日本の改革

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昨年6月の名目賃金の伸び率は、3.3%⇒2.8%?1.4%?:最も深刻な不正は、3.3%と2.8%の違いにある。

今日の要点

厚労省の統計不正の問題、厚労省自身が設置した特別監察委員会ではなく、より独立性の高い委員会でやるべきですし、その動きがあるようです。

・昨日の衆議院予算委員会、再び、勤労統計での議論。昨年6月の名目賃金の伸び率を、厚労省は3.3%から2.8%に修正しましたが、国民民主党は、1.4%にすべきだと主張しています。

・1.4%にこだわると、政府は逃げ切れるでしょう。最も深刻なのは、3.3%と2.8%の違い(秘密裏に2018年からのみ補正がなされた結果)です。数字のズレの大きさよりも、国民の統計不信の大きさこそが問題です。

独立性の高い第三者委員会が必要。

衆議院予算委員会では、統計不正についての議論が続く中、2018年度第2次補正予算案は5日夜の衆院本会議で可決しました。与野党の国対の間で、政府・与党が統計不正についてある程度対応する一方、野党は補正予算について日程闘争はしない、という取引がもとからあったようです。

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上の日経の記事によると、自民党森山裕国会対策委員長が1月31日、立憲民主党辻元清美国対委員長と会談。不適切統計や賃金データの問題について

(1)衆院予算委で首相出席の集中審議を開く(2)18年実質賃金の速報値を予算委で報告する(3)影響が及ぶ経済指標の全体像を早急に報告する(4)厚労省の特別監察委員会の独立性を十分に担保する

という合意をしたそうです。

立民も議席が少ないとはいえ、案外ヌルい合意です。(4)に至っては、「厚労省の」特別監察委員会の独立性を担保、ということで、調査は相変わらず厚労省の選ぶ委員会にやらせる、というのだから、話になりません。辻元清美氏は、政府・与党追及の姿勢が全然足りません。委員会での質問では舌鋒鋭い彼女も、国対委員長としては借りてきた猫ですね。

では、せめて上の与野党合意は守られているのでしょうか。昨日の予算委員会では、呆れかえった場面がありました。

立憲民主党西村智奈美議員の質問のとき、びっくりしたのは、一昨日の予算委員会参考人として出席していた、樋口美雄厚労省特別監察委員会委員長が、出席していなかったことです。

樋口委員長が欠席した理由には、もっと驚きました。本人が、「自分は、『独立行政法人・労働政策研究研修機構の理事長』としてなら出席するが、『特別監察委員会の委員長』として答弁を求められるなら、出ない」と言っているから、ということでした。

この人、何を考えているんでしょうか。一昨日の答弁拒否までは、まだ同情できました。「今日(一昨日)は独法の理事長として出席した、監察委員会の委員長としては答弁できない」と言ったときまでは、「この人の本業は研究者だし、政府にこんな風に言わされて気の毒だな」と思いましたが、欠席までして、同じ理由を持ち出して、御本人もひょっとしたらおかしいのではないでしょうか。

少なくとも、本人の発言として、国会に説明しないなどと堂々と説明している人間に、監察委員会の委員長などやらせるべきではありません。第三者委員会は、厚労省の外に作るべきです。

と思っていたら、直近の朝日の報道では、総務省に「事実解明と再発防止策検討のための新たな組織」を設置するよう、厚生労働省総務省が準備に入ったそうです。

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これが事実なら、現在の厚労の監査委員会の調査など意味がなくなるし、その委員会でやると言い続けてきた根本厚労大臣はクビにすべきでしょう。もちろん、昨日までやはり厚労省の委員会でやると言っていた安倍総理の責任も問われます。

昨年6月の名目賃金の伸び率は、3.3%⇒2.8%?1.4%?国民民主党の玉木氏の質問

昨日は、国民民主党玉木雄一郎代表の質問でした。統計不正について、玉木氏の言いたいことは、パネルにまとめられています。ちなみに、玉木氏の作るパネル、いつも本当に分かりやすいです。玉木氏の指示も的確なのでしょうが、秘書さんの努力の賜物ですね。昔は相当のブラック事務所だったと聞きましたが、働き方改革をしつつ、このクオリティにしてほしいものです。

 私は玉木氏を支持していませんが、公平に言って、パネルだけでなく、質問の組み立ても、質問の仕方も、本当に分かりやすくて上手かったです。

まず、野党がこだわる実質賃金ではなく、とりあえず、名目賃金に焦点を絞りました。安倍政権は名目賃金の伸びを喧伝することがあるので、これはこれで政府批判には効果的です。さらに、去年1年間の毎月の賃金、という時系列のデータではなく、極端に伸びが高かった6月のデータだけに絞ったのも、うまいやり方でした。

で、肝心の質問の骨子は、2018年6月の名目賃金の伸び率について、

厚労省は、3.3%と公表していたが、2.8%と修正した。だが、本当は、1.4%とすべきだ。2.8%というのは、事業所を入れ替えた数字だから、同じ事業所で調査を続けたときの1.4%が正しい。これは、総務省統計委員会の意見でもあり、こちらが客観的・中立的だ」

というものです。

正直、言っていること自体に新味はありません。朝日のこの記事と同じことですね。

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厚労省が、3.3%と公表していたのを、2.8%と修正したのは、(賃金の高い)大規模事業所の割合を2018年だけ補正し、2017年までは補正しなかったからです。一方、1.4%という数字は、事業所の入れ替えを従来通りの方法でやれば3.3%、入替方法を変えた現在の方法では1.4%となります。玉木氏は、大規模事業所の補正のやり方の不正はほぼ完全にスルー。つまり、3.3%⇒2.8%の問題は無視して、3.3%⇒1.4%の問題を集中的に聞いていました。玉木氏だけではなく、後に続いた国民民主党の山井議員も、同じ方向で聞いていました。

玉木氏等が、「1.4%」を重視する理由は以下の通りです。

総務省(統計委員会)も、厚労省も、事業所入替の方法は従来通りで良いと言っていたのに、財務大臣が見直しを要求してから、急にやり方が変わった。経緯から言って、政権がGDP600兆円という高すぎるハードルをクリアするために、統計を政治的に歪めようとした結果ではないか。

②賃金伸び率については、総務省が、同じ事業所について調べたデータによるべき、と言っている。専門的・中立的な立場の提言が、やはり政治的に歪められた。

総務省と(麻生発言以降の)厚労省で見解が異なり、結局は新たな調査方法による「公表値」と「参考値」が並立している。国民、研究者、海外に、極めて分かりにくい。政府として「賃金の伸び率」とすべき数字を一つ挙げるべきで、それは、1.4%であるべきだ。

政治的な意図としては、3.3%⇒1.4%の方が、何といっても、政府公表の数字とギャップが大きいし、名目賃金がこれだけ低ければ実質賃金もマイナスとなり、アベノミクスの失敗と主張できるから、ということもあるでしょう。また、政府が野党の試算を認めた、というアピールも可能です。この点では、既に成功したとも言えるでしょう。

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最も深刻なのは、3.3%と2.8%の違い。数字のズレの大きさよりも、国民の統計不信の大きさこそが問題。

 野党としての政治的意図はどうあれ、上記の①、②、③は、どれも、正当な疑問であり、理解できる話です。私も、政治的中立性が害されることが最大の問題だと思うので、①、②の論点は重要だと思います。③の、国民への分かりやすさという視点も、確かに大事だと思います。

あと、玉木氏は、単なる平均値ではなく、調査した個々の元データも示すべきとの提言をしていました。プライバシーさえ保障されるなら、これには大賛成です。

しかし、野党が本当にこだわって追及すべきは、3.3%という数字を2.8%に変えることになった不正です。大規模事業所の割合を2018年だけ補正し、2017年までは補正しないというやり口は、明らかに2018年の伸び率を高く見せるための不正です。統計の政治的中立性の侵害という点では、一番ひどいもので、何の正当化根拠もありません。だからこそ、政府もすぐに再集計した後の修正値を発表しました。だが、なぜそのような不正が行われたか、全く分かっていません。

特に、一昨日の質疑で、安倍総理も茂木大臣も、この件についての立憲民主党の長妻氏の質問に、全く答弁にもならないデタラメな答えでごまかそうとしていました。あんな訳の分からないごまかしで逃げようというのですから、政府が追及されて一番痛いのは、この論点のはずです。長妻氏が、この点もきちんと聞いていたのはさすがの見識でした。しかし、総理達のデタラメ答弁に、厳しく突っ込まなかったのが残念です。あそこは大暴れすべきでした(文字通りの暴力じゃないですよ)。

数字のギャップだけで言えば、3.3%が2.8%になった問題にこだわるより、3.3%が1.4%になった問題を追及する方が、最初は関心はひけるでしょう。だから、とにかく国民に関心を持ってもらうための手段としては、全否定しません。また、2016年からの統計見直しについては、本件も含めて色々おかしな話も出てきそうです。

ただ、先の①「GDP600兆円達成のために政府全体で統計を歪めようとした、勤労統計はその一つだ」というのは、現状では、状況証拠のみです。その線で更に調べるべきとは思いますが。②の「総務省が賃金の伸び率は共同事業所によるべき」と言ったことは、それよりは説得力があります。しかし、調査する事業所の入替方法自体は、それこそ統計学上の議論になるところではあります。総務省が完全に正しいと言えるか、という議論になったら、学問的な議論で相対化されて、政府に逃げられる可能性があります。③国民・研究者等への分かりやすさという点では、どちらか片方なら良いわけでしょうから、政府に突っ張られたら終わりでしょう。

というわけで、やはり、一番大きいのは、2018年だけ高めの数字が出るよう補正して、2017年は低めの数字が出るよう補正しなかった、という不正です。この、あまりに露骨な、ほとんどやり方自体が証拠にさえ見えるような不正こそが、国民の統計への信頼を失墜させる重大な問題です。野党は、この不正の実態解明でこそ政府を追及すべきだ、とあらためて強調したいところです。