日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

中国サイバー軍は、日本の統一地方選と参院選に必ず介入する。狙いは何か、影響力はどうか。

今日の要点

・台湾の蔡英文総統がインタビューで、昨年の台湾統一地方選挙での中国サイバー軍の介入があったと発言。中国サイバー軍は現実の脅威です。

・民主主義国の選挙に、中国のサイバー軍はどの程度影響を及ぼすのか。恐らく、選挙戦の構図を動かす力はないものの、票数の増幅は出来るでしょう。

・今年の統一地方選参院選で、中国サイバー軍は、むしろ安倍自民党を支持する形で情報操作をするでしょう。彼らに争点形成や全体的な情勢を左右する力はありませんが、個々の選挙戦で親中派の票を増やす可能性があります。主権者である我々の賢明な判断が必要です。

蔡英文総統がインタビューで、昨年の台湾統一地方選での中国サイバー部隊の介入に言及

産経新聞のインタビューで、台湾の蔡英文総統が、中国からの脅威を念頭に、安全保障問題やサイバー攻撃に関して日本政府と対話したいとの意向を示しました。サイバー攻撃に関する発言につき、産経の記事を引用します。

「蔡氏は、ネット上の偽情報にも言及。昨年9月に関西国際空港が台風21号の影響で浸水した際、「中国の総領事館がバスを手配し中国人を優先的に救助している」との情報がネット上に拡散し、蔡政権の対応が批判された事案を挙げ、「一つの偽情報が台湾に大きな混乱をもたらした」と指摘した。蔡氏は、中国の「網軍(サイバー部隊)」は昨年11月の台湾統一地方選でも、中国寄りの野党と「協力関係にあった」と述べ、中国の選挙介入に強い警戒感を示した」

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関空の浸水事故時のネット上のデマを原因に、台北駐大阪経済文化弁事処(領事館に相当)代表だった外交官が自殺しました。関空が台風で閉鎖された際、「中国の総領事館がバスを派遣し、取り残された中国人を救出したのに、台湾は助けてくれなかった」とのデマで批判され続け、心労が重なったと見られています。

この事件等をきっかけに、台湾政府は、SNS等での虚偽情報の拡散やメディアに対する規制強化に乗り出しています。罰則の厳格化を含むため、野党やメディアが言論統制だと反発しています。

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台湾のネット規制強化の是非はともかく、中国のサイバー軍が外国の選挙時に活動を行っているのは恐らく事実です。既に昨年8月、日経がその可能性について詳しく報じていました。近隣国への政治介入を狙ったサイバー攻撃技術の開発のため、昨年7月に総選挙があったカンボジアで大規模な「予行演習」を行った、ということです。

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カンボジアでの予行演習が昨年の7月。台湾の統一地方選が昨年の11月で、蔡英文総統が選挙介入があったと発言。そして、今年2月、オーストラリアの連邦議会のコンピューターネットワークがサイバー攻撃にあっており、豪公共放送ABCは、捜査当局が中国が背後にいないか調べている、と報じています。

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このように、中国サイバー軍は、予行演習⇒台湾統一地方選への攻撃、と段階を踏んで活動を行い、その範囲を、中国の安全保障に関係する国々に、順次広げています(疑い段階も含みますが)。こうした活動の履歴を見る限り、中国サイバー軍は、今年の日本の統一地方選参院選でも、必ず何らかの活動を行うでしょう。

民主主義国家の選挙への、中国やロシアのサイバー攻撃。その効果は?

では、実際のところ、こうしたサイバー攻撃は、選挙にどの程度の影響を及ぼすのでしょうか?台湾の統一地方選挙につき、福島香織氏の分析を紹介します。

昨年11月の台湾の統一地方選挙は、与党・民進党の惨敗でした。総統の蔡英文氏は責任を取って党主席職を辞任しました。象徴的だったのは、高雄市長選です。国民党の落下傘候補・韓国瑜が民進党の牙城であった高雄の現職市長に9万票という大差で当選しました。もともと民進党が強い地域なので党が油断したこと、前回圧勝した現職が輪をかけて傲慢な態度だったこと、落下傘候補が若者向きのネット選挙を積極的に行ったこと、等が原因だったようです。

一方、中国のネットでの世論工作の影響が台湾でも指摘されています。高雄市長選での国民党候補の韓国瑜のネット動画は100万人以上が視聴し、これが台湾メディアに報じられて、台湾全体で国民党への追い風になりました。しかし、ネットで視聴したり応援コメントをしている人間は匿名す。民進党側は、中国の愛国ネットユーザーが数にものを言わせて、台湾世論を引っ張ったと見ています。

さて、そのネット工作の影響力はどうだったでしょう。福島香織氏によると、「ネット工作がターゲットにしているのは、人々の中にすでに生まれている懐疑や不満、不安」であり、そうした「不満や不安を巧妙にあおることで、爆発的な怒りや批判の世論の潮流や社会を分断するような大きな対立を作り出すに過ぎない」とのことです。

台湾について言えば、「有権者の中にすでに蔡英文民進党政権への慎重すぎる姿勢への不満、高雄の現状を変えたいという欲求、台湾の国際環境が中国によって圧迫されていることの不安」が既にあるところへ、ネット工作がそれを増幅した、ということです。

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つまり、中国サイバー軍には、選挙の争点を作ったり、選挙の大きな構図(各勢力の有利不利含む)を変える力はないが、その争点や構図に乗る形で、票数を大きく変えることは出来る、ということです。僅差で競る選挙では、勝敗を決することもあり得るでしょう。

日本の統一地方選挙参院選への中国サイバー軍の介入

では、中国サイバー軍は、日本で今年行われる統一地方選挙参院選で、何を狙って活動を行うでしょうか?

私の予想は、ズバリ安倍政権と自民党の側面支援です。中国にとっての最大の懸案事項は、アメリカとの対立です。昨年秋のペンス演説以降、米中の「新冷戦」と言われるようになりましたが、それ以前の貿易摩擦の段階から、中国は日本に接近してきました。日米同盟にくさびを打ち、アメリカを牽制するためです。

これに対し、日本政府は、外交上の成果が簡単に上げられる分野だと考えたのか、簡単に応じてしまっています。安倍政権は一帯一路への協力まで打ち出しました。中国は、この政権を是非支え続けたいと思っているはずです。

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台湾の例を見れば、中国サイバー軍は、日本の国内問題で争点形成をしたり、選挙の構図を作ったりする意思も能力もないでしょう。既に出来上がった構図の中で、出来るだけ自民党を応援する形の工作を行うでしょう。特に象徴的な選挙戦で、自民の親中派を応援する、ということがあり得ると思います。

日本は、政府も対策が必要でしょうが、まずは、主権者である日本国民が、中国のサイバー軍の攻撃は必ずあるものとして、冷静にネット情報に接することが大事です。特に、福島香織氏の言う「爆発的な怒りや批判の世論の潮流」を無理に作ろうとするような発信には十分注意しましょう。そして、いわゆるフィルターバブルの外に出て、自分にとって不快な情報にも接するよう努めるべきです。サイバー空間は既に戦場です。そこは、「国民の、国民による、国民のための国防」が最も有効に働く場所でもあります。