日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

投資回収企業数が1%未満の「ものづくり補助金」を担保に、借金まで可能に。この補助金は安倍案件か。リーマン・ショック由来の既得権は全て切るべき。

今日の要点

中小企業庁が、「ものづくり補助金」を担保に融資を受けられる制度をつくるそうです。この補助金は、自己負担分の投資回収が出来た企業が1%にも満たないという、とんでもないバラマキ補助金です。つなぎ融資のためと言いますが、補助金を担保対象にすると、ますます既得権化が進みます。

・ものづくり補助金はこれまでも、政府内で様々な批判を受けてきました。にもかかわらず総額1000億円が全く変わらずに残っています。総理所信表明演説を見ると、この補助金は安倍首相案件なのかもしれません。

・この補助金は、もともとリーマン・ショックの緊急経済対策だったのに、毎年、決まって1000億円程度が補正予算でつく既得権そのものです。中小企業も内部留保・現預金が史上最高水準で、補助金の必要は少なくなっています。本件に限らず、リーマン・ショックに由来する既得権は、まとめて切るべきです。

投資回収1%未満のバラマキ補助金1000億円を担保に、借金まで可能に。

中小企業庁が、国の補助金を裏付けに企業が借り入れをできる仕組みを新たにつくるそうです。対象は、中小企業の設備投資を支援する「ものづくり補助金」です。この補助金は、毎年補正予算で1000億円程度がついています。

今回の新制度は、この補助金の交付決定から支払いまでのつなぎ融資のためということで、スタートアップ企業を「中心に」補助の利用を広げるのが中小企業用のねらい、と日経が報じています。フィンテックを手掛けるトランザックスという企業が、中小企業向けに電子債権の作成を支援するそうで、フィンテックの普及も目的のようです。

www.nikkei.com

この制度新設に、私は反対です。スタートアップ支援やフィンテックのためなら、そのための補助金を新たに作るべきで、「ものづくり補助金」自体、廃止すべきです。スタートアップ企業「を中心に」補助の利用を広げると言いますが、多少はスタートアップに回っても、これまで受け取ってきた企業が受け取り続ける可能性は高いでしょう。補助金を担保に融資を受けられるというのでは、ますます既得権化が進むおそれがあります。

政府内で何度も問題になった「ものづくり補助金」。なぜ安倍総理は所信表明で言及してまで残しているのか。

今回の融資制度は、ものづくり補助金の延命のために中小企業庁が考えたものだと思います。というのも、この補助金は、今までにも色々な問題が指摘され続けてきたからです。もともと、リーマン・ショックの緊急経済対策の一つとして、現在の形になり、それ以降、民主党政権でも、自民党政権でも、「政府内で」問題視されてきました。

ものづくり補助金は、新製品開発のための製造機械・最新加工機等の購入や、システム構築費用などを支援し、中小企業の生産性向上を図るのが目的で、対象は中小企業・小規模事業者等です。 要は、中小企業が試作品を作るときに機械やシステムを買うための補助金を出す、というものです。

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2019/190226yosan08.pdf

予算は、2018年度の第二次補正で1100億円、2019年度で初めて当初予算にも計上されました(50億円)。2018年度第二次補正では、名前を「中小企業生産性革命推進事業」と変えていますが、下のポンチ絵の右上にある通り、従来の「ものづくり補助金」は残っています。右の中ほどと下に、別の名前の事業がありますが、補助上限額が一番大きいのは、相変わらず右側一番上の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」で、これが従来の「ものづくり補助金」です。基本的には試作品作りを支援するものです。恐らくは、この事業が、総額でも最大のものであり続けるでしょう。

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出所:経済産業省

この補助金は、最初、麻生政権のときのリーマン・ショックへの緊急経済対策として、2009年度補正予算で計上されました。当時は570億円でした。

そのすぐ後、民主党政権事業仕分けの対象にしました。景気対策なのかものづくり支援なのかが不明確、天下り団体に事業を委託すべきではない、570億円のうち32億円が事務費などで全国中小企業団体中央会に入っている等の指摘を受け、予算計上見送りとなりました。

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9283589/www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov26kekka/2-61.pdf

その後、安倍政権で復活、拡充となります。政権を取った直後の安倍総理は、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」として、2012年度補正予算案を組みます。そこで「ものづくり補助金」に1007億円がついた後、2018年度補正予算に至るまで、毎年の補正予算案で、1000億円程度が計上されています(各年度予算案については、財務省のウェブサイトで御確認下さい。年度ごとに名前の違いはありますが、中小企業対策のところに出てきます。経産省のサイトでは2015年度までしかないようです)。

予算 : 財務省

安倍政権でも、財務省が二度にわたって、この補助金の問題点を指摘しています。

一度目は、よく似た補助金との重複の指摘です。直接的には、重複が疑われる別の補助金「戦略的基盤技術高度化支援事業」約100億円について、ものづくり補助金との事業目的の重複や、事業の効果が上がっていないことについて、問題だと指摘するものでした。2013年7月の財務省による予算執行調査によるもので、この事業に関する調査の結果と指摘は以下の通りです。

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出所:財務省

https://www.mof.go.jp/budget/topics/budget_execution_audit/fy2013/sy2507/36.pdf

この指摘に対して、改善は見られないようで、戦略的基盤技術高度支援事業は、相変わらず毎年100億円程度が計上され続けており、2019年度予算案にも計上されています。財務省は、この事業も問題視していましたが、おそらく本丸は一桁金額の大きい「ものづくり補助金」の方だったのでしょう。事業の重複の指摘は、間接的ながら、ものづくり補助金の問題点を指摘したことにもなります。

財務省による二度目の指摘は、比較的最近のもので、2017年10月17日の財政制度等審議会でなされています。当日の配布資料を貼っておきます。

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出所:財務省財政制度等審議会

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291017/03.pdf

右下の部分を見れば分かる通り、平成24~26年度(2012~2014年度)に、ものづくり補助金を受け取った企業のうち、自己負担分を上回る収益を出した企業は、どの年度も1%に満たない、ということが分かります。なお、当時の補助率は3分の2ですから、投じられた補助金の半分の収益を上げられた企業が1%に満たない、とも言えます。

これを日経が記事にして、社説でも叩きました。ものづくり補助金は、非効率なバラマキ政策ではないか、と。社説では、「生産性革命」の名目で生産性向上につながらない補助政策が繰り返されそうだ、「ものづくり補助金」で企業は自己負担分さえ、ほとんど回収できていない、費用対効果を考えずに補助金を配るのは問題が大きいから、17年度補正予算案で安易に支援額を膨らませるべきではない、と厳しく批判しています。

ものづくり補助金、投資回収1%にも未達 財務省調査 :日本経済新聞

補助金のバラマキで生産性は上がらぬ :日本経済新聞

それでも、ものづくり補助金はなくなりませんでした。なくならないどころか、2017年度補正でしっかり1000億円を確保し、翌2018年度補正では、1100億円に増加しています。

もともと、事業化しないでも試作品だけ作ればよいという補助金ですし、全然経営合理性のない事業に補助金が支払われている可能性がある制度です。財務省の調査で、それが裏付けられました。それでも、総額について全く見直されないのはなぜでしょう?

今年の総理所信表明演説で、安倍総理は、ものづくり補助金に言及しています。

「新しいチャレンジをものづくり補助金で応援します。全国的に人手不足が深刻となる中で、IT補助金、持続化補助金により、生産性向上への取組も後押しします」

www.kantei.go.jp

何の投資効果もない試作品づくりの機械を補助金を使って買う。これが新しいチャレンジでしょうか。今年が選挙の年だということを割り引いて考えるとしても、安倍総理の強いこだわりで、非効率的な補助金が残っているのではないでしょうか。その意味で、この補助金は、「総理案件だから」忖度して切れないのではないでしょうか。この政権が経産省にべったりだということをあらためて示している、とも言えるでしょう。

「ものづくり補助金」はリーマン・ショック由来で、とっくに用済み。中小企業は内部留保も現預金も史上最高。リーマン由来の既得権はまとめて切るべき。

ものづくり補助金は、リーマン・ショック対策で出来た補助金です。当時は、どんなバラマキでも一定の必要性があった、と言える面はあります。

しかし、安倍政権で景気が良くなったというならば、2012年度補正予算の効果が上がって、中小企業の経営も良くなったと言うならば、ものづくり補助金は切るべきです。相変わらず中小企業の経営が厳しいと言うのなら、これまた景気対策として効果がないのだから切るべきです。

なお、中小企業の内部留保と現預金は増え続け、現在は史上最高レベルにのぼっています。先に紹介した2017年10月17日の財政制度等審議会の資料に出ています。

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出所:財務省

中小企業の設備投資を促すべき、ということなら、大企業同様、内部留保課税を行うべきで、補助金を出すべきではありません。やっていることが全く逆です。以前、本ブログでは、大企業を想定して、内部留保課税が必要と主張しましたが、中小企業についても、ものづくり補助金のような無駄な補助金は切って、規模によっては適用除外も作ったうえで、内部留保課税を導入すべきです。

政府・与党・野党・国民は、力を合わせて、経団連の抵抗を排して、内部留保課税を実現しましょう! - 日本の改革

ものづくり補助金だけではありません。リーマン・ショック時のパニック状態で、麻生元総理が始めた「リーマン由来の既得権」は、数多くあります。たとえば、数多くの基金事業です。民間経済に貢献せず、既得権者に税金が配られて目詰まりを起こしているだけのこうした事業をまとめて全部切って、浮いたお金を教育無償化や介護等の家計支援に回すべきです。