日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

所得再分配のため、米国民主党議員は大金持ちに課税しろと言い、日本の旧民主党議員は消費税率を上げろと言う。

今日の要点

アメリカ民主党の急進左派の議員達は、富裕層への課税強化を訴えています。

・これに対し、日本の旧民主党系の議員達は、所得再分配のための消費税増税にこだわり続けています。逆進性の高い消費税は所得再分配には適しません。

自民党を倒す大義の一つは、消費税の際限ない引き上げを止めて、行革による歳出削減を徹底することです。所得再分配は、金融所得課税強化等で行うべきです。

アメリカ民主党の急進左派の提案:大金持ちに課税せよ。

アメリカで昨年下院議員に選出された29歳のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏は、政界でもメディアでも注目を浴び続けています。フィナンシャルタイムズは、「左右両派から批判を浴びているが、同氏がこれから民主党に大きな影響を及ぼすことは確実だ」としています。

www.nikkei.com

トランプの支持者の中にさえ、彼女を賞賛する人達がいるとか。

プエルトコリコ移民の女性が、ニューヨークでバーテンダーの仕事しながら選挙戦やって、史上最年少当選で民主党の重鎮を破ったという破天荒な物語。就任演説で既得権者(エスタブリッシュメント)を批判したトランプの支持者には、アピールするのでしょう。彼女はトランプをぼろくそに批判しているのですが。

www.youtube.comそのオカシオコルテス議員が主張しているのが、年収1000万ドル(約11億円)超の富裕層の最高限界税率を70%にする、というものです。アメリカ国民の59%が支持しているとのことです。

m.newsweekjapan.jp

もう一つ、民主党の別の女性議員の主張を紹介します。ハーヴァード・ロースクールの教授出身の上院議員で、既に来年の大統領選出馬を表明した、エリザベス・ウォーレンの提案です。彼女は、資産額が5000万ドル(約55億円)以上の世帯の資産に毎年2~3%の税を課す法案を検討しています。

世論調査によると、ウォーレン氏の資産税への支持は全体で61%。民主党支持者は74%で、共和党支持者でも50%。一方、トランプ政権の税制改革への支持は全体で42%にとどまるそうです。

www.nikkei.com

日経はこれらの動きを、『「反資本主義」の波 脅威に』と言っているのですが、私はそうは思いません。

オカシオコルテスの提案は、年収1000万ドル以上、11億円以上の超高額所得者向きのものです。対象はごく限られています。また、税法に色々と抜け道があることを考えれば、70%という高税率は案外妥当かもしれません。かつての90%の最高限界税率時代も、実際にはそれほど負担していなかったとも言われています。

「抜け道」を想定しているのかどうか知りませんが、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、こうした富裕層を対象とした増税は、税収が有用だと思われるところに使われるなら問題ない、と発言しています。真意は分かりませんが、 世論の空気をよく読んでいますね。

www.msn.com

ウォーレンの提案はストックに対する課税で、フローの経済活動への影響を小さくしようという意図は感じられます。著書を読んでみると、彼女は、市場経済をまともに機能させるために独禁法等の規制強化をすべき、という立場のようです。税制も含めて、おおむね「機会の」平等が失われているのを是正すべきだ、という主張をしています。 1990年代には一時共和党にいたということですし、基本的には「反資本主義」の人ではありません。(彼女の、アメリカ破産法の役割等に関する素晴らしい研究については、いずれ機会があったら紹介したいと思います。)

この戦いはわたしたちの戦いだ―アメリカの中間層を救う闘争―: アメリカの中間層を救う闘争

この戦いはわたしたちの戦いだ―アメリカの中間層を救う闘争―: アメリカの中間層を救う闘争

 

 日本の旧民主党議員達は、なぜか所得再分配のために消費税増税・・・

日本の野党はどうでしょうか。民主党政権時代には、何をやったでしょうか。所得再分配社会保障の財源について何と言っているでしょうか。

先日、安倍総理民主党政権を「悪夢」と呼んで、立憲民主党の枝野代表が反論しています。

news.tv-asahi.co.jp

安倍総理の「釣り」発言に早速反応しています。確かに、民主党政権には良い面がいくつもありました。枝野氏が反論するのは当然です。しかし、民主党政権の何がいけなかったのか、十分な総括をしないと、国民には響かないでしょう。

枝野氏は、下野直後に、こんな反省の弁を述べています。

「第一次民主党政権の最大の反省・教訓のひとつは、政権が代わればすべてがすぐに劇的に良くなるという過大な期待を、国民の皆さんに与えてしまったことです」

と言っていますが、もちろん問題はそんなところにはありません。何と言っても、国民を裏切って、しかも自民党と談合して、消費税増税を決めたことについて、国民に謝罪をすべきです。

ところが枝野氏は同じ文章で、

潜在的需要の大きい社会保障分野を安定的な財源で拡充し、さらに民間の活力を引き出すところまでつなげていく手段として、消費増税は、中長期的には経済の活性化に資すると考えています」

と言っています。反省の色はゼロ。下野してもやはり所得再分配社会保障の財源は消費税です。

www.huffingtonpost.jp

言うまでもなく、消費税は低所得者に打撃が大きく、逆進性が強い税制なので、所得再分配には向きません。にもかかわらず、旧民主党議員達は、この税金による所得再分配う主張にこだわり続けています。

民進党時代には、今は立憲民主党の枝野氏も、今は国民民主党の前原氏も、以下のアエラの記事の写真のように、お手手つないで、「オール・フォー・オール」という意味不明な「消費税増税万歳」政策を唱えていました。この意味不明政策は、どうやら国民民主党には引き継がれているようですし、枝野氏も同様に意味不明な「エダノミクス」で、消費増税への誠に奇妙な執着を見せていました。

dot.asahi.com

日本でも所得再分配所得税によるべき。特に金融所得課税の強化。

参議院選と、来るべき衆院選に向けて、立憲民主党の枝野氏も、自由党の小沢氏も、自民党を倒すんだ、ということを明言し始めています。もちろん、その意気でないと困ります。

しかし、大事なのは、政権を目指す大義です。旧民主党政権の当初の志はまともな部分がありました。少なくとも、まずは徹底した身を切る改革と行革で財源を作るんだ、地方分権もやるんだ、という目標ははっきりしていました。実際に政権を担当したら、経験が少なすぎてうまくいきませんでした。そこは反省して、うまくいかないからと安易に消費増税に飛びついたことを真摯に謝罪して、もう二度と自民党と消費増税で談合などしません、と国民に約束して、そのうえで政権獲得に挑むべきです。

では、所得再分配社会保障の安定財源はどこから出すのか?私は、国と地方の徹底した行革で十分生み出せると思います。仮に行革で足りない部分が出たら、どうしてもどこかで増税する必要が生じたら、まずは所得税による再分配を行うべきです。

特に、金融所得課税の税率引き上げです。株式譲渡益や配当については、他の所得からの分離課税となっていて、低税率が適用されます。2014年から、従来の10%を20%に上げる改正がなされたとは言え、下のグラフのように、合計所得1億円超では、合計所得が多ければ多いほど税率が低い状態が続いています。

f:id:kaikakujapan:20190212022446j:plain

所得税の負担構造(出所:財務省

これについて、民進党時代の「民進党税制改革の基本構想」では、金融所得の税率20%を25%に引き上げる、という提言をしていました。

www.minshin.or.jp

これは多分、財務省OBの森信茂樹氏の提案にならったものでしょう。森信氏も、昨年末に、同じことを主張していました。

www.sankeibiz.jp

しかし、所得再分配を行うべきということなら、富裕層への課税はもっと強化すべきです。オカシオコルテスばりに、金融所得について、1000万ドル以上、つまり所得10億円以上の最高限界税率を、70%とは言いません、40%にする、というくらいのメッセージを出してはどうでしょうか。現行の2倍です。

貯蓄から投資へ資金を動かすためにずっと分離課税で低税率でやってきても、大した効果は上がっていません。また、「そんな増税をしたら資本逃避が生じる」という批判は当然ですが、アメリカでは、富裕層への増税が主張され始めています。今のところは民主党の「急進左派」の主張ですが、オカシオコルテス案もウォーレン案も、米国民の6割が支持しているとなれば、来年の大統領選次第で、今後の動きは分かりません。

旧民主党民進党)の各政党に言えることは、税制について、財務省の言いなりになっている部分が多すぎる、ということです。消費増税は言うに及ばず、金融所得課税についても、再分配のためのせっかくの良い提案なのに、財務省OBの「先生」の言う通りの小幅なもので、国民には全く伝わっていません。政策の是非はおくとして、どんな無茶ぶりでも軽減税率を政治の力で押し通した自民党公明党を見習ったらどうかと思います。

何より、アメリカの「急進左派」(ということになっている)政治家達の言う、一見「反資本主義的」にさえ見える富裕層課税、ここに世界の動きを、時代の流れを読むべきです。

民主党政権の最大の失敗は、役人との距離感を間違ったことです。最初は居丈高に官僚に対して威張り散らして、役人はどけ、俺たちがやる、と政治家がやたらに細かい事業仕分けまでやって、うまくいかないとなったら一転して役所に丸投げ。丸投げされた方は、ああそうですか、と消費税の税率をわずか3年間で倍にするような無茶苦茶な案を出してきて、それを自民・公明といっしょになって、唯々諾々と決めてしまう。

そんなやり方に比べれば、アメリカ民主党の「急進左派」の一見未熟で過激な提案の方がはるかに立派に見えますし、現にアメリカ国民の心をとらえています。ワシントンDCでの政治経験は浅いながら、中産階級が本当に破壊されている現実を見据えて、国民生活を真摯に思って出された提案は、侮るべきではありません。日本の再分配政策に生かせないかどうか、真面目に検討すべきです。