日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

消費増税による消費低迷は一時的な「反動減」ではない。消費低下はずっと続く。消費税増税は財源調達の最後の手段に。

今日の要点

・消費税増税は、なぜ経済に大きなダメージを与えるのか。駆け込み需要の反動減のせいではなくて、消費税分の値上げで実質的に所得が低下する(所得効果がある)からで、このダメージは長く続きます。

・政府の財源調達は、消費税増税以外のあらゆる手段を尽くした上で、消費増税を検討すべきです。

消費税増税の効果:反動減ではなく、所得の実質的低下が重要で影響は長く続く

内閣府が昨日発表した1月の景気動向指数の速報値で、景気の現状を示す一致指数が2.7ポイント低下しました。これで3カ月連続の低下で、2013年6月以来の低水準です。中国経済の減速が影響で、政府も景気認識を改める可能性があります。

要は、景気が本当に悪くなってきた可能性があります。

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今のところ、政府は景気判断を変えないようですが、

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気の早いもので、内閣府の発表の前日に、消費増税延期か、という記事が出ていました。まあ夕刊フジですが。

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消費税は、税率引き上げのたびに大きな政治的問題となります。そして、事実、引き上げたら、経済に大きなダメージを与えます。政府は、引き上げのたびに、消費増税の影響を緩和する対策を講じています。政府はそれを、「駆け込み需要後の一次的な反動減」への対策、と言っています。つまり政府は、「諸費増税をしても、その効果は一時的だから安心してね、一時的な現象への対策は政府もするからさ」と言っています。

しかし、消費増税後の消費低下が一時的な現象だという認識による説明は、はっきり言って、大嘘です。大嘘にもとづく対策の効果も一時的で限られたものです。

そもそも、なぜ、どんな形で、消費税増税は、深刻な影響を与えるのでしょう?ここでは、一橋大学の宇南山卓准教授が、昨年9月26日の日経新聞で示した分析を紹介します。

家計は、できる限り消費を一定に保とうとします。一方、将来の手取り所得が減ると思ったら、消費を減らします。また、物価が上がると思ったら、物価が低いうちに消費を増やそうとします。(以上のように家計が行動すると仮定します)

このとき、消費税率引き上げが消費に3つの影響を与えます。

第一は、増税で手取り所得が減ることによる「所得効果」です。消費税率引き上げは同率の物価上昇を引き起こすので、手取り所得も、実質的に下がることになります。このため、買えるものが減って、実質消費も減ります。これが所得効果です。

第二は、物価の低い時期の消費を増やそうとする効果で、「異時点間の代替効果」と呼ばれます。増税前はたくさん消費して、「その代わりに」増税後は消費を減らすので、時間をまたいだ「代替」効果ということで、「異時点間の代替効果」と言います。

第三は、いわゆる「駆け込み需要・反動減」です。宇南山氏は、「時点間の裁定効果」と呼んでいます。価格が低いうちに買いだめをするという行動をとらえたものです。
「異時点間の代替効果」と似ていますが、増税の前後を通じて、買いだめをするので買い物をする量自体は変わりません。「異時点間の代替効果」は増税後もずっと消費を低下させますが、「駆け込み需要・反動減」=「時点間の裁定効果」は買いだめしたものを全部使ったら、その影響はなくなるので、一時的なものです。グラフで言えば、下図のようになります。

出所:宇南山卓(2018)「消費増税まで1年(下) 消費の反動減対策は不要」(日本経済新聞2018年9月26日)

消費増税まで1年(下) 消費の反動減対策は不要 :日本経済新聞

グラフでは、濃い矢印の「所得効果」が一番大きく、他の2つの効果の上がったり下がったりを打ち消して、消費増税後の消費水準を押し下げたままにしています。実際の消費ではどうなっていたのか、宇南山氏らが実証分析を行った結果、実際に、「所得効果こそが消費税率引き上げがもたらす最重要の効果」になっていたということです。

このグラフ、以前紹介した、消費水準指数のグラフと、形も似ています。上のグラフも、所得効果のせいで増税後の消費水準はずっと低下しています。上のグラフの右端の消費低下後の状態をずーっと右方向に引っ張ったのが、下の消費水準指数のグラフ、と言えるでしょう。2014年の増税後、消費はずっと低迷していますが、これは、「所得効果」による長期的なものだ、と説明できることになります。

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この分析結果から、宇南山氏は、政府の消費税増税対策である住宅・自動車減税や消費税還元セールの解禁は「駆け込み需要・反動減」=「時点間の裁定効果」緩和目的だ、として、暗に効果を疑問視しています。

政府が認めたくない事実を、宇南山氏はズバリと指摘しています。

「税率引き上げによる実質所得の低下は避けられない以上、消費低下も避けられない」

ただ、宇南山氏自身は、こうした所得低下の対策として、出来るだけ早めに、必ず増税すると約束するのが良い、としています。そして、昨年9月のことですが、こう言っています。

「足元では消費は比較的安定しており、現状であれば所得効果は緩やかに消化できる。政府にできる最善の消費安定化策は、なるべく早い時点で税率引き上げにコミット(約束)してその事実を国民に着実に浸透させることだろう」

しかし、増税のアナウンスやコミットメントが早かろうが遅かろうが、所得効果の影響は大きいはずです。所得効果が「緩やかに消化できる」根拠が、宇南山氏の記事の前半ほどにはきちんと示されていません。

宇南山氏は、2014年の税率引き上げは、延期の期待が高まったところで「首相が記者会見で引き上げを宣言するというドラマチックな演出があったため」に、所得効果が大きく働いてしまった、としていますが、この説明はどうにも理解に苦しみます。2012年の時点で増税は正式に決まっていて、「延期の期待」なんて、メディアや政治家の憶測にすぎなかったのですから。消費増税賛成一本槍の日経新聞の編集部が、宇南山氏の貴重な学術的研究の紹介の仕方を誤っていないか、心配したくなります。

また、宇南山氏が日経にこの解説を書いたのは昨年秋で、「足元では消費は比較的安定しており、現状であれば所得効果は緩やかに消化できる」としています。しかし、冒頭に紹介したように、中国経済の減速等で、景気が悪くなってきた可能性が高い現状では、宇南山氏も別の御判断をされる可能性もあるでしょう。

消費増税は、他のあらゆる財源調達手段が尽きた場合に行うべき。

いずれにせよ、政府は消費税増税の悪影響を甘く見ています。あるいは国民に正直に言おうとしていません。何が「駆け込み需要・反動減」ですか。何が増税対策ですか。増税による実質的な手取り減による長期的な悪影響を直視して、それでも「消費税による」税収がどうしても必要だ、それ以外のあらゆる財源調達手段ではダメだ、と、説得力をもって国民に説明できない以上、消費増税はするべきではありません。