日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

「プルトニウムは将来の核武装のために必要だ!」⇒小泉純一郎「どこで実験すんですか、核実験」

今日の要点

・六ケ所村の再処理工場の審査が大詰めを迎えていますが、そこで抽出されるプルトニウムの国内使用にはメドが立っていません。プルトニウム削減は喫緊の課題です。

・「日本の核武装のためにプルトニウムは必要」という考え方もあります。これにつき、小泉純一郎氏は、核武装など「変なウソ」だ、核実験をする場所がないという一事だけとっても核武装は不可能だ、と言っています。私も、核武装論は、原発と核燃サイクル破たんをごまかすためのウソだと思います。

・日本は核燃料サイクルを断念し、原発はゼロにして、プルトニウムは核保有国のイギリスかフランス等で全量引き取ってもらうよう、外交交渉を開始すべきです。

六ケ所村の再処理工場、審査終盤へ。それでも先行き見通せず。

昨日、原子力規制委員会は、六ケ所村にある使用済み核燃料再処理工場の安全審査で、事実上の合格証に当たる「審査書案」の草案を公開しました。

委員からは航空機落下や重大事故の対策等、更に説明をしたり、追加の審査会合を求める指摘が相次ぎました。審査は大詰めですが、規制委の更田豊志委員長は記者会見で「(審査書案をとりまとめる時期の)見通しはない」と述べているということです。再処理工場の審査は申請からもう5年以上が過ぎています。

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日本のプルトニウム削減の道筋がつきません。

プルトニウムはウラン燃料を原発で燃やす際に生じ、使用済み燃料を再処理して出てきます。プルトニウムの製造は核兵器への転用を防ぐため禁止されていますが、非核保有国では日本のみが、プルトニウムの再利用を日米原子力協定で認められています。

しかし、もんじゅ廃炉が決定するし、原発は動かないし、ということで再利用は進みません。下の図のような、核燃料サイクルが全然回っておらず、プルトニウムは増えています。仮に六ケ所村の再処理工場が審査に合格して動き出しても、そこで出来たプルトニウムをちゃんと利用する見通しが立ちません。

 

日本経済新聞2019年3月19日記事より)

テロと核拡散の恐れがあるので、アメリカは日本のプルトニウムの削減を強く求めていました。

そこで、政府は昨年7月3日、「エネルギー基本計画」に、プルトニウムの「保有量の削減に取り組む」と盛り込みました。プルトニウムを燃料に使う「プルサーマル発電」を進めると言いますが、原発の再稼働は進んでいないため、実現は難しいと見られています。
その後、昨年7月17日に、日本の核燃料サイクル政策の根拠となっている日米原子力協定が自動延長となりました。エネルギー基本計画に、プルトニウム削減という文言を盛り込んだためでもあるでしょう。

実は、経済産業省は最初、「プルトニウム削減」という当たり前の表現を入れようとしていませんでした。この経緯について、日経が今年3月18日に詳しく報じています。

要は、当初の案にこの文言がないのをアメリカが心配して経産省に申し入れたのに無視されたので、外務省に相談したところ、河野外務大臣自身が経産省に強く要求して、ようやくプルトニウム保有量削減の文言が追加された、ということです。経産省アメリカから直接要求されても言うことを聞かず、アメリカの意を受けた外務大臣に言われてようやく「プルトニウム削減」と入れた、というのだから、呆れた話です。

以下、日経新聞2018年3月18日の記事より、引用します。

米国は将来の電源比率を示すなど原子力政策の要であった同計画の原案にプルトニウムの削減が盛り込まれていないことに懸念を持った。6月上旬、駐日米国大使館経由で経産省に対して削減を明記するように求めたものの、原案に追加する動きは見られなかった。大使館側は情報を収集し、「外相は核燃料サイクルに詳しい。エネルギー基本計画は経産省の管轄だが、外務省に持ち込んだ方が早い」との結論に至った。河野太郎外相は米国の分析の通り、外相就任前は自民党でも筆頭と言っていいほど日本の核燃料サイクル政策に批判的な論陣を張っていた。

閣議決定に先立つ6月21日昼、河野外相は外務省内で自民党議員らと面会した際にこう強調した。「外務省としてプルトニウムの問題は言うべきことを言う。日本のエネルギーの未来に問題が出てきかねない」。さらに経産省幹部にも力説した。「自動延長の場合は一方の通告で破棄できる。非常にフラジャイル(脆弱)になる。エネ基の表現をはっきり分かりやすくすべきだ」

そして7月3日に閣議決定された同計画には当初案にはなかったプルトニウム保有量削減の文言が加えられた。その理由について記者から問われると、資源エネルギー庁の田中将吾戦略企画室長はこう述べた。「外務省からの強い要望があった」。

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プルトニウム核武装のために必要、というのは「変なウソ」(小泉純一郎氏)

一体、アメリカの正当な心配を無視してまで、なぜ、プルトニウム保有を続けるのでしょう?そもそもなぜ、日本政府、特に経産省は、原発核燃料サイクルを頑としてやめないのでしょう?

これにつき、口を極めて批判しているのが、周知の通り、小泉純一郎元首相です。

小泉氏は、日本が原発核燃料サイクルを続ける理由につき、経団連企業が儲かるからやっているだけだ、原発が安全で低コストでクリーンと言うのは全部ウソで収益第一だ、と叩いています。そして、日本政府は早く止めるべきなのになぜやらないのか理解できん、と、繰り返し訴えています。

2018年3月7日、外国人特派員協会で、小泉純一郎氏が以上のような意見を言ったのに対し、中国のメディアから、質問がありました。

日本がこの政策を進めるのは、本当は核武装のためではないか、と。

これに対する小泉氏の答えは、以下の通りです。

「その裏には何があるのかっていうんですけど。私も理解に苦しんでんだよ。なんでこんなね、ウソを信じてんのか」

核武装なんかとんでもありませんよ。プルトニウムたまって、これだって大問題ですよ。

核武装論者もいるけれども、もしやろうとして、どこで実験すんですか、核実験。するところ一つもないでしょ!よくこういう変なウソを平気で言うね」

(下の動画の35分25秒くらいからです)

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この政治的リアリズムはさすがです。

仮に、日本が核武装しようと本気で考えたとしたら、核実験が欠かせません。核廃棄物の最終処分場さえ、どの自治体も手を挙げないのに、核実験を認める地方自治体なんて、見つかるはずがありません。防衛省が「平和安全のための完全にコントロールされた安全かつクリーンな核爆発の実験場」を手挙げ方式で募集したり、「政府主導で」どこかの自治体に押し付けようとしたり、というリアルな想像をしてみれば、いかに非現実的な発想か分かります。

核実験場を見つけるというたった一事さえ出来ない、ましてや、国際社会での今までの全ての言動を反故にして、経済制裁を含めた国際的圧力に耐えてNPT体制から脱退する、何よりも、そうした政策について国民の理解を得る、ということを考えれば、リアリズムのつもりで唱えている核武装論など、ただの非現実的な絵空事だと分かります。

つまり、日本の核武装論は、単なる間違い、というより、原発も核燃サイクルも完全に破たんしているのをごまかすための「変なウソ」です。

小泉氏の記者会見での発言は、日本の脅威である中国のメディアに対する説明としても、これで満点です。中国も北朝鮮も、日本の「潜在的保有論」など、本当は全く信じていません。本当にそんな恐れを持っていたら、たとえば北朝鮮は、日本をまともに相手にしているはずです。

日本が目指すべきは、中国と北朝鮮の核に、独自の核で対抗することではありません。当面はアメリカの「核の傘」を一応信用してそれを確実にする努力を続けつつも、敵の核ミサイルを無力化する防衛システムを独自に作ることです。これは当ブログで主張してきました。

北朝鮮の核ミサイルを無力化するには:独自のミサイル防衛完成、集団的自衛権拡張、「国民の、国民による、国民のための」国防の実現 - 日本の改革

プルトニウムの国内消費はもう無理。原発ゼロにして海外に引き取ってもらう努力を。

もう日本国内で原発含む核燃サイクルは完全に破たんしています。国内のプルトニウム利用など無理です。このうえは、既に保有プルトニウムの再処理を委託して保管してもらっているイギリスとフランスに、お金を払って全部利用してもらうしかありません。この案は、経産省幹部自身が言っているようで、昨年7月3日の日経の記事で紹介されていました。

日本が保有する約47トンのプルトニウムのうち約37トンは、使用済み燃料の再処理を委託する英国とフランスにある。米はこうした海外の在庫も問題視しているという。
日本政府内では、英仏に譲渡する案も浮上している。経産省幹部は「金を出して消費してもらうことも選択肢」と話す。
ただ交渉は始まっておらず、実現は見通せない。英国はプルサーマルを凍結しており、プルトニウムを消費できない。フランスでは40年以上の実績があるが、日本の要望を受け入れるかは不明だ。

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政府が交渉に本腰を入れないのは、建前上の原発と核燃サイクルをやめられないからです。やめられない理由は、経団連企業の利益のためだけで、核武装論はただの変なウソです。日本政府が本気で交渉を始めれば、核のゴミと違って、核保有国の英仏は、核不拡散防止の観点から理解を示すでしょう。経団連べったり、経産省べったりの安倍総理が辞めて、見識のある改革派政権が出来れば、簡単に動きます。

テロの危険を未然に防ぎ、核拡散がこれ以上起きないようにするため、政府は原発ゼロと核燃サイクル政策の全面停止を決定し、プルトニウムを全量、英仏に引き取ってもらう外交交渉を始めるべきです。