日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ポスト安倍の経済政策は?緊縮・反緊縮ではなく、欧米の新たな社会主義でもなく、旧民主でもなく、維新でもなく。

今日の要点

・金融政策、財政政策での反緊縮を主張する「薔薇マーク・キャンペーン」が批判されています。金融緩和の継続は必要ですが、財政政策については、そもそも、緊縮か反緊縮かだけで良し悪しを判断すべきではありません。

・最近、欧米の新たな「社会主義」が関心を集めています。金融緩和、高等教育無償化、富裕層への課税強化等は賛成できますが、鉄道国有化等は賛成できません。

枝野幸男氏は金融緩和賛成のようですが、消費増税について信頼できません。玉木雄一郎氏は金融緩和批判、消費増税賛成で、論外です。

・維新は、金融政策について党内不一致で発信できていません。教育無償化等について、実は欧米の「社会主義」と共通点もあります。目指すのは、いわゆる「新自由主義」でも、「小さな政府」でもなく、「小さな行政機構」です。

・安倍政権後の経済政策では、①金融緩和継続、②消費増税凍結、③企業団体への歳出削減、④高額所得者への所得課税強化と、家計への歳出増、⑤法人税減税と内部留保課税、⑥規制改革と地方分権、⑦原発ゼロによる自然エネルギーへの転換、⑧公務員の特権廃止と働き方改革、を行うべきです。

財政で緊縮か反緊縮か、という誤った論点:「薔薇マーク・キャンペーン」を例に

安倍政権後に、改革政権を作ったとして、その経済政策はどのように行われるべきか?以前、本ブログでは、財政について書きましたが、

改革派の財政政策①:増税より歳出削減 - 日本の改革

改革派の財政政策①-2:増税より歳出削減(Part2)⇒増税か歳出削減か、国民が選択できるようにすべき。 - 日本の改革

今日は最近のネットでの議論をきっかけに、金融、財政その他の論点についても考えてみようと思います。

経済政策の議論で、「薔薇マークキャンペーン」というのがあって、ネットで叩かれているようです。

このキャンペーンは、立命館大学経済学部の松尾匡教授が、2019年統一地方選参院選で「人々の生活のために積極的な財政支出」を掲げる予定候補者に「薔薇マーク」を認定するというものです。

bunshun.jp

要は、金融政策での緊縮(国債買いオペをやめて金利引き上げ)や、財政政策での緊縮に反対して、「ばらまく=薔薇マーク」?で、金融も財政も積極的に緩和すべき、という考え方でやっているようです。

上にリンクを貼った松尾氏の説明によると、1990年代以降、イギリス労働党アメリカ民主党も、緊縮政策=「新自由主義」になっていたが、最近は、欧米諸国で公然と「社会主義」が主張されるようになり、反緊縮政策が主張されている。これは正しい政策だから、この反緊縮政策を主張している政治家を応援しよう、ということのようです。

この主張によれば、金融緩和と、積極財政を主張している人を応援すべきことになります。ところが、このキャンペーンでは、金融緩和に反対の人まで応援するとして認定してしまっているようです。

これがネットで、リフレ派等によって叩かれています。野党の政治家や候補者には、金融緩和を主張する人がほとんどおらず、かと言って、与党の政治家は認定したくないようです。また、松尾氏も含め、運動に関わっている人が左翼的すぎるというのも叩かれているようです。

twitter.com

確かに、金融と財政の反緊縮を主張しているのに、金融の反緊縮が落ちてしまい、しかもその理由が、野党には金融緩和論者がほとんどいないから、ということなら、党派的すぎるし、結論ありきに見えてしまいます。金融緩和も、まだまだデフレ脱却が出来ていない以上、当面は続ける必要があるので、結論自体も間違っていることになります。

それ以前に、財政政策について、緊縮か反緊縮か、という判断基準でやっているのが、単純すぎます。財政については、効率性や公平の両面から、減らすべき支出も、増やすべき支出もあります。たとえば、効果が薄いのに既得権化して続けられている企業・団体への補助金は切るべきだし、逆に、教育への支出は、社会全体での投資収益率が大変高いので、もっと増やすべきです。

薔薇マーク・キャンペーンの一件に限らず、財政を緊縮か、反緊縮か、というだけの基準で論じること自体が間違っています。

欧米の新しい「社会主義

最近は、欧米の新しい「社会主義」の政策をお手本とすべきだ、という意見が日本で増えてきました。さっきの薔薇マーク・キャンペーンもそうですし、政治家では、枝野幸男氏がアメリカ民主党のサンダース議員に入れ込んでいるようです。そこで、イギリス労働党のコービン党首、アメリカ民主党のサンダース議員、サンダース派のオカシオ・コルテス議員の主な主張につき、良し悪しを見てみます。

イギリス労働党コービン党首:金融緩和に賛成、富裕層増税による財政再建、国有化と公営化

(以下、少し古いですが、2015年のBBCの日本語訳サイトを参照しています。リンクは下にあります)

イギリス労働党のコービン党首の主張の一つ目は、「国民のための量的金融緩和(QE)」です。「銀行でなく、国民のためのQE」というのがポイントで、金融緩和で供給した資金は住宅やエネルギー、交通、情報通信プロジェクトへの投資に使う、ということです。

これは、公然たる「財政ファイナンス」なので、インフレや金利上昇が起きるという批判があります。ただ、日本の安倍政権を含め、今の先進国には、金融緩和のうえ財政支出を増やしているところが多く、それでもインフレにはなっていません。慎重に行うなら、一つの考え方、というか、既に各国の経済政策は段々これを始めているところ、とも言えるでしょう。

主張の二つ目は、富裕層増税等による財政再建です。BBCサイトの日本語訳を引用します。

財政赤字の問題には取り組むべきだが、歳出削減や「恣意的」な期限設定によって解決を図るべきではない。赤字削減の財源は富裕層への課税を強化し、節税や租税回避行為を取り締まり、同時に「企業助成政策」や企業への税制優遇措置を削ることによって確保する」

財政再建の必要性は否定していませんし、富裕層への課税強化や節税・租税回避行為の禁止、企業への補助金や税制優遇措置の削減は、日本の改革派も、内容次第では十分賛成できるものです。

主張の三つめは、国有化や公営化です。対象は鉄道会社から私立学校、エネルギー会社まで広範です。ここは全く賛成できません。イギリスなりに必要性が感じられる部分はあるかもしれませんが、日本では議論さえ必要ないでしょう。

www.bbc.com

なお、保守党のメイ内閣がブレグジットで叩かれ続いていて、政権交代もあるかもしれないということで、富裕層がコービンの租税回避是正プラン等を警戒しているようです。

www.sankeibiz.jp

アメリカ民主党のサンダース議員:連邦政府による国民皆保険グリーン・ニューディール最低賃金1時間15ドル、高等教育無償化

サンダースの主張で、特に重要なのは、連邦政府による国民皆保険グリーン・ニューディール最低賃金1時間15ドル、教育無償化でしょう。

 

www.independent.co.uk

まず、連邦政府による国民皆保険です。「メディケア・フォー・オール」と言われています。民間の医療保険も全て政府が吸収する完全官営システムです。国民皆保険という点では、日本やヨーロッパと同じで、良いことに見えますが、一元化して、しかも連邦政府が運営する、というのは、当然、議論のありうるところです。日本のように歴史的経緯で医療保険がバラバラで複雑すぎるのもどうかと思いますが、連邦政府が全て仕切ることの非効率性は相当大きいでしょう。せめて州や地方自治体の運営にすべきだったように思います。ただ、未だに民間に任せている部分が大きすぎるので、今よりは国民の厚生水準が改善する可能性はあります。

日経は、サンダースの言う医療保険について、コストが高すぎると叩いていますが、

www.nikkei.com

ブルームバーグの記者は、案外理解を示しています。運営コストが高くても、今の民間医療保険よりはまし、と言っています。

courrier.jp

グリーン・ニューディールは、気候変動に対処するため、再生可能エネルギーへの転換を図ることです。目標は良いのですが、日本の文脈で言えば、原発の扱いが気になります。原発推進派は二言目には、原発が温暖化対策になる、と言っているからです。

ロイターの記者は、内容がまだ曖昧で、原発にふれていない点を批判しています。もし、原発について確たる政策がないなら、日本では参考にしにくいでしょう。

jp.reuters.com

次に、最低賃金15ドルについてです。最低賃金を引き上げたら、かえって雇用を減らすという批判が経済学的な定石ですが、最近の経済学では、これに反対する研究もあるようです。高橋洋一氏も、「穏便な」最低賃金引上げなら構わない、要は上げ方の問題だ、と言っています。15ドルが労働需要を減らし過ぎないかどうか、という程度問題の議論でしょう。

www.zakzak.co.jp

最後に、高等教育無償化です。これは、アメリカの大学の授業料が高すぎて、教育ローンに苦しむ若者があまりに多いという深刻な問題から提案されたものです。サンダースの支持が一気に広がったのも、もともとはこの高等教育無償化の主張が受けたからだったようです。サンダースはそのことを枝野幸男氏にアドバイスとして伝え、枝野氏も参院選に向けて参考にしたいという方針のようです。

mainichi.jp

・コービン、サンダースの政策:日本で使えそうなのは?

以上、イギリス、アメリカの新しい「社会主義」の政策を見てきました。彼らの主張のうち、コービンの国有化・公有化などは、なるほど社会主義そのもので、日本では全く使えない政策でしょう。サンダースの医療保険国有化プランも、運営主体は国でない方が良さそうに思えます。

しかし、それ以外のほとんどは、拍子抜けするほど、資本主義国での普通の政策に見えますし、日本でも導入すべきものがあります。コービンは財政再建の必要性を否定しませんし、金融緩和に賛成です。コービンの富裕層増税、企業への既得権的支出や税制優遇措置削減は、日本の改革派の主張と共通していますし、財務省の役人さえ賛成できるでしょう。サンダースのグリーン・ニューディールは詰めが甘そうですが、ドイツはそれに近い政策とも言えます。高等教育無償化は、安倍政権さえ部分的にはやり始めていますし、維新はサンダース同様、高等教育まで含めた無償化を主張しています。

枝野幸男氏と玉木雄一郎氏の経済政策

次に、旧民主党の政治家の経済政策について見てみます。

まず、枝野幸男氏です。枝野氏は、最初に挙げた緊縮・反緊縮で言えば、金融も財政も反緊縮でいく、と少し前に明言しています。バズフィードによる2017年8月のインタビュー記事から引用します。

《私は緊縮財政論者だと批判されています。しかし、ここで明言します。現状の私は緊縮財政論者ではないし、いまの日本の状況で緊縮はありえません。
いまの安倍政権が取り組んでいる金融緩和を、政権交代で打ち切ることは不可能です。私が首相になっても継続します。金融政策は時々の状況で判断するもの。「べき論」だけでは進められない。》
脱緊縮派宣言である。無駄は削りつつ、しっかり財政出動をする。ただ、自民党とは、お金の使い道が違うのだと強調する。
《看護師、介護職員、保育士など、低賃金で潜在需要がある、公的な仕事があります。その賃金底上げのために、財政出動をします。
これは景気対策なんです。正しい理念だからということもありますが、景気対策だからやるんです。》

ということで、この時点に限って言えば、金融緩和には賛成、と一応は言えそうです。薔薇マーク・キャンペーンの人も、枝野氏は何で認定していないのか、不思議な気がします。財政支出については、「無駄は削りつつ」必要ならしっかり財政支出、というのも結構な話です。

ただ、財政支出の中身が、公的な職業の賃上げ、と言っているのが、やはり自治労への忖度に見えます。民間賃金は政府が口を出すことではないとも講演で言っていましたが、納得する国民は少ないでしょう。

あなたは「枝野総理」に耐えられるか:「官から民へ」は撤回、民間の賃上げ興味なし、教員の給料はアップ - 日本の改革

何より、消費税増税について、本当に反対かどうかが問題です。現状で景気回復していないから反対、と言ってはいますが、無駄な歳出削減をやることも増税前に必要なはずなのに、それは言っていません。また、消費増税ではなく富裕層増税とも言っていますし、そこは欧米の新たな左翼に学んでいるのかもしれません。しかし、そのときの理由付けが「お互い様の助け合い」という大変抽象的な言い方を使っています。これでは、「よく考えたら、消費税こそ『お互い様の助け合い』でした」などと、後になって言い出しかねません。現に、井手栄策氏も、「お互い様の助け合い」というなら、消費税で良いはずでは、と言っています。どうも、状況次第で消費税増税にスイッチできるよう、こんな曖昧な言い方をしているように見えます。

本当の争点〜「ビジョン論争」に決着を〜 | 財政社会学者、井手英策のブログ

あと、玉木雄一郎氏ですが、こちらは金融緩和も反対、財政では消費税増税に賛成なのですから、最初から話になりません。ある意味、旧民主党の政策に一番忠実なのが、かえってあだになっています。

枝野氏と玉木氏、テレビ入り審議でマクロ経済の床屋談義を披露。与野党ともに消費税増税をスルー。 - 日本の改革

維新の経済政策:おおむね改革派の経済政策だが、金融緩和の党内不一致が痛い。内容は、欧米の「社会主義」と共通点も。

次に、日本維新の会の経済政策についてです。

こちらは、公務員人件費をはじめ徹底した行政改革による歳出削減を主張しているので、そこだけ見れば、緊縮政策に見えます。現に、維新は大坂でも国政でも、緊縮政策だ、新自由主義だ、と散々批判されてきました。

しかし、これは浅薄すぎる批判です。現に、維新は、幼児教育から高等教育に至る全課程での教育無償化を主張しています。所要額は3兆円を超えますし、政府規模を最初から小さくするのが自己目的ではありません。

これを一番よく表すのが、日本維新の会が掲げる「基本方針」です。この基本方針は、維新が旧民主党の多い「維新の党」と分裂して、「おおさか維新の会」になったときに作られて、現在まで引き継がれているものです。その四つ目に、「小さな政府」ではなく、「小さな行政機構」とあります。内容は、

「政府の過剰な関与を見直し、自助、共助、公助の範囲と役割を明確にする。公助がもたらす既得権を排除し、政府は真の弱者支援に徹する。供給者サイドヘの税投入よりも消費者サイドヘの直接の税投入を重視する」

というものです。

「行政機構」は小さくして、既得権・供給者(平たく言えば企業・団体)への無駄な支出は削減して、弱者・消費者への支出は増やす、結果として、「政府」がやることは大きいかもしれない、ということです。なお、「小さな政府」ではなく、「小さな行政機構」としたのは、橋下徹氏です。当初の議員案で「小さな政府」となっていたのを、橋下氏が「小さな行政機構」と直しました。

財政について言えば、これこそが改革派の掲げるべき政策です。コービンの政策も、これに通じるものがあるでしょう。

o-ishin.jp

維新の政策で残念なのは、金融緩和についてはっきりした立場を示せていないことです。これは維新の藤巻健史議員が強硬な金融緩和反対派で、党内の意見統一が図れていないことが原因です。現実問題として、まだデフレ脱却に程遠い今の段階で金融緩和の終了など出来るはずはないのに、困ったことです。

あと、維新の政策で残念なのは、財政に関係する問題ですが、原発政策について、市場競争に任せたフェードアウトという方針でいることです。原発政策は最初から国策として始まり現在も国策として続けられているのですから、市場競争だけで終わるはずはありません。端的に、国の目標として、「原発ゼロ」を掲げるべきです。

結局、どうすべきか?

ということで、安倍政権後に採用すべき政策につき、これまで触れなかった論点を含め、ポイントを列挙してみます。

①金融緩和継続

②消費増税凍結

③既得権者となった企業団体への無駄な歳出削減

④高額所得者への所得課税強化と、家計への歳出増(待機児童対策・教育無償化等)

法人税減税と内部留保課税

⑥規制改革と地方分権

原発ゼロによる自然エネルギーへの転換

⑧公務員の特権廃止と働き方改革

維新の政策がベースになってはいますが、いくつか違うところがあります。

①の金融緩和継続は維新は言っていません。

④の高額所得者への所得税強化は維新は言っていませんが、金融所得課税の強化の形で行うべきです。これは以前、本ブログで書きました。

所得再分配のため、米国民主党議員は大金持ちに課税しろと言い、日本の旧民主党議員は消費税率を上げろと言う。 - 日本の改革

⑦は前節で書いた通り、「原発フェードアウト」から「原発ゼロ」に変えるべきです。これも以前、本ブログで書きました。

経団連会長「原発の議論をすると選挙に落ちる」発言⇒政府は国民と対話すべき。原発ゼロ決定で初めて対話が可能になる - 日本の改革

⑧は、維新の「公務員人件費削減」という主張を、こう変えるべきです。これについては、いずれまた書きたいと思います。