日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

枝野氏と玉木氏、テレビ入り審議でマクロ経済の床屋談義を披露。与野党ともに消費税増税をスルー。

今日の要点

・2月25日の衆議院予算審議。枝野氏も玉木氏も、勤労統計や辺野古問題では政府を追及するものの、経済政策につき、マクロ経済の素人談義に終始しました。

・政府・与野党は、2014年消費税増税の悪影響を、なかったことにしています。政治家が誤りを繰り返さぬよう、国民の監視と選挙での意思表示が必要です。

勤労統計に関する新たな証拠に基づく質疑はOK

2月25日の衆議院予算委員会

先週末に、統計不正について、厚労省から検討会座長に宛てたメールが委員会に提出されました。官邸が統計に政治的介入を行ったかについて、重要な資料であり、一歩前進です。国会が何とか行政監視の面目は果たした格好です。

小川淳也議員のパネルが、経緯を分かりやすくまとめていました。

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2019年2月25日衆予算委 小川淳也議員パネル:2015勤労統計手法変更の経緯

中江総理秘書官が厚労省に「問題意識」を伝えて検討会が立ち上がり、その検討会で従来通りの総入れ替え方式が適当との素案が出来たのに、真逆の結論になった経緯が書かれています。メール①、②では、素案が出来た後に、官邸と厚労省がやり取りをしていたことが明らかになっています。その後、総理秘書官が厚労省と会ってから、総入れ替え方式で決めず部分入替方式も含めて引き続き検討にすべき、と座長に伝えたメール③が出されている、ということです。

しかし、政府側は、この時系列自体を一部否定して、メール等には出ていないが、秘書官と会う前に、部分入替方式も検討するよう指示を出したと言っています。また、官邸の意向で厚労省の検討を変えてはいない、総理秘書官が厚労省に意見を言ったのは、公務として個人的見解を伝えただけ、という方向で答弁しました。

現時点では、メールという証拠のある野党に対して、秘書官・厚労省官僚の口頭の答弁だけ、という政府側の方が、分が悪いと思います。また、総理秘書官は個人的見解伝えただけで総理の意向とは関係ない、というのは、あまり説得力があるとも思えません。

本ブログで繰り返して来た通り、問題の本質は、統計について政治的介入があったかどうか、ということです。

私は、総理秘書官が問題意識を伝えて厚労省が検討会を立ち上げたところまでは、「政治的介入」ではなくて、「政府主導」の政策変更と言っても構わないと思います。政治による全体の方向づけの上で、専門的に検討させるだけですから。しかし、専門家が検討会で議論して、ほぼまとまったところで、総理秘書官という立場の人間が結論自体を変えた、という経緯は、「政治介入」と言われても仕方がないと思います。いったん専門家に検討させるとした後に、その検討の中身を政治的に変えたからです。

この問題についての質疑は、政府をきちんと追及していたと思います。続けて、枝野幸男議員による、沖縄の県民投票の結果を踏まえての質問も、原発事故後の賠償についての東電の姿勢についての質問も、あまり効果的でもないけれど、まあ野党質問はこんなものかな、という感じでした。 

 マクロ経済の素人談義を延々と・・・

問題はその後です。枝野議員が、マクロ経済について自説をとうとうと披露していたのが、なんとも解せません。パネルをやたらに沢山持ち込んで、戦後経済全体についての認識がどうか、という話を延々としているのですが、はっきり言って、政府には痛くもかゆくもない話ばかりでした。

枝野氏の経済についての認識も、相変わらずちょっとずれているし、視野も狭いものでした。テレビ入りの予算委員会なので、政党としての認識を広く有権者に伝える、という意図だったのでしょうが、これではダメです。

有権者向けのアピールということで、野党の立場で良かったところを一つだけ挙げると、有効求人倍率の推移についてのグラフを示したものです。最近時々言われることですが、有効求人倍率については、安倍政権になって急に良くなったわけではなく、旧民主党政権時代から、全く同じトレンドで回復し続けている、という指摘をしていました。これは野党のアピールとしては言っても良い話ですし、見ている国民もなるほどと思うでしょう。

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2019年2月25日 枝野幸男議員パネル 有効求人倍率の推移

その後がいけません。戦後のGDPと消費や輸出の推移を示して、GDPと消費はほぼ同じ動きを示しているじゃないか、と言ってから、

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2019年2月25日衆予算委 枝野幸男議員パネル 消費の推移

 GDPの構成比で一番大きいのは消費だ、だから消費を上げるのが一番大事だ、と結論づけていました。

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2019年2月25日衆予算委 枝野幸男議員パネル:GDP構成比の推移

 そのうえで、年間の収入や所得が低い世帯ほど消費性向は高いという話をして、 

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2019年2月25日衆予算委 枝野幸男議員パネル:収入階級別の消費性向

 だから結局、低所得者の消費を増やすのが一番大事だ、という話をしたかったようです。

以上は随分はしょって、要点をまとめた形です。実際はもっと散漫な話で、視聴者には退屈だったでしょう。

さて、GDPを構成する消費、投資、政府支出、輸出入のうち、消費が一番構成比が大きいから、消費を増やすのが一番大事だ、というのが、視野が狭すぎます。少なくともマクロ経済については、構成比だけでなく、GDPの成長率にそれぞれの項目がどれくらい働いたか、その寄与度をみるべきです。全体の構成比は小さくとも、輸出入、投資が主導で消費が動くことはもちろんあるわけで、経済全体を活性化させるために消費「だけ」を見るのは変です。

参考までに、21世紀になってから最近までの、消費、投資、政府支出、輸出入の寄与度は、以下のように推移しています(四半期ベースですが)。消費が常に一番大きな寄与をしているわけではもちろんなくて、どの項目の寄与度もけっこう変動が大きいことが分かります。

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2017年度年次経済財報告 実質GDP成長率とその寄与度(四半期)

枝野氏の質問は、マクロ経済についての講義の後、幼児教育無償化に質問をつなげてはいました。年収約600万円以上の世帯について無償化する財源で、保育士給与を増やして待機児童対策にあてるべきだ、その方が低所得者の消費刺激になる、ということでした。無償化よりは待機児童対策、という声はそれなりに強いのは確かです。しかし、保育士の給料を上げろというのは、公立保育所の公務員の給与を上げろということでしょうから、やはり目線が自治労向けに見えます。それも含めて、視野が狭く、広く国民にアピールする内容ではありませんでした。

玉木氏は実質賃金を取り上げて、このところ、実質賃金が2016年以外全てマイナスだ、ということを言っていました。続けて、総理はいつも雇用を取り上げるが、実質賃金は年金の計算の根拠になる、だから大事だ、という主張をしていました。

実質賃金下げて企業業績を上げるのがアベノミクスの目的で、それは成功している、だが、人を大切にする資本主義、企業よりも働く人が将来の展望を持てる経済政策にすべき、ということを言っていました。そこから、基礎年金増やすべき、年金額確保するためには一体改革(=消費税増税)に賛成だ、という話をしていました。

このあたりも、党の立場のアピールということなんでしょうが、やっぱりマクロ経済について、つまみ食い的な言いっぱなしで、政府は痛くもかゆくもありません。言ってることに新味もないし、アピールとしても失敗です。

2014年消費増税の誤りと今年10月の消費増税

枝野氏と玉木氏のマクロ経済についての認識で一番まずいのは、2014年の消費税増税がどれほど日本経済に悪影響を与えたのか、全くふれていない、むしろ意図的に避けていることです。さっきのGDPへの寄与度のグラフでも、2014年に消費が極端に大きなマイナスの寄与度になっているのが分かります。

政府にマクロ経済政策での問題点を追及するなら、アベノミクスの金融緩和がどうこうではありません。何と言っても、2014年の消費税増税が大間違いだったことを認めて、今年秋の消費税増税を撤回しろ、と言うべきです。安倍政権も、ここを突かれるのが一番痛いはずです。

消費税増税という論点について考えれば、立憲民主党と国民民主党の代表二人がそろいもそろって、どうでもいいようなマクロ経済の素人談義を延々とテレビ入り審議でやっていた裏の意図が見える気がします。旧民主党の議員達は、一体改革で消費税増税を決めたことを出来るだけ触れたくないのでしょう。玉木氏はひとこと「一体改革に賛成」という言い方をしました。逃げずに言ってますというアピールかもしれませんが、ほとんどの有権者にはその意味が分からない言い方です。やっぱり逃げています。まさか今、「消費税増税すべきだ」なんて、テレビカメラの前で言えないとは分かっていて、「一体改革に賛成」と表現しています。

これでは安倍政権は全く怖くありません。立憲民主党は、ブーメランと言われようが何だろうが消費税増税に反対と言ったのだから、そこは徹底して増税凍結・撤回を言うべきです。ところが全然ぬるい経済談義で逃げて、旧民主党とともに消費増税を決めた安倍自民党をわざわざ助けています。自分達が批判されて傷を負うことも恐れずに、旧民主党時代の間違いを謝罪したうえで、安倍自民党にも消費増税決定についての謝罪を要求し、今年10月の消費増税を撤回すべきではないかと質問する。そのための経済データを山ほど準備する。そうしないところが全くダメな質疑でした。

産経新聞の田村秀男氏は、今国会が「消費税国会」にならなかったことが不満だ、としてこう言っています。

「今通常国会は10月からの消費税率引き上げをめぐる「消費税国会」になるどころか、小物官僚の平謝りで終始するだけの厚生労働省不正統計問題ばかりに血道を上げる。このまま増税すれば、外需の減退と重なって経済にはデフレ圧力が加わり、国民全体の生活を追いつめかねないという大局そっちのけだ。政治をチェックするはずのメディアの大多数が増税容認なのだから、無理もない」

付け加えれば、与党も野党も増税容認です。本来、維新あたりが「ゆ党」の良さを発揮して、ガンガン消費増税反対で徹底した論陣を張れば良いのですが。このうえは、国民が政治家・政党をよく監視して、地元の議員には厳しい声を上げて、消費増税を経済の最大の争点として投票するしかなさそうです。
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