日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

311から8年。福島県の経済成長率は2012年からずっと右肩下がり。国主導、住民軽視をやめるべき。

今日の主張

福島県の経済成長率は、震災翌年から下がり続け、直近は2年連続でマイナスです。国主導の巨大公共事業は、一時的バブルをもたらしただけでした。

福島県で昔から続く談合体質が、復興事業を歪めており、成長の芽を摘んでいます。また、除染事業も、大手ゼネコンと、ゼネコンと癒着した業者が利益を独占しています。談合体質との決別等の改革を断行し、復興事業は被災地主導で進め、地元企業に広くメリットが生じる形を作るべきです。

・一方、被災自治体は人口流出に直面し、避難先での支援を打ち切ることで住民の帰還を促していますが、これは間違いです。住民の「足による投票」の結果を受け入れ、避難民への支援を続けても選ばれる自治体になれるよう、改革を進めるべきです。

国主導の復興事業は、福島には一時的バブルをもたらしただけ。

311から8年が経ちました。政府は3日前の3月8日、東日本大震災からの復興の新たな基本方針を閣議決定しました。2021年までは、国が被災地を手厚く支援するための10年間の復興期間になっています。再来年、それが終わった後の方針です。住宅再建などハード事業は20年度中にメドがつく見通しなので、なりわいの再建や心身のケアなどソフト面の支援に重点を移すということです。復興庁廃止後の後継組織の検討にも着手します。

www.nikkei.com

被災地では、確かに立派なインフラは出来つつああるものの、人口減少が全国平均を上回るスピードで進んでいます。経済もふるいません。

福島県では経済成長率は低下を続けています。

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2012年以降、福島県の実質経済成長率は急降下。最近はマイナス成長。

出所:福島県(2018年12月)「平成28年福島県民経済計算の概要」

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/303143.pdf

上のグラフで、ピンクの四角が、福島県の実質経済成長率です。

震災前、福島県の実質経済成長率は、マイナス5%くらいになったリーマンショックの影響を除けば、ゼロに近いプラスでした。2011年の大震災でマイナス6%というリーマン以上の落ち込みを見せた後、国の大規模な復興事業で翌2012年にはプラス7%に。国の復興事業は、ここでは役に立ったとは言えます。

しかし、その後が続きません。翌年から実質成長率は下がり、翌々年からは急降下。データのある直近の2016年と前年の2015年は、2年連続のマイナスになっています。結局、国の復興事業は、福島には一時的なバブルをもたらしたに過ぎないことが分かります。

今日の日経によると、岩手県宮城県も、2016年度の成長率はマイナスでした。東北経済産業局によると、被災企業で震災前の水準まで売り上げが戻ったのは46%だと言います。

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確かに、一時期は国全体の成長率をはるかに上回っていたのは確かですし、あれほどの大震災後に、ムダと知りつつ大規模公共事業で下支えすることも必要だったでしょう。それでも、これまでの復興事業には反省すべき点が多々ありますし、2021年度以降の新たな復興プランでは、国主導から地域主導・住民重視に転換を図る必要があります。

震災前から続く談合体質の決別と、被災地主導の復興が必要。

そもそも、震災前から、福島県等の経済は不振でした。特に福島では、2006年に大規模な談合・汚職事件が発覚するなど、公共事業での談合体質が問題になっていました。

www.asahi.com

そして、震災後の復興事業でも、何度も談合事件が起きています。大手ゼネコンは復興事業で談合体質に戻ってしまいました。これがリニア談合事件にもつながった、とも言われています。この点は、以前のブログでも厳しく批判しました。

大災害から復興の時こそ、大改革を!:復興庁の廃止と新復興庁創設に向けて - 日本の改革

なお、ごく最近では、中間貯蔵施設での談合の疑いが報じられています(『選択』2018年5月号)。

www.sentaku.co.jp

まずは、こうした談合体質から決別しなければいけません。復興による公共事業がひと段落しつつあるので、今後の公共事業につき、官製談合を含めて再発防止がなされるよう、法の執行体制を整えるべきです。かつて談合事件を起こした人物等がまだ実務についているようでもあり、政治的な戦いも必要でしょう。

また、公共事業について、国主導から地域主導に転換すべきです。財源は国でも、実施方法等は自治体が決められる仕組みにすべきです。

除染事業はその意義が疑われているのは確かで、そもそも必要かどうかの検証は今後も厳しく行うべきです。ただ、地域密着型の事業ではあるので、地元企業の下支えには一定の効果もあるでしょう。

ところが、この事業についても、周知の通り、大手ゼネコンが受注しており、ゼネコンと結託した一部業者のみが利益を独占してきたのが問題になっていました。この点は昨年、除染事業での不法投棄も含め、FNNが報道していました。大手の清水建設が受注した除染事業につき、清水と癒着した下請けが、2016年に105億円を売り上げ、利益は56 億 円 、役員が43 億円もの役員報酬を得ていました。

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2018年10月22日 FNN PRIMEより

(上の図の出所は以下のサイトです)
www.fnn.jp

除染事業は、大手ゼネコンでなければ絶対にできない事業ではないはずです。もともと、事業を発注する区画があまりに広大すぎたから大手が受注したようですが、除染区域を細分化して発注すれば、より多くの地元企業に恩恵がまわったでしょう。この点は、青木美希(2018)『 地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」 』(講談社現代新書) で指摘されています。同書は、除染作業での不法投棄に加え、大手の下請け・孫請け搾取と、暴力団系の企業等が除染作業員の手当を搾取している構図を伝えています。 

 被災地では今後、先の談合体質との決別を含め、公共事業全体のこうした前近代性について、改革が必要です。そうでなければ、一部の事業者や反社会勢力だけが利益を吸い上げて、経済全体は急速に縮小する動きを止められません。

被災自治体は、避難住民を無理やり呼び戻すような政策をやめ、住民の「足による投票」を受け入れよ。

被災地の大きな問題として、急速な人口減少があります。先に紹介した今日の日経の記事によると、震災前の10年と15年を比べた減少率は福島で5.7%、岩手は3.8%で、全国平均の0.8%を大きく上回っています。土地の区画整理に時間を要するうち多くの住民が地元を離れたということです。

復興の主役、官から民へ インフラ・住宅は整備進む :日本経済新聞

今日の日経の別の記事によれば、今年2月時点で全国で5万1778人が避難生活を続けています。福島県では、いまだに約3万3千人が県外への避難を続けています。

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2019年3月11日 日経新聞

(上のグラフの出所は以下の記事です)
www.nikkei.com

なぜ、住民の帰還が進まないのか。福島では原発事故の影響が今でも残り、今後長期間続くのだから、当たり前です。また、そもそも、復興期間の人口見通しが甘い、あるいは、そもそもなかった、という指摘がされています。東北大学増田聡教授は、昨年10月15日の日経に、以下のように書いています。

東日本大震災からの復興計画の大半は上記の人口見通し(土地需要・域内生産なども含めれば計画フレーム)を欠いたまま策定され、各地で宅地造成や公営住宅・施設整備が進んだ。個別事業は一定の需要想定下で計画されたが、過疎化や人口流出・世帯分離の地域的展望は存在しない」

www.nikkei.com

完全に公共事業が自己目的化して、大手ゼネコンありきで計画が作られ、進められていたことがうかがわれます。インフラが出来た後に人口がどうなるか、住民が本当に戻ってきたいと思うような街づくりになるか、検討が全く不十分だったのでしょう。だからこそ、たとえば陸前高田市の土地のかさ上げ事業では3分の2が未だに空き地です。

そんな中、福島県では、自治体の首長と政府ばかりが躍起になって、住民を帰還させようとしています。

2017年2月の浪江町住民懇談会では、原発を推進する経産省出身の役人と、浪江町役場の馬場町長が、避難指示解除による賠償・支援の打ち切りの説明を住民に行いました。浪江町馬場町長は、避難指示解除について、こう言ったそうです。

「『 町残し』ということなんです。いまの状況でいたら、町はなくなってしまいます。草 ボウ ボウ、荒れ 放題で見るかげもない。私は町を残すためにはある程度、草を刈ったり、自然災害で壊れたところは直し て、『 戻れる人は戻って良いよ』という環境はつくっていきたい。それから町が復興していく。 町 が 復興 し て いく。 企業 誘致 し たり って こと です から」 

(青木美希(2018)『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』 (講談社現代新書) (Kindle の位置No.1152-1157). 講談社. Kindle 版.)

「町残し」などという表現自体が、住民ではなく、地方公共団体の存続が最優先だ、という姿勢をはっきり示しています。住民の皆さんは住み慣れた故郷に戻りたいと思っても、避難先で生活の基盤が出来たり、原発事故処理がまだまだ道半ばだったり、帰還が簡単ではない事情があります。

浪江町の町長は、住民に帰りにくい事情があるのは百も承知で、「戻れる人は戻って良いよ」と言いつつ、戻ったら公営住宅があるけれど、避難してるときの住宅支援は打ち切る、というやり方を国といっしょにやっています。これでは、住民に対して、まともな選択肢を示しているとは言えません。

もともと、被災地であれそれ以外であれ、地方自治体というのは、より良い自治を行って、住民の獲得競争をしています。避難先の自治体にいたら住宅支援がない、しかし被災自治体にいたら住宅支援があるというのは、まともな競争ではありません。住民の「足による投票」の権利は、被災自治体の住民についても、保障すべきです。被災地は放射線の影響が今後も長期間残るうえ、事故を起こした原発デブリの取り出し方も未だに分からないという状態なのだから、なおさらです。

青木美希(2018) (Kindle の位置No.1201-1203)は、子ども・被災者支援法の条文を挙げています。「被災者一人一人が居住、移動、帰還の選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」この趣旨を徹底するべきです。

このためには、避難指示解除後も、出来る限り支援は続けるべきです。

被災地の首長や地方議会議員は、住民になるべく帰還してもらいたいという立場です。公的にそう考えているかもしれませんが、住民がたくさん帰ってくれることは、彼等の生活の安定にもつながるものです。被災地の特別公務員達と被災地住民の利害は必ずしも一致しません。住民の意思をより尊重し、被災地住民の「足による投票」の権利を確保するようにすべきです。