日本の改革

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公取委、ネット通販大手を一斉調査:世耕大臣の政治介入?プラットフォーマー規制は、消費者利益を最優先に!

今日の要点

公正取引委員会がアマゾン等の一斉調査を始めます。ポイント還元の原資を外部の出品企業に負担させる方式が、独占禁止法違反の疑いがあると言います。出品企業等を保護するための政治的介入のようにも見えます。

・消費者のためになる安売りが、出品企業の利益のためにあまり狭められるべきではありません。デジタル・プラットフォーマーへの規制は、最終的には消費者の利益につながるものにすべきです。

公取委の一斉調査

公正取引委員会は、インターネット通販サイトのポイント還元をめぐり、アマゾン、楽天、ヤフー等、電子商取引のモール運営企業の一斉調査を始めます。ポイント還元の原資を外部の出品者に負担させる方式が、独占禁止法が禁じた「優越的地位の乱用」にあたる可能性があるということです。

www.nikkei.com

公取は既に1月から、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業を対象に、大規模な実態調査を始めており、その一環ということです。

日経がこの調査を報じた同じ日、少し前の時間に、世耕経済産業大臣閣議後記者会見をしていました。記者から、アマゾンが通販全商品に1%以上のポイントを還元し、その原資を外部出品企業にも広げたことにつき、記者が質問していました。これは出品企業にとって一方的ではないか、という内容でした。

www.nikkei.com

記者の質問に対して、世耕大臣は次のように答えています。

「中小企業を所管する大臣として申し上げさせていただきますが、仮にエレクトロニックコマース市場における優越的な地位を濫用した一方的な契約変更によって、出品者の過度の負担を強いるようなことがあるのであれば、これは、中小企業の公正な競争条件をゆがめる大きな問題だというふうに考えています」

「現在、公正取引委員会がデジタルプラットフォーマーの取引実態の調査を行っているというふうに聞いておりますけれども、中小企業を支援する立場からしても、やはり、中小企業は非常に、このEC市場に依存している部分が大きいわけでありますので、中小企業支援の立場からも、公取には、ぜひ迅速な調査と必要な対応を進めていただくことを強く期待したいというふうに思っています」

www.meti.go.jp

公正取引委員会の調査の中身について、世耕経産大臣が、「ぜひ迅速な調査と必要な対応を進めていただくことを強く期待」するなどと、言ってもよいものでしょうか?公正取引委員会は準司法的な権限を持った独立行政委員会です。だからこそ、世耕大臣も、最初のところでは、「現在、公正取引委員会がデジタルプラットフォーマーの取引実態の調査を行っているというふうに聞いております」と、自分は詳しくは知らないよ、という言い方をしています。一方で、「迅速な調査と必要な対応」を「強く期待」などと言っていることに、一国民として強く違和感を覚えるところです。

あるいは、世耕大臣は、公取がポイント還元について調査を始めることをあらかじめ知っていたから、ここまで踏み込んだ表現をとったのかもしれません。大臣の会見は、上記の経産省ウェブサイトによれば、9時12分~9時20分で、日経が「公取委、ネット通販大手を一斉調査」とネットで配信したのは、やはり上の日経サイトによると、13時58分です (同日20時25分更新)。もし、公取の調査内容をあらかじめ大臣が知っていたなら、やはり問題ではないでしょうか。

しかも、「中小企業を所管する大臣として」発言しています。これでは、アマゾン等のポイント還元に対する今回の調査が、出品する中小企業保護のための政治的な圧力ではないか、という疑いを感じてしまいます。

こんな疑いを感じるのも、デジタル・プラットフォーマーに対する規制について、経済産業省公正取引委員会総務省の三つの役所が共通して検討会を開いており、去年12月18日に、合同で基本原則を発表したばかりだからです。

www.jftc.go.jp

この基本原則をまとめたのは、以下の検討会です。議事録はまだ概要しか発表されていない様子ですね。

www.jftc.go.jp

なお、経済産業省公正取引委員会総務省の三つが共同で規制について検討していることにつき、高橋洋一氏も、町田徹氏も、異例のこととして驚いています。

【日本の解き方】3省庁で異例の「GAFA規制」 独占禁止法と税法、データ対象に 巨大ITは中国系もありうる (1/2ページ) - zakzak

GAFAも驚いた「巨大IT規制」がこんなに早く進んだ裏事情(町田 徹) | マネー現代 | 講談社(1/3)

この三省庁の検討会で議論されている中身自体も、出来上がった基本原則も、全くまともなものだと思いますし、プラットフォーマーへの規制は必要だろうと思います。しかし、今回のポイント還元に関する調査についての世耕大臣の発言はいただけません。公正取引委員会の独立性、中立性を侵害しかねないからです。

デジタル・プラットフォーマーへの規制は、あくまで消費者のために

三省庁の検討会の出した、デジタル・プラットフォーマー規制の基本原則は、以下のようなものです。

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プラットフォーマー規制の基本原則(経産省公取委総務省

内容自体は、EU等の規制も参考にしており、まっとうなものだと思いますし、この方向で出来ることから進めたら良いと思います。今年から公取委が始めた実態調査もその一つでしょう。

ただ、規制を行うなら、あくまで消費者の利益のために行うべきです。アメリカで現在高まっているプラットフォーマー規制の議論につき、日経が、これまでの「消費者重視」の反トラスト法の議論と異なる主張が生まれてきた、としています。

www.nikkei.com

しかし、アメリカでの最近のアマゾン批判は、略奪的価格設定、つまり、法外な安値でライバルをつぶしてしまうやり方が行われているとして批判しているようです。これは、つぶされるライバルの中小企業を守るための理屈でもありますが、最終的には、消費者の利益を考えた議論です。法外な安値でライバルをつぶして一社独占になれば、後は好きなように価格を高く出来るのだから略奪的価格設定は結局は消費者を害する、と言えるからです。

デジタル・プラットフォーマーへの規制については、あくまで消費者の利益のために行うべきです。一見して中小企業を保護するように見えても、最終的には消費者利益につながるときにのみ、規制すべきです。

もちろん、こうしたIT大手が、消費者情報を濫用したり、政治的に不当な力を行使したりすることには厳しい規制が必要です。IT大手の契約の実態は詳しく調べて、不公正なところは直させるべきです。ただ、現状で日本での規制を議論するときには、企業保護に偏る危険も心配すべきで、やはり消費者利益を第一に考えるべきです。