日本の改革

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米朝首脳会談決裂。悪い合意よりはマシ。でも、ハノイは第二のレイキャビクにはならない。

今日の要点

米朝首脳会談が決裂しました。両首脳にとって外交的敗北ですが、悪い合意よりは決裂の方がマシではあります。

・1986年のレイキャビク会談でも米ソ首脳会談は決裂しましたが、その後の核軍縮・冷戦終結の出発点になったと評価されています。が、当時とは状況が違い、再現は不可能です。結局、北朝鮮は「非公認の」核保有国であり続けるので、それを前提にした対応が必要です。

アメリカの報道の紹介

二度目の米朝首脳会談は決裂しました。今回は、アメリカの反応をいくつか紹介してみます。複数の記事で、1986年レイキャビクでの米ソ首脳会談の決裂の例が言及されていました。これについて最後に述べます。

ワシントン・ポストは、今回の決裂は、米朝双方にとって、今後の外交交渉への深刻な疑念をもたらし、北朝鮮と韓国の関係にも悪影響があると分析しています。北朝鮮の当局者は、金正恩が交渉を続ける意思を失ったとして、アメリカが唯一の機会を失ったと発言しているそうです。そして、今回の交渉がトランプにとっては、外交的な敗北としています。

さらに、もともと今回の交渉はリスクが高かったとして、北朝鮮が20~65の核兵器をあきらめると思えない、とのアメリカの当局者の発言を紹介しています。一方、ヘリテージ財団のブルース・クリンガー氏の、悪い合意よりは決裂の方がマシだという意見も紹介しています。 

www.washingtonpost.com

ニューヨーク・タイムズによると、北朝鮮の外相が以下のように発言しています。北朝鮮がニョンビョンの核施設廃棄と引き換えに要求したのは、経済制裁の部分的解除だけだ、「現在のレベルの信頼関係では、これが非核化のために提案できる最大限だ」、「こんな機会はもう二度と来ない」。

同紙は、今回の交渉決裂で、この1年間にわたる米朝の関係改善の動きが暗礁に乗り上げたとしています。更に、敵とのディールが出来るタフ・ネゴシエーターを自称してきたトランプ氏にとっては敗北だとしています。

そして、米朝のどちらの首脳も、自分達の政権内のタカ派にこれから突き上げられるだろうとして、トランプ氏が国内での刑事捜査にも直面している点を挙げています。

www.nytimes.com

ニューヨークタイムズの"Opinon"は、トランプ大統領核兵器について悪い合意をするより交渉決裂を選んだのは正しいとしつつ、トランプ氏が自分で言うほど交渉には優れていないことを示したという趣旨の批判をしています。

この記事では、米ソ冷戦時の例を挙げています。

レーガン大統領は、1986年に行われた、アイスランドレイキャビクでの米ソ首脳会談で、自分が納得できない内容の核軍縮合意を受け入れるよりは、席を蹴って立つことを選び、このときの交渉は決裂しました。その1年後、ソ連がより良い条件を持ってきたので、合意が出来ました。そして、こうした期待を持つことは出来るとしています。

それでも、北朝鮮がまた核やミサイルの実験を行う瀬戸際外交に戻るリスクがある、としています。

そして、今回のトランプ氏の交渉の手法を厳しく批判しています。特に、彼が合意を熱心に望み、 “fantastic success” があるだろうなどと公言していたせいで、金正恩が要求水準を引き上げることになったのではないか、と主張しています。

トランプ氏は、平凡な外交的なプロセスを嫌うあまり、個人的な人間関係での妥結に重きを置きすぎて、今回はこれが裏目に出た、と叩いています。

更に、トランプ氏が金正恩を“my friend”、 “great leader,” と言ったり、去年は、金正恩がトランプ氏に送った手紙を “beautiful letters” と言ったり、ついには “we fell in love.”などと言ったのが、悪趣味だ(distasteful)と断じています。そして、「冷酷な独裁者を交渉に引き込むのは完全に正しい。しかし、彼等にこびへつらうのは、我々の信じる価値への裏切りだ」と厳しく批判しています。(ここは大いに共感できました。)

それでも、今後、世界を改善させる外交上の選択肢はある、と主張しています。

今回、北朝鮮が提案した核ミサイルの実験停止とニョンビョンでの生産凍結は、見返りが高すぎなければ良いだろう、たとえば、南北朝鮮間のプロジェクトの再開程度ならどうか、と提案しています。

www.nytimes.com

ポリティコは今回の交渉決裂を外交的な敗北としつつ、それでも国内での政治的敗北(政府閉鎖)に比べればマシで、政府閉鎖に反対した共和党議員も今回のトランプ氏の判断をほめている、としています。

とは言え、良いニュースではないとして、核兵器専門家Joe Cirincione氏のコメントとして、朝鮮半島は外交上の得点が出来る唯一の場所だったのに失敗したとという意見を紹介しています(この人は左翼系だとも書いてますが)。そして、2020年の大統領選に向けた外交上の成果とするはずの交渉に失敗した、としています。

なお、アメリカの当局者は、最初から交渉決裂を視野に入れていたということです。

記者会見の席で、大統領がフォックスニュースのショーン・ハニティを見つけて、「ショーン・ハニティ、お前ここで何やってんだ?」と言いながら指名したら、ハニティは今回の決裂を、米ソ冷戦時のレイキャビク会談になぞらえていた、というエピソードが紹介されていました。

www.politico.com

 ハノイは第二のレイキャビクにはならない。

さて、今回の交渉決裂は、米ソ冷戦時のレイキャビク会談のように、長い目で見れば強気で交渉決裂で良かった、あれが北朝鮮の非核化の出発点だった、と後で評価されるようになるでしょうか?私は無理だと思います。

レイキャビク会談当時は、ソ連の体制は崩壊寸前でした。アメリカはSDIという、ソ連に想像もつかない新しいシステム(実はフェイクも含む)でソ連を脅していました。

しかし、現在の北朝鮮の独裁体制は揺るぎません。何より、バックに中国がいます。こちらの独裁体制は更に盤石です。現在のアメリカは北朝鮮の持っていない軍事技術を沢山持っていますが、北朝鮮の同盟国の中国とは、技術的には競争をしている状態で、一部は追い抜かれてさえいます。

以上のような状況の違いを考えれば、結局は北朝鮮の非核化など無理です。「非核化」交渉は続けて、彼等の開発能力を部分的にでも削減すべきです。しかし、日本も国際社会も、北朝鮮が「非公認の」核保有国である現実を踏まえた対応が必要です。