日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

なぜ、野党は攻めきれなかったのか:2019年度予算案、衆議院を通過し、参議院は消化試合に

今日の要点

・2019年度政府予算案が衆議院で成立しました。通常国会中の野党の支持率は振るわず、政府を攻め切れませんでした。選挙を気にしているのかもしれません。

・野党は、統計不正問題について、攻め方がいまひとつでした。政治主導の統計改革と政治介入の統計不正の違いをはっきりさせるべきでした。また、アベノミクス批判とからめ過ぎて、焦点がぼけました。

・最大の問題は、消費税増税に反対する姿勢が全く足りなかったことです。本音では消費増税に賛成だからです。自分達で決めた辺野古移転についての追及も説得力を欠きました。旧民主党の政党・議員は、政権時代を総括・謝罪のうえ、消費税について政策転換すべきです。

2019年度予選案成立。参議院は消化試合に。

一般会計総額が過去最大の101兆円超の2019年度予算案が、昨夜遅くに成立しました。憲法衆院優越規定で、予算案は参院送付から30日で自然成立するため、年度内成立が確定しました。参議院での審議はまるっきり消化試合になります。

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今国会の開会前に、政府統計の不正という大問題が持ち上がったのに、衆議院での日程は実にスムーズに消化された感じです。野党はこの問題を徹底して追及すべきでしたが、野党の抵抗はむしろ足りなかった気がします。

これには、国会戦術上の理由もあると思います。まず、国民が「審議拒否」という手段を嫌っています。私は、節度を持って大義名分を立ててやるなら、多少の審議拒否や日程闘争もやむを得ないと思いますが、どんな日程闘争も好ましくないというのが世論なら、見直しも必要でしょう。地方議会と同じように、日程については原則として固定して、その代わり野党の見せ場をもっと増やす、たとえば野党提出の議員立法も出来る限り審議する等、国会改革をやるべきでしょう。

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なお、今回は深夜国会での予算案採決となりました。今回について言えば、深夜国会は野党のせいではなく、年度内成立を確実にしたい政府・与党のせいだと思います。この点は、予算案採決の本会議で、維新の丸山議員さえ、相当厳しく政府・与党批判をしていました。丸山議員は、政府・与党が質問準備の時間も全然与えず、ひどいものだと叩いていました。総理が、わざとらしく、こんなポーズ↓をとって深夜国会はおかしいとアピールするのは、ふざけた話です。自分達が決めたことなのですから。

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今国会で、野党の支持率は全体的に下がり続けています。統計不正についての国会審議が、国民には十分アピールしなかった結果となっています。最近少し上がり始めているのは、統計不正について官邸の関与が疑われるようになったからでしょう。それでも、今のところは決定打となっていません。

 内閣支持率は、やや下がってきています。官邸の関与が疑われて以降、統計不正の追及が効果を上げ始めていますが、今のところはモリカケほどのインパクトがやっぱりないようです。

 こうして、なかなか効果が上がらない中、野党も、4月の統一地方選と7月の参院選が気になって、本音では早く国会を閉じたいと思ったのかもしれません。仮に野党支持率が急上昇、内閣支持率急落となれば、選挙戦略上も、国会が延びてもよいけれど、効果がないなら早く選挙戦をやりたい、という感じにも見えました。

野党が攻めきれなかった理由①:統計不正について

では、なぜ野党の支持率は上がらなかったのでしょうか。世論調査を見ると、国民が統計不正に腹を立てて、政府がおかしいと思っていたことは確かです。ただ、この問題自体、現政権だけの責任でないのも確かです。専門用語も多い難しい問題で、分かりにくかったのも、国民の関心が不十分となった一因でしょう。

それでも、野党の追及には、改善すべき点が多かったと思います。

第一は、そもそも、「統計不正とは何か」が国民に十分伝えられていないという点です。今回の問題では、法令に違反して全数調査を長年行っていなかった問題と、統計手法の変更についての政治介入の問題の二つがあります。

一つ目の法令違反については、厚労省の二度にわたる調査自体がお手盛りのとんでもないものだったので、特別監査委員会と調査自体を厳しく批判したのは全く正しいことでした。二回目の報告は「課では不正があったけれど省として組織的な隠ぺいはない」という意味不明のものでした。二回目の報告についての特別監査委員会長の樋口氏の答弁はデタラメで、これは参議院でも国民は一定の関心を持つでしょう。長年の不正については安倍政権のせいでなくても、こんな無茶苦茶なお手盛り調査をやっているのは安倍政権、根本大臣なので、引き続き厳しく追及すべきです。

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問題は二つ目の、政治介入の問題です。ここでは、統計手法の変更について、賃金やGDPが高く見えるような政治介入が行われたのではないか、が問題となりました。ここについては、野党の攻め方にいくつも改善すべき点があります。

・勤労統計での抽出調査の補正について、2017年度までは補正せずに低い値にして、2018年度には補正して高い値にして、賃金の伸び率を高く偽り、しかもそれを密かに行ったこと。私はこの問題が、不正としては一番悪質だと繰り返し主張してきました。

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しかし、野党はこの問題を取り上げはしたものの、本気で時間を取って追及型の質問をしていません。これには本当に失望しました。長妻議員はこれが「最大の謎」と言っていたのに誰も大した追及をしなかったのが、私にとっては「最大の謎」です(笑)。

おそらくは、はっきりと政治介入を示す証拠が見つけられなかったのでしょうけれど、厳しいことを言うようですが、そこは調査能力も含めて野党の改善すべき点です。政治介入というストーリーでなくとも、役所の法令違反の問題として、真相解明をすべきでした。

・勤労統計でのサンプリング手法の変更

野党は、ここを最大の焦点と定めました。総理秘書官による政治介入の疑いが強まったからです。その方針は正しかったと思います。現に、政府のおかしさが次々と明らかになりましたし、この問題が出てから、ようやく野党支持率と内閣支持率に影響が出てきました。

ただ、この問題については、「政治主導」と「政治介入」の違いを明確にすべきでした。統計不正の追及についての、野党の最大の失敗はここです。統計に関する「政治主導」と「政治介入」の違いについては、以前もブログで主張したことですが、詳しく述べます。

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2015年以降に政府が行ってきた統計制度の全面的見直しは、2007年の統計法の改正と並んで、重要な統計制度改革である、と言って良いと思います。野党も、最近行われた国際基準に合わせる等の制度変更については、批判していません。

そのスタートになったのが、野党の批判の的となった、2015年10月の経済財政諮問会議での麻生大臣の発言です。確かにこの発言が、勤労統計についての後の政治介入を引き起こした可能性が高いと思います。私も、この麻生発言を政治介入の疑いがあるものと捉えました。

一方で、この発言で、政府全体の統計を改善する方向での改革が進んだ、という、専門家による評価があるのも確かです(美添泰人「公的統計の課題と改革」(国本直人・山本拓編(2019)『統計と日本社会」東京大学出版会第13章)。 

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 麻生大臣発言の本当の意図は政治的に政権の実績を誇示したいというものであっても、ある方向づけをして専門家に検討させる、ということころまでは、「政治主導での制度変更」であって、「政治介入による不当な歪曲」ではない、と政府は言うことが出来ると思います。

勤労統計のサンプリング手法の変更について言えば、官邸主導で、厚労省内に検討会を立ち上げるところまでは、「政治主導の統計改革」と言おうと思えば言える、少なくとも、政府はそう言って逃げることが可能になります。これに対して、いったん専門家に検討をまかせて、専門的、中立的に議論をしている最中に、その議論を変えようとするのは、明らかに「政治介入による歪曲」にあたります。

野党は、ここを明確に区別して、誰がどう見てもおかしい「政治介入」の問題に集中すべきでした。これも私が繰り返し主張したのですが、サンプルの全部入替か一部入替か、というのは、どちらにも一理ある話です。どちらかが正しいという姿勢で突っ込むべきではありませんでした。それなのに、野党はまるで、「部分入替こそが『正しい』手法だ!」と言わんばかりの攻め方でした。

これでは、政府はかえって逃げやすくなります。現に衆議院では、延々と全部入替と部分入替のどちらが統計的に正しいか、という専門的な議論が繰り返されました。これは根本大臣が意図的に時間稼ぎでとったやり方でもありますが、それを許したのは野党側の問題設定の拙さです。

以上が、統計不正について野党が攻めきれなかった第一の理由です。

第二に、統計不正の問題をアベノミクス批判とからめ過ぎて、議論が拡散し、印象が散漫になりました。総理が2015年時点で実質賃金を意識していたこと、それを高く見せようとしたことは、おそらく間違いないだろうと思います。野党は、そこに焦点をしぼるべきでした。統計についての政治介入と、経済政策の是非の問題をいっしょにやると、結局は政治介入の問題が見えなくなります。

総理はじめ大臣から、総雇用者所得の方が大事だ等の切り返しがありましたが、政府のそうした挑発に、野党が乗り過ぎました。そこで経済政策の議論に乗ったらダメです。ましてや、自分達から、統計不正の追及の場で、アベノミクスの問題点について、とうとうと自説を述べるなど、論外です。このあたりも、本当に下手でした。

こうした二つの理由で、統計不正について衆議院で詰め切れなかったのは残念です。予算が通って政府は格段に有利になってしまいましたが、それでも野党は、衆参両院でこれまでの反省を踏まえて、厳しく追及してほしいと思います。

野党が攻めきれなかった理由②:消費増税の反対が全然足りない。

以上、統計不正について詳しめに述べましたが、今国会での野党の最大の問題点は、やはり消費増税について、全然真剣に反対しなかったことです。旧民主党の政党・議員達が、今度の増税には反対と言いつつ本音では消費増税に賛成だったり、今でも消費増税に賛成だったりするからです。これも、本ブログで繰り返し指摘してきました。

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本来、今国会は、今年秋の消費税増税こそが最大の焦点となる「消費税国会」になるはずでした。ところが、直前に統計不正問題が発覚。野党がこちらを重視したのは正しい選択ですが、旧民主党の政党・議員達は、本音では、ほっとしたのではないでしょうか。消費増税については政府に厳しいところを見せないと国民が黙っていない、しかし、消費増税に反対したら、民主党政権が決めたことだろうと批判される、何より、実はもっと消費税は上げたいと思っているーそんな悩みを抱えた旧民主党の人達は、統計不正問題が出てきて喜んだのではないでしょうか。消費税問題はそれほどやらずに済む、というわけです。

現に、あれだけ「物価上昇のせいで実質賃金が下がった!」と言いながら、物価上昇の最大の原因である、2014年の消費税増税の影響については、野党は全くふれていません。一言だけふれるときは、何だか早口で不明瞭です。国民をバカにしています。

昨夜の本会議での予算案への反対討論で、立憲民主党の大串議員は言いました。少子高齢化社会保障の持続可能性と適切な子育て支援のために、財政赤字付け回しをしないために

「消費税と一体としてこれらの問題を考えていくことの重要性は言うまでもありません」

表現は不明瞭ながら、やっぱり消費増税頼りです。こんな姿勢のまま、2014年の消費税増税が景気後退を招いたことについて安倍政権をまともに追及しないまま、今年の消費増税にも徹底した反対をしないまま、選挙に勝とうなどというのは、ふざけています。

辺野古についても、県民投票の結果を尊重せよと言うのも結構、工事が長期化するおそれを言うのも結構ですが、やはり民主党政権で自分達がいったん県外と言い出して撤回して、その後は辺野古を強制したのが問題の根源だということについて、全然、反省が見えません。これで政府を追及したところでダメです。この点も、本ブログで書きました。

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日本の改革のために、政権交代可能な政治にすべきですし、そのためには、旧民主党の政党・議員の努力が必要です。しかし、旧民主党の政党・議員達は、民主党政権について、総括すべきです。少なくとも、消費税増税の決定と沖縄の米軍基地について自分達がやったことについて、真摯に反省し、国民に謝罪し、反省に基づく理由を述べたうえでの政策転換を行うべきです。そうしなければ、国民は支持しません。もう罵詈雑言など、慣れたでしょう?失うものなどないような支持率でしょう?特に消費税については、いま一度、よく考えて、政策転換を行うべきです。