日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

米韓大規模演習打ち切り。日本は、駐留米軍の縮小に本気で備えるべきです。

今日の要点

アメリカが米韓大規模演習打ち切りを決定しました。今後、トランプ大統領に限らず、アメリカが日韓から駐留米軍を撤収させる可能性も考えておくべきです。

アメリカの意思で東アジアから米軍が減らされた場合、日米の経済関係は傷つけずに、独自の防衛体制を構築することが出来ます。オーストラリア、インド等の中堅国との連携強化も選択肢です。

米韓大規模演習打ち切り。東アジアの駐留米軍縮小の可能性は?

米韓両政府は、毎年春に実施している大規模な合同軍事演習の打ち切りを決めました。北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉に配慮した措置で、アメリカの国防総省は「緊張を緩和し、朝鮮半島の完全な非核化を実現するための外交努力を支援するため」と説明しました。

digital.asahi.com

トランプ大統領は、在韓米軍を維持するコストを問題視し、縮小を望んでいました。ツイッターでも、演習のコストが高すぎる、と言い続けてきました。

 

 更に、駐韓米軍自体の撤収については、否定しつつも、将来は分からないような含みのある言い方をしています。先月、CBSのインタビューにこう答えたそうです。

When asked if he would keep U.S. troops in South Korea, Trump said: “Yeah. I mean we haven't talked about anything else.”

“Maybe someday. I mean, who knows. But, you know, it's very expensive to keep troops there. You do know that,” he added in the interview with "Face the Nation." “We have 40,000 troops in South Korea. It's very expensive, but I have no plans. I've never even discussed removing them.”(Stars and Stripes 2019.2.3)

最初と最後では否定していますが、真ん中あたりでは、Maybe someday. I mean, who knows. But, you know, it's very expensive to keep troops there.と、だいぶ頼りない言い方です。

www.stripes.com

日経のコメンテーターの秋山浩之氏は、「海外駐留コストを節約したがるトランプ氏の思考は今後、在日米軍にも向けられかねない」と指摘しています。「日本政府関係者らによると、トランプ氏は安倍晋三首相との複数の会談で、在日米軍の駐留費が高いことに不満を漏らしている」とのことです。

www.nikkei.com

これは、韓国での演習をやめると言うだけのことではなく、トランプ氏が進める「孤立主義」の一環です。昨年12月にはシリアから米軍を撤退させて、その後軌道修正するということもありました。昨年末はアフガニスタンからの撤兵も検討されていたそうです。先月には、トランプ大統領NATOから脱退したいとたびたび周囲に漏らしていたとのことです(『選択』2019年3月号)。

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トランプ氏でなくとも、全世界の米軍基地について、経済的なコストやアメリカの国益に十分役立たない、という議論は、以前からアメリカ国内にもあります(ケイトー研究所のジョン・グレイザー氏等)。

time.com

日本としては、強固な日米同盟が現状ではもっとも抑止力が高いでしょうから、駐留米軍が撤収するような事態は避けるようにすべきです。しかし、アメリカ国民や大統領の意思次第で、今後どうなるか分かりません。大統領がトランプ氏であってもなくても、アメリカが日韓から米軍を撤収させるという事態を、今から想定し、準備しておく必要があります。

駐留米軍撤収後の日本の防衛は?

ここでは、思考実験として、日本から駐留米軍が撤収した、という事態を考えてみます。日本としては一所懸命に引き止めたけれども、アメリカがコストに合わないと考えたような場合です。

これに関連して、日米同盟がなくなったときの経済的なコストについては、防衛大学校の武田靖裕教授の有名な試算があります。それによると、日米同盟をやめたときのコストは、約23兆円だそうです。

ただ、この試算は当然色々な仮定を置いているので、注意が必要です。武田教授自身、「23兆円という数字の一人歩きは問題なしとしない」と言っています。実際、この23兆円のかなりの部分は、軍事的な直接経費ではなく、日米同盟がなくなることによる経済的な損失です。その中身は、①アメリカへの輸出がゼロになることでのGDPの減少分が6兆8000億円、②株価下落(リーマンショック時並みの25%下落)によるGDPの減少分が12兆円、③エネルギー資源の輸送コスト増が最大2.5兆円で、経済的な間接経費の増大分が、21.3兆円にもなっています(武田教授の試算は以下で見られます)。

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結局、経済的な間接経費を除いた、軍事費の純増分はせいぜい1~2兆円くらいとなります。経済的な間接経費増についても、最初の仮定の通りに、日本は引き止めようとしたけれど、アメリカの事情で米軍が撤収する場合なら、アメリカへの輸出が全部なくなる、という想定は不要です。「日米同盟」という言葉の意味によりますが、アメリカと決定的に対立するのでなければ、輸出や株価を通じたGDPへの減少ははるかに小さくなるでしょう。

武田教授の試算では、「核の傘」や「ミサイル防衛システム」の恩恵がなくなることの経済的損失は計算されていません。このうち、「核の傘」が実際はあてにならない可能性があるということを、このブログでは主張してきました。

北朝鮮の核ミサイルを無力化するには:独自のミサイル防衛完成、集団的自衛権拡張、「国民の、国民による、国民のための」国防の実現 - 日本の改革

ここは、アメリカによる核兵器の「拡大抑止」が現実にどの程度機能しているのかについての評価の問題になるでしょう。仮に、アメリカの核の傘は実際にはそう強く働かないと見積もるならば、核の傘がなくなっても、経済的損失はそれほど大きくない、ということになります。逆に、核の傘が有効に働いているなら、それがなくなったときの損失は甚大でしょう。ミサイル防衛システムについても同様です。

私は、核の傘は実際のところ、それほど有効に働かないけれど、ミサイル防衛システムは実際に効果が大きいと思います(現在のところほとんど直観にすぎませんので、これから更に勉強していきますが)。そう考えれば、米軍撤収後に日本が追加的に負担すべきものは、主としては、独自のミサイル防衛システムの開発・運用に伴うコストだろうと思います。

このため、もし日本の意に反して米軍が撤収したとして、日米関係自体は経済関係も含めて比較的友好的なままなら、追加的な費用は数兆円くらいで、日本独自の国防も実現可能ではないかと思います。

既にオーストラリアやフランスは、アメリカとの同盟に依存しすぎない「プランB」の安全保障戦略を模索し始めているようです(以下の日経の記事参照)。

www.nikkei.com

更に、米軍撤収の場合に、その他の中堅国と連携することも必要でしょう。豪国立大のロリー・メドカーフ教授は、オーストラリアは「中国でも米国でもない立場を持つことが、(結果的に)中国の経済成長の恩恵を最大化する」として、オーストラリアや日本、インドなどで新たな連携の枠組みを作るよう提案しているそうです。

mainichi.jp

このように、駐留米軍の撤退という将来の事態に備えるためには、経済的な負担の冷静な検討や第三国との連携等を行っていくべきです。何より、こうした安全保障上の重要な選択は、国民の意思によって行うべきです。