日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

野党は、統計不信では、実質賃金マイナスより、賃金の上振れを叩け。アベノミクスでは、実質賃金マイナスより、消費水準の低迷を叩け。

今日の要点

・統計不信の問題につき、野党は、実質賃金のマイナス(事業所の入れ替え)より、賃金の上振れ(復元処理)こそ追及すべきです。ここが統計不信の根源です。

・そもそも、マイナスの実質賃金よりも、2014年の消費税増税による消費の低迷こそが、安倍政権の経済運営の最大の問題です。野党は、今年10月の消費税増税撤回を一層強く求めるべきです。

野党は、統計不信の根本をこそ批判し、統計庁設置という対案を示せ。

今週の国会論戦は、公的統計が議論の焦点でした。野党は新たに、昨年の実質賃金が大半の月でマイナスのはずだ、と批判しています。

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厚労省の毎月勤労統計は、定期的に調査対象となる事業所を入れ替えて、実質賃金を調べています。これに対し、野党は、入れ替えをせずに固定した事業所で調べるべきだと主張しています。

政府の「入れ替えあり」だと、昨年の実質賃金は6か月間マイナス。ところが、野党の「入れ替えなし」だと、昨年の実質賃金は9か月間マイナス。「政府の、入れ替えありの数字だと、実質賃金がマイナスだった月が少なく見えるじゃないか!これは政府による偽装だ!」という批判のようです。

この批判は、効果的ではありません。まず、事業所の入れ替え自体は、統計の取り方として正当です。ずっと同じ事業所では、経営が悪くなったところから回答が得られなくなったりするので、定期的に入れ替える必要があるからです。また、入れ替えなしの数字も、参考値として公表していたようです。

第一、野党の言うように数字を変えても、それほど違いは出ません。実質賃金がマイナスの月はもともと6か月もあったので、朝日新聞さえ、「今後の政府の政策決定に影響を与えるとみる専門家は少ない」としています。↓朝日の見出しは大仰ですが、本文の後半はずっと冷静なトーンです。

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勤労統計について、野党が一番力を入れるべきは、やはり全数調査を抽出調査にしていた件での、その後の扱いです。長年勝手に抽出調査にしていたという問題も重大ですが、それ以上に、最大の問題は、

「2018年1月からのデータだけ、賃金が高くなるように復元処理して、それ以前のデータについては復元処理を行わず、しかもそれを公表していなかった」

という点です。このめちゃくちゃなやり方のせいで、2018年に急に平均賃金がアップしたように見えます。あまりに不自然な処理です。

労働経済学者の清家篤教授(慶應義塾大学)は、こう批判しています。
「そもそも抽出と復元は統計調査における表裏一体の作業で、知識のある人であれば怠るはずがない。政府の統計調査の専門家がそれをしなかったことは常識的には考えられない」
「優先すべきなのは実態の解明だ。特別監察委員会の報告書は出たが、専門家としてはあり得ないことをするに至った理由はまだ分からない」

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「専門家としてはあり得ないこと」を、誰が、なぜやったのか、やらせたのか。安倍政権の公文書や統計についてのこれまでのデタラメぶりを見ると、政治的意図を疑わざるを得ませんし、現に疑われています。

今回の一連の統計不信の急所はここです。野党は、なぜ復元処理を2018年からのみ行ったのか、それを公表しなかったのはなぜか、徹底的に調べて、政府を厳しく追及すべきです。財務省では、公文書改ざんを命じられた職員が自殺しました。あのような悲劇を、二度と繰り返してはなりません。

そして、公的統計への国民の信頼回復には、独立した統計庁の設置が必要です。野党は、さっきの問題を追及しつつ、統計庁を設置せよ、と、政府・与党に主張すべきです。

政府統計への政治家の介入こそが問題の根源。イギリスにならって、統計行政の独立性の確保を。 - 日本の改革

既に専門家が統計庁の必要性を主張し始めました。私が以前主張したように、イギリスの制度にならうべき、ということを、専門家として提言される方もいます。

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自民党の塩崎行革推進本部長は、統計行政の一元化に言及しましたが、問題の本質は「一元化」ではなく、「政府・政治からの独立性と専門性の確保」です。独立の統計庁がその答えのはずです。山本幸三氏がこれに反対したという報道もどこかにあったはずです(見つけたら紹介します)が、野党は、自民党とはっきり違いを出すためにも、独立した統計庁設置を訴えるべきです。

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安倍政権の経済政策、一番の問題は、消費増税による消費低迷。野党はそこを徹底して叩け。

また、野党は、安倍政権の経済政策を批判する際には、実質賃金よりも、消費にこそ、焦点をあてるべきです。

実質賃金がマイナスであることは、もちろん問題です。ただ、失業率(のデータをとりあえず信じるとして)が低下しているのは事実で、国民もこれは十分に体感しています。

そもそも、国民の暮らしぶりを見るときに、実質賃金だけ見るのでは不十分です。既に働いて給料をもらっている人についての数字で、働いていない人の生活が見えにくいからです。失業率が下がっているということは、今まで働いていなかった人も給料をもらえるようになったということです。仮に新規で働き始めた人の給料がまだ低く、以前から働いている人の給料が変わらなかったら、平均した賃金は下がるでしょう。しかし、国民全体で言えば、働いて(安いけれど)給料をもらえる人が増えたのなら、より豊かになったと言えるでしょう。

これに対し、消費は誰でもするものですから、賃金よりは、国民の暮らしぶりをよく反映する面があります。家計の消費の測り方も色々なようですが、ここでは、「消費水準指数」の変化を見てみます。

消費水準指数は、毎月の消費支出から、物価や、家計の人数、一か月の日数等の影響を取り除いた数字です。ある年(2015年)の平均を100として指数化したものです。これによって、消費の動きを把握できます(今年1月から、更に正確な指数になるようです)。この用語の正確な定義等は、以下にあります。

www.stat.go.jp

この消費水準指数の推移を、安倍政権発足直後の2013年1月から、最新データのある去年9月まで、四半期ベースでグラフにしたのが、下の図です。

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2014年の消費税増税で、消費はずっと低迷。

データ出所:総務省統計局

統計局ホームページ/家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)

一目瞭然で、2014年4月の消費税増税以降、昨年に至るまで、消費は低迷し続けています。2014年1~3月に駆け込み需要がありますが、その反動の落ち込みというだけでは説明できないほど、5年間近くにわたって、消費水準は低いままの状態です。消費税が、いかに持続的で深刻な打撃を与えるものかを、如実に表しています。

統計不信は前述のように政府を批判すべきですが、現状の政府公表の数字でさえ、安倍政権がいかに経済運営を誤っているかを示すことはできます。

安倍政権の経済政策で一番批判すべきは、金融緩和ではなくて、消費税増税です。次いで、効果の薄い既得権者向きの財政支出でしょう。

野党は、「アベノミクス偽装!」と言って政府批判をしていますが、この言い方では、あまり国民に響きません。いわゆるアベノミクスの中核はやはり金融緩和で、これは国民に馴染みが薄いからです。

一方で、消費税は、やはり政策としては特に関心の高いものです。その消費税を安倍総理は2014年に無理やり上げて大失敗、そして、その影響は今も続いている。この状況で更に増税など言語道断、という点をこそ、野党は徹底追及すべきです。