団連への配慮、色々あることでしょう。政治の中でも外交のような大きな案件が、理念ひとつでそう簡単に動かないのは理解しているつもりです。

それでも、イタリアが正式に一帯一路に協力してしまい、EUが警戒心を強めているいま、あらためて主張します。日本は、一帯一路から手を引くべきです。短期的な目先の利益ではなく、我が国が大切にしている自由と民主主義を守るため、同じ価値観を持つアメリカ、EUと結束するため、一帯一路戦略には協力せず、米中冷戦では、はっきりとアメリカの対中強硬策で協力するべきです。

と、一国民の私が行っても説得力がありませんので、チャーチルの「鉄のカーテン」演説から一節を引用しておきます。孫引きでしまりませんが。

「私はあえていうが、用心してもらいたい。われわれに残された時間は少ないかもしれぬ。もう手遅れだということになるまで事態を放任しておくようなやりかただけは、おたがいにしないでおこうではないか。」

出所) 細谷千博、丸山直起編『国際政治ハンドブック』(有信堂)、75ページ。
    松本重治編『世界の歴史 16巻』(中央公論)、137-138ページ。

http://www.isc.meiji.ac.jp/~takane/lecture/kokusai/data/ironcurt.htm