日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

INF条約の廃棄を機に、政府は「核の傘」に関する日米拡大抑止協議(EDD)の議論を国民に公開せよ。

今日の要点

・米ロ間のINF条約の廃棄後、周辺国の軍拡競争が激化する中での安全保障政策につき、日本政府は国民に具体的な説明をすべきです。

・日本政府は、アメリカの「核の傘」に関する日米協議(日米拡大抑止協議、EDD)での議論の概略を国民に公開し、核抑止政策への国民の主体的な参加を認めるべきです。

INF条約の廃棄は必要。周辺での軍拡競争にどう対抗するか、政府は国民に具体的な説明が必要。

アメリカがロシアに、INF条約(中距離核戦力廃棄条約)の破棄を正式に通告しました。

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日経は、この条約を「老朽化したINF条約」と的確に表現しました。 もともと30年以上前に出来た条約です。中国等の核ミサイル開発が進んだ今、米ロだけの条約では、特に日本にとっての有用性は疑問です。また、北朝鮮は、長距離ミサイルを(ロフテッド発射によって)中距離ミサイルとしても使えることを示しました。米ロ間だけで、中距離核戦力のみを全廃する条約というのは、今では大した意味がありません。

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中国は、アメリカのINF条約離脱を批判しつつ、自分は軍縮に加わるつもりはない、と表明しています。結局、INF条約があってもなくても、米ロ中の核兵器等の開発競争が今後も進むことは避けられません。

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アメリカは中国を含む多国間での新たな軍縮協議をすべき、と言っていますが、そのためには、アメリカが中ロに対して優位に立つ必要があるでしょう。INF条約も、アメリカが軍拡とSDIでソ連を追い詰めたことで実現したのですから。

日本としては、アメリカが中国・ロシアとの軍拡競争で出来るだけ早く優位に立てるよう、経済的にも技術的にも支援すべきです。そして、日本が自らは核兵器を持たずに中国・ロシア・北朝鮮の核ミサイルから自国を守るために、独自のミサイル防衛システムの開発を急ぐべきです。

大事なことは、以上の政策について、国民に全て情報公開しつつ、国民の意見もパブリックコメント等で募りつつ、進めることです。国民主権の原理原則に忠実に決定した国防政策の方が、国の防衛力を一層強くするからです。

日本政府は、INF条約が果たした役割は大きい、アメリカが廃棄したのは理解するが、そうせざるを得なかった状況(中国等の核戦力増強)は望ましくない、中国等に、国際的な軍縮を呼びかけていく、としています。

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この表現だけでは、米ロ中を含む軍縮の枠組みを作るまでには、当面は熾烈な軍拡競争が避けられないという認識が伝わりません。政府も本当はそれを見越しているはずで、国民に率直に伝えないのはおかしいと思います。そして、その競争で日本がどう協力して、それが日本の安全にどうつながるのか、政府はこれから具体的に説明し、国民の理解を得るべきです。

日本政府は、アメリカの「核の傘」に関する日米協議(日米拡大抑止協議、EDD)での議論の概略を国民に公開し、核抑止政策への国民の参加を認めよ。

 そして、更に重要なのが、アメリカの「核の傘」は実際にどう働くのか、現在の「恐怖の均衡」の実態をきちんと国民に説明することです。中国や北朝鮮が核ミサイルで攻撃したとき、アメリカが本当に核ミサイルで反撃するのか、反撃するなら、どのように行うのか。こうした情報を出来る限り国民に公開し、そのうえで、重大な政治的決定の必要があることについては、国民に意思表示の機会を保障し、安全保障政策への関与を認めるべきです。

アメリカの「核の傘」、別の言い方では「拡大抑止」については、2010年から、日米の外務・防衛当局幹部による日米拡大抑止協議(EDD)が定期的に行われています。政府は、この協議が開催されるごとに、開催の事実だけを公表し、中身は非公開としています。この協議こそが、中ロの核ミサイルの脅威に対して、アメリカがどう日本を守っているのかについて方向性を示すものなのですから、日本国民はその内容を知る権利があります。

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1980年代、米ロ間のINF条約の制定にあたって、日本政府は重要な役割を果たしました。昨年末の、朝日のWEBRONZAの読み応えのある解説記事で紹介されています。当初の条約案では、ソ連中距離核兵器をヨーロッパではゼロ、アジアでは半分残す、という内容でした。これに日本政府が強く反対し、極秘交渉によって、アジアでもゼロにするようアメリカに認めさせました。日本外交の素晴らしい勝利であり、当時の中曽根元総理にも、担当した外交官達にも、感謝したい気持ちです。

一方、この交渉時での日本政府の認識については、現在は改める必要があります。当時の軍縮課長だった佐藤氏が、「核抑止力を国民に納得させる困難さ」について、WEBRONZAのインタビューで語っています。

「当時は西ドイツでも、西ドイツには届くが米国には届かないソ連のSS20から米国は守ってくれるのかと大問題になったが、西ドイツで米国の核を共有していることで何とかなった。だが日本はもっと平和主義ですから。武器を持たない方がいいんだという人すらたくさんいた時代ですから」

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このように、核兵器どころか、安全保障全般についてアレルギーのあった時代なので、政府は国民には一切知らせずに極秘に交渉を進め、昨年12月に初めて、当時の経緯を外交文書公開を通じて明らかにしました。

上の記事の中にありますが、当時の文書では、日米同盟の基礎は「米国の核抑止力に対する漠然とした信頼感」の上に立っているとしています。2019年の現在、日本国民は、「漠然とした信頼感」などで安心はしていません。中国と北朝鮮の核ミサイルが現実の脅威となって、Jアラートが実際に出され、弾道ミサイル攻撃を受けたときの行動を政府が広報し、地下鉄が止まるような過剰反応も起きる中で、今の日本国民は生活しています。1980年代に政府が心配したような「アレルギー」など、ありはしません。

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 政府は、核兵器に関する安全保障政策について、国民を子ども扱いにして情報を秘匿するのをやめるべきです。そして、軍事機密に関わらない限り、日米拡大抑止協議(EDD)の議論を公開し、まずはパブリックコメントを募るところから始めるべきです。