日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

国の医療IT事業を食い物にする既得権者、国内のITベンダー。グーグルの医療クラウドに駆逐されてしまえ。

今日の要点

・診療データを病院間で共有する全国的ネットワークが、多額の税金を使いながら登録者数が人口の1%にとどまる、と日経が報道。補助金の目的外使用もあるようです。

・調べたところ、関連する基金の国庫返納額がかなりの額にのぼる等、別のムダが起きている可能性もあります。補助金の支出先には、電子カルテ業界の寡占メーカーも含まれています。

・グーグルが日本の電子カルテ市場に参入し、格安のサービスを提供し始めています。然るべき規制のうえで、こうした外資の利用も選択肢に入れて、日本の遅れた医療ITの状態を改善するべきです。

ほとんど機能していない、診療データの全国的ネットワーク。ITベンダーや地方病院等の金城湯池か?

日経が、診療データを病院間で共有する全国約210の地域ネットワークの登録患者数は、国内人口のわずか1%であることを報じています。重複医療等によるムダをなくすための医療IT事業なのに、計530億円を超す公費が全く有効活用されていない、と批判しています。

www.nikkei.com

この点は、既に2017年8月の日経ビジネスが報じており、そこでも参加施設と患者利用率の低さを課題としていました(下のリンク)。今回は、2018年11月から19年2月にかけて、直近の参加施設数と登録患者数を聞き取った新たな取材による調査報道です。

tech.nikkeibp.co.jp

また、医療ITのための補助金が不適切な使途に使われていた例も数多く見つかっています。基本的に施設・設備整備といったハード事業を想定して導入されたはずが、支出先の事務局の経費や宣伝費、職員手当や旅費にあてられていたと見られる事例があったようです。

www.nikkei.com

地域医療再生基金での多額の返納は、ムダがあったせいでは。補助金支出先に、電子カルテ業界の寡占メーカー。

ここで問題になった医療IT事業は、国の四つの事業のことを指していますが、そのうちの一つ、地域医療再生基金の事業を取り上げてみます。

この基金は、麻生内閣の末期、選挙前の人気取り政策として導入された、と言われています。麻生内閣は、リーマンショック対策という名目で、景気対策として即効性がないのに、やたらに基金を作り、役人の財布を増やしました。地域医療基金は、本来は、「医師の確保」「救急医療」、病院間の「機能再編」などの課題を解決する再生プランを各都道府県が作成し、これを厚労省が認めれば、交付金が支給されるという仕組みです。

しかし、再生プランの提出期限が(もともと選挙対策だったから?)あまりに早く、ずさんな計画がまかり通ったと言われています。「医師を派遣するからと、高額な医療機器の購入台数まで派遣元の大学に決められた」(ある病院院長)という例まであると、2009年当時、ダイヤモンド・オンラインが報じています。

diamond.jp

地方医療再生基金の使い道の内訳等について、2014年に、日本医師会総合政策研究機構 がまとめています。それによると、医療連携という事業では、

「2009 年度分 497 億円、2010 年度分 289 億円、計 786 億円で ある。すべてとは言わないが、かなりの金額が IT ベンダー等に支出された 可能性がある」

とのことです(下記論文20p)。医師会もITベンダーに多額の税金を支出されるのを、苦々しく思っているような表現です。

http://www.jmari.med.or.jp/download/WP317.pdf#search=%27%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%9F%BA%E9%87%91%27

この基金について、政府の公表している基金シートで、執行状況を調べてみました。(単位は100万円です。)

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出所:厚生労働省

平成30年度地方公共団体等保有基金執行状況表|厚生労働省

平成28年度末の残高が124億6700万円、支出が58億9500万円、国庫返納額が13億5000万円、平成29年度残高が53億9800万円で、残高・支出に比べて、国庫返納額がかなりの規模になっています。普通、国庫返納というのは、ムダがあるとの指摘等を受けて行うもので、ここ数年、内閣官房の行革推進会議と財務省は、躍起になって無駄な基金の国庫返納を進めてきました。これもおそらくそうした返納の一つだろうと思います。ただ、自治体に造成された基金のせいか、行革推進会議が発表している基金の国庫返納状況には記載されていません。もう少し調べたいと思いますが、国庫返納が行われている以上、もとの基金の規模が大きすぎたと言えます。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/dai30/siryou3.pdf#search=%27%E5%9F%BA%E9%87%91%E3%81%AE%E5%9B%BD%E5%BA%AB%E8%BF%94%E7%B4%8D%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%27

もう一つ、今回問題となった医療IT補助金の一つとして、総務省クラウド型EHR高度化事業を見てみます。

総務省行政事業レビューシートで、この事業での補助金の支出先を見てみます。全部の支出先を示した図は、下のようになっています。

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平成30年度行政レビューシート(総務省) 医療・介護・健康データ利活用基盤高度化事業

http://www.soumu.go.jp/menu_yosan/jigyou30/kizon/kizon_h29_5-2.html

(上のキャプション、行政レビューシートではなくて、行政事業レビューシートです<(_ _)>)

額は比較的小さいながら、慶應義塾からの再委託先に、日本電気があります。電子カルテ業界でおなじみの寡占メーカーの一つです。富士通がシェア34%、日本電気がシェア11%で、両者で45%を占めています。上位4社で76%のシェアになります。

www.softs.co.jp

そんな寡占市場で提供される電子カルテですから、やはり使い勝手は評判が悪いようです。ベンチャーに期待する、以下のブログ等をご参照ください。

compass.healthcare-ops.org

グーグルは既に国内で格安の電子カルテ提供開始。医療ITの世界に、外資との競争を導入すべき。

以上のように、医療のIT化というのは、ムダの多い非効率的な形で進められており、寡占にあぐらをかいた国内ITベンダーが税金を食い物にしている実態があります(もちろん、病院をはじめ医療系団体にも税金が流れていますが、それはまた今度書きます)。

一方、最近になって、グーグルが日本のパートナー企業とともに、日本の電子カルテ市場に参入を始めました。クラウドを使った格安のサービスで、利用する医療機関の負担はMRIやCT1台あたり3万円と、読影1件3000円のみです。これが日本のメーカーだと、読影は1件4000円で似たようなものですが、専用回線の使用料が月額150万円もかかるそうです。

www.sentaku.co.jp

クラウドを利用して果たしてよいのか、何より、グーグルのようなIT大手には、プライバシー侵害のおそれがあるのに医療データ等渡してよいのか、分割の議論さえ出ている矢先ではないか、という懸念はもっともです。

しかし、私はあえて、医療ITの分野へのグーグルの参入は望ましいと言いたい。それは、国内のITベンダーのやってきたことも、国がやってきたことも、あまりにお粗末だからです。個人情報保護等のための然るべき厳格な規制を課したうえで、グーグルのクラウドのような形も容認する形での一般競争入札を行うべきです。

グーグルのプラットフォーマーとしての独占は問題だとしても、日本の医療ITの分野ではまだまだ全くの新参で、富士通日本電気等が高くて劣悪なサービスを提供し、国は地方の病院等がでたらめな使い方をしても全くのノーチェック。

ぬるま湯につかったこの業界を変えるには、世界的IT大手の参入で既得権者が駆逐される恐怖が必要です。患者により良い医療を提供し、国民の負担を減らすために、国内の既得権打破のために、使いようによっては恐ろしい巨大企業の力も利用すべきです。