日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

トランプ「日本は、駐留米軍の費用を全部払え。あと、米軍防衛によるプレミアムも払え」:日本はどう答えるべきか?

今日の要点

・トランプ政権が同盟国に対し、駐留米軍経費の全額と50%上乗せ分を支払えという要求を考えています。上乗せ分は、アメリカが同盟国を守っている対価だということです。

・日本は、この要求について、「アメリカが日本を守っている恩恵」がいくらになるのか、日米共同で試算し、議論も含めて、全て国民に公開すべきです。

トランプ政権の「費用プラス50」提案。トランプ就任時からの本気の検討。既に韓国に要求。

産経によると、トランプ政権が同盟国に対して、駐留米軍の経費の全額負担に加え、経費総額の5割分も上乗せして支払わせる検討をしていると伝えました。今年末に2021年度以降の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の交渉がありますが、米国から大幅な増額を求められる可能性が出てきました。

「費用プラス50」と名付けられた同構想では、50%の上乗せ分は米軍駐留で恩恵を受けている対価と位置づけられ、国によっては現行の5~6倍の経費負担を迫られる可能性があるということです。

www.sankei.com

以下で、出所のブルームバーグの記事の内容を、抜粋して多少詳しめに紹介します。 

トランプ大統領のスタッフは、この動きを、NATOが防衛費を増やすためのものと見ています。関係者は、これを同盟国にもっと支払わせるためのいくつかの手段の一つだと言っているのでトーンダウンする可能性はあります。

それでも、この考えは、国防省国務省にショックを与えていて、アジア・欧州の同盟国がただでさえ同盟の深さについて疑問に思っているのに、侮辱ととられるのではないか、と恐れているということです。

このプランは、既に韓国に提案されたということです。 

CSISのVictor Cha氏は、アメリカ政府がまず韓国にこのプランを示したことが、他の同盟国へのよく考えられたメッセージになっていると言います(韓国に対しては失敗でしたが)。北朝鮮との冷戦の最前線にある同盟国の韓国にこのメッセージを送るのは、アメリカが本気で駐留米軍へのホスト国の支援を考え直すことを示している、ということです。

もう一つの懸念は、これがいくつかの同盟国での米軍不要論を煽り立てないか、ということだと言います。ブルームバーグは、ドイツや日本の国内で長く米軍の存在に抵抗している層が、今回のプランを「最後通牒」とみなして活発化するおそれがあると指摘しています。

トランプ氏は大統領になってからずっと、同盟国が米軍基地の費用にプレミアムをプラスして支払うべき、と言っていたようです。米国のEU大使Gordon Sondland氏は、他国がちゃんと自分で投資をするためのものだ、と言っています。この人も、同盟国がただ乗りしていると考えているようです。

匿名の政府高官達(現役・退役両方)によると、この考えは、公に知られているよりもはるかに先まで進められているということです。単にカネを出させるだけでなく、アメリカがこのやり方で自国の要求を押し通す手段にしようとしていると言います。

その証拠に、国防省は既に二通りの計算をするよう指示を受けたと言います。一つは、ドイツなどにどれだけの金額を要求すべきかで、もう一つは、相手国がアメリカの言うことを聞いたらどれだけ値下げするか、ということだそうです。

アメリカの下院外交委員会のEliot Engel 委員長(民主党)は、EUNATOの担当者達が、アメリカは本当にまだ同盟国でいたいのか、という態度で混乱している、としています。

ドイツは米軍基地費用の28%、1000億円くらいを支払っていますが、この「費用プラス50」の下では、その額は急増します。今のところ、日本とドイツ等に提案はされていないようです。

ブルームバーグは、この考え方が、スティーブ・バノンの「アメリカが欲しているのは同盟国であって被保護国ではない」という主張と共通点がある、としています。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-03-08/trump-said-to-seek-huge-premium-from-allies-hosting-u-s-troops

スターズ&ストライプは、このプランが、特にドイツで強い反発を受けるだろうとしています。北朝鮮と対峙している韓国や、中国と対峙している日本は、米軍が自国の利益になると思っているけれど、ドイツは、駐留米軍がドイツの防衛よりもアメリカの国益にこそ役立っている、と考えていると言います。

たとえば、ラムシュタイン空軍基地はドイツ最大の基地ですが、イラクリビアでの作戦で使われましたが、ドイツはどちらにも反対はしないものの参加しませんでした。あと、ラントシュトゥール医療センターは海外で最大の米軍病院だそうですが、アフガニスタンでの傷病兵の手当を行っているということです。

結局、ドイツ政府はこの要求を飲まないだろうとしています。

ドイツ同様に、スペインやイタリアの海兵隊はアフリカでの居留地のために使われているので、ヨーロッパの防衛よりもアメリカの国益に役立っている、とのことです。

www.stripes.com

ということで、今回のプラン、アメリカは恐らく本気です。現時点では、ドイツを特に対象にしているように見えます。また、目的は軍事だけに限らず、むしろ駐留米軍経費をネタに、他の要求もからめてくる可能性があります。

ブルームバーグの記事にあった、韓国との交渉ですが、韓国は米軍駐留費の8%増を飲んでいます。一方、これまで5年だった駐留経費の合意期間を今回は1年に短縮しており、米国が一段と増額圧力を強めることを警戒しているようです。このとき既に、「費用プラス50」の提案がされていたことになるので、韓国は特にこの点を心配したのでしょう。

www.nikkei.com

アメリカに「費用プラス50」の要求をされたら、日本はどうすべきか?「日米同盟の恩恵」を日米共同・公開で試算するべき。

さて、日本の米軍基地の費用はどうなっているでしょうか?

日経によると、防衛省は2015年度の在日米軍駐留経費について、日本側の負担割合は86.4%と試算しています。総額は約2210億円で、そのうち日本が約1910億円を支出しています。

米軍基地で働く日本人従業員の労務費やなど、地位協定上は米側が負担すべき項目が大半です。これに周辺対策や施設の賃料なども含めた「在日米軍駐留関連経費」の日本側負担は約3736億円で、割合は92.6%です。

www.nikkei.com

既に9割前後の負担をしているので、安倍総理も経費増は断り、現状で特段の問題はないように見えました。

www.nikkei.com

しかし、今回のブルームバーグの報道で、アメリカが駐留米軍の経費負担を同盟国にさせることについて、本気度が明らかになりました。まず最も先鋭な軍事対立に直面する韓国にまでこれを要求して、順次、日本やドイツに要求してくるでしょう。

日本はどうするべきでしょう?

まず、経費負担については既に9割程度負担しているのですから、それを10割にしろ、という要求は蹴るべきです。9割と10割とでは本質的な違いがあって、まるっきりタダになると、経費の膨張に歯止めがかからないおそれがあるからです。現状の米側の「自己負担分」も少なすぎますが、それでも負担を残すことで、米軍に経費削減のインセンティブを残しておくべきです。

この構想、トランプ氏の本命はどうもドイツのように見えます。ドイツは負担割合が3割程度、ただ、駐留米軍の価値について、米独の両政府の認識に大きな隔たりがあるのでしょう。アメリカ国防総省が運営する新聞であるスターズ&ストライプス紙さえ、ドイツの駐留米軍は主にアメリカの国益のためにあると認めているようですし、ドイツ政府が要求を飲むとは思えません。日本だけがすぐにアメリカの要求に応じる必要はないでしょう。

一方、日本に対しては、このプランを、貿易黒字解消等の経済関係の交渉で、梃子として使ってくる可能性はあります。トランプ氏は国内のロシアゲートで追い詰められ、北朝鮮との直接交渉で成果を上げられず、中国との交渉では、早く妥結したいのに、超党派の対中強硬派の突き上げを受けています。再選に向けて外交上の成果が欲しいでしょうから、言うことを何でも聞きそうな日本を相手に、貿易黒字解消を強く迫るでしょうし、その際には、言うことを聞かなければ、費用プラス50を強く要求するぞ、と言う可能性もあるでしょう。経費の10割負担は拒否するとしても、一定の譲歩はすべきです。

私は、実際の経費の負担割合の部分よりも、むしろ「プラス50」の中身を、日米で真面目に議論しましょう、と提案すべきだと思います。この「プレミアム」は、米軍が同盟国を守る恩恵だ、ということなのですから、日米同盟が日本にもたらしているメリットが金額的にはどれくらいに評価できるのか、日米両国民に示す良い機会だと思います。

いわゆる「核の傘」がどう機能して、その社会的価値はいかほどかも、合わせて議論したら良いと思いますし、その議論を国民に公開すべきです。このブログでは、核抑止に関する拡大抑止の現状を国民に公開せよ、と主張してきましたが、そのための機会としても良いと思います。

www.kaikakujapan.com

トランプ政権になってから、日米同盟が当たり前でなくなった、という言い方がされるようになりました。

www.nikkei.com

しかし、よく考えてみれば、トランプ政権になる前から、何の努力も考えもなしに当たり前に維持できるものではありませんでした。日米同盟は大事だし必要ではあるけれども、何の考えもなしに「当たり前」だと見なすだけでは、同盟の維持さえ出来ないでしょう。安全保障について、コストとベネフィットも含めて、なぜ、どの程度必要なのか、国際状況や国内の社会の変化に合わせて、常に見直していくべきです。政府は、防衛に関する議論は国民の理解を得られない部分が多い、だからなるべく国民には隠して、自分達だけで決めてしまおう、という傾向が強すぎます。「日米同盟の恩恵」とは何なのか、国民的議論をおこして、「国民の、国民による、国民のための国防」を実現するために、今回の米政府のプランを一つの契機にしていくべきです。