日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

大災害から復興の時こそ、大改革を!:復興庁の廃止と新復興庁創設に向けて

今日の要点

・2年後に復興庁が廃止されるので、与党が「新復興庁」の議論を開始。東日本大震災から10年の今年、復興事業で起きた問題を振り返ることが必要です。

・予算の目的外の流用、巨額の無駄な基金、公共事業での談合等、復興事業で起きた問題の再発防止をするべきです。

・被災地での競争を促す形での特区導入や、復興特区法の「条例による法律の上書き権」の要件緩和で、国主導ではなく被災地主導の復興を実現すべきです。

東日本大震災から10年。「新復興庁」を作る前に、復興事業の問題点を振り返るべき。

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市で、2月3日に行われた市長選。現職がわずか5票差で勝ったことが話題になりました。

同市では、1600億円もかけて、被災地で最大規模の土地区画整理事業を続けています。商業施設も図書館も出来ましたが、かさ上げして出来た「市街地」の66%が空き地になっています。空き地面積は東京ドーム60個以上の広さのようです。

土地の引き渡しを待てない地権者が、別の場所で住まいを再建しているため、利用予定のない土地がこれだけあります。現職がぎりぎり当選だったのも、こうした復興事業への市民の疑問や不満があったのでしょう。

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復興事業を所管するのは、国の復興庁です。復興庁は2年後には廃止が決まっています。では、今続いている復興事業をどうするか?新規の事業はどうするか?

政府・与党は、復興庁がなくなった後には、東北の復興に限らず、将来の大災害に備える「新復興庁」を作ろうとしています。

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新復興庁の議論をするなら、まずは、これまでの復興事業の良かった点、悪かった点をちゃんと振り返るべきです。たとえば、最初に紹介した陸前高田市の「かさ上げ事業」は、1000億円以上をかけて、未だに3分の2が空き地だというのですから、現状では端的に言って失敗でしょう。人口が戻るかも含めた将来予測が甘すぎた、あるいは、事業が自己目的化していた疑いさえあります。かねてから批判されてきた事業でしたが。

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予算の目的外の流用

復興事業の問題点を、いくつか振り返ってみます。

まず、予算の目的外の流用。これは震災から間もなく、早くも大問題となりました。会計検査院によれば、2012年度まで2年間に予算計上された1401事業で、326件、つまり全体の23%が復興と無関係の事業でした。厚生労働省の求職者支援制度が8割近い予算を被災3県以外で使ったり、水産庁の鯨類研究所への支出がされていたりした問題です。結局、1000億円超が国庫に返納されました。

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復興予算の流用は、現在進行形の問題です。

日経が昨年、東日本大震災の復興予算のうち、地方自治体の支出額の13%強が被災地以外で使われていたことを報じました。防災対策など全国で活用できる制度設計にしたことで、復旧復興に直接関係のない支出につながった形です。

 

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政府主導の復興にすると、どの役所も、火事場泥棒のように、便乗して予算を要求してきます。こうした問題を防ぐためには、政府の役所の言うことではなく、被災地の言うことが最優先される仕組みが必要です。

巨額の無駄な基金

その後も、復興事業で基金として積まれた予算が十分使われていない、として、問題になりました。

会計検査院は2017年に、政府が「集中復興期間」と位置付けた11~15年度の5年間の復興事業の実施状況について、全体を総括した報告を行いました。

それによると、政府が2015年度までの5年間に計上した東日本大震災の復興予算33兆4922億円のうち、計5兆54億円(約15%)が使われていませんでした。防潮堤整備や区画整理の遅れなどが主な原因です。内訳は、事業の着工遅れなどによる繰越額が約1兆4000億円、15年度末時点で使途がない状態になっている「不用額」が約5000億円。

更に、国から自治体への交付金補助金のうち、約3兆円が基金として積み立てられたままでした。

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繰越も不用も減らすべきですが、特に、基金3兆円というのは大きな問題です。リーマンショック以降、国の予算で安易に基金が積まれていることが、政府全体の問題となってきました。復興事業では特に金額が大きくなっています。基金の形をとると、複数年度で柔軟な執行も出来るメリットがある一方、計画的な執行が出来ていなくともチェックが甘くなるデメリットがあります。基金の造成という方法については、見直しが必要です。

公共事業での談合

復興事業で、談合事件が相次いだことも重大な問題です。

東北農政局発注の土木工事では、ゼネコン十数社が関わっていました。

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東北地方の高速道路復旧工事については、業界最大手のNIPPOなど道路舗装会社10社が談合。ゼネコン大手関連会社も含みます。

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また、農業用ハウスの建設工事では、井関農機などの農業機器メーカー5社が談合を行っていました。

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ゼネコンの談合については、復興需要での談合を契機に、業界の談合体質が復活・強化され、これが昨年のリニア入札談合にもつながった、との批判もあります。

大災害後の巨額の復興事業によって、業界全体が談合体質に変わってしまうならば、復興を含めたあらゆる政府事業に悪影響を及ぼします。

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復興を被災地主導にする改革と、被災地の中で競争を促す改革を!

以上のように、東日本大震災の復興事業では、予算の目的外流用、基金制度の濫用、相次ぐ談合、等が問題になりました。政府・与党は、復興・再生期間が終わる2020年末に向けて、新復興庁を作ろうとしていますが、復興事業でのこれまでの教訓を生かす必要があります。

第一に、復興事業は政府主導でなく、被災地の自治体主導とすべきです。政府主導とすると、政府の省庁が復興に無関係な事業まで予算要求してしまい、目的外流用が起きるからです。目的外の流用というか、最初から関係ない事業を、タイトルだけ「復興予算」として予算化してしまう、と言った方が正確でしょう。

被災地主導で、被災地が最初から最後まで復興事業を行うならば、身の丈にあった現実的な事業が、被災地のためだけに行われるでしょう。

被災自治体には財源がないので、政府のひも付きにならないよう、出来るだけ目的を特定しない交付金を単年度ごとに交付する形をとり、あとは自治体の意思決定・裁量に任せるべきです。もちろん、無駄遣いが起きないよう、情報公開だけは被災自治体に徹底させる必要があります。また、基金制度が濫用されたことに鑑み、原則として基金は使わずに単年度ごとの交付金支出にするべきでしょう。

第二に、自治体そのものが、地元の古い既得権者等で牛耳られていたのでは、政府がいくら予算をつけたところで、被災地の発展は望めません。

復興事業で談合が相次いだのは、全国規模で活動する大手ゼネコンや農機メーカーによるものでしたが、これが地元企業で行われても不思議はありません。官製談合のように、自治体主導の場合もありえます。

こうした問題を防ぐためには、被災地の復興の際に、同時に競争を促進する改革も必要です。たとえば、農地の株式会社所有を認める特区制度の導入等、被災地については特区の活用を特に柔軟に認める形で、被災地の経済・社会を活性化させる必要があります。

また、復興特区法に定められた、「条例による法律の上書き権」につき、要件を抜本的に緩和すべきです。特に、被災地の復興に必要な、土地利用や農業に関する規制については、原則として被災地自治体が上書きする権限を認めるべきです。

新復興庁が、こうした「復興改革」の司令塔となることが出来れば、東北の復興にも、今後の大災害からの復興にも、大きく貢献できるでしょう。過去の失敗を踏まえた、こうした新たな議論がなされるかどうか、政府・与党の議論を厳しく見守っていきましょう。