日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

消えた1400万人 — 郵政選挙と政権交代選挙で投票し、今は投票自体をしなくなった人達 —

今日の要点

・細野氏が自民二階派入り。自民は圧倒的一強ですが、支持団体の先細りで絶対得票率(得票数/全有権者数)は低下。低投票率と野党分裂に助けられています。

・2005年の郵政選挙で小泉自民に投票し、2009年の政権交代選挙で民主党に投票し、最近は衆院選で投票しなくなった人達がいます。その数、おそらく1400万人。

・この人達に投票所に行ってもらえるよう努力しないと、自民党政権は倒せません。改革を志す政党・政治家・国民は、この人達に目を向けるべきです。

細野氏が自民二階派入り。自民は圧倒的一強でも、実は支持団体は弱体化・絶対得票率は低下。

細野豪志議員が、自民党二階派入りの記者会見を行いました。旧民主党民進党で次代のリーダーとして期待を集めた細野氏まで自民党入りということで、朝日が叩いています。

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既に、他の旧民主党議員、それも大臣経験者等が、自民党に何人も入党しています。

立憲民主党は議員数の割に支持率がありますが、まだ政権交代は無理。それ以外の旧民主党に至っては総崩れとなって、大物議員が次々と白旗を上げて自民の軍門に下っています。小選挙区制は、二大政党制を作ることも目的としていたはずですが、どうしたことでしょう。政権交代は一回だけ、その後は自民が強くなるばかり。もう政党は自民党だけになるのでしょうか?

私は全くそうは思いません。以下、本節では、中北浩爾『自民党―「一強」の実像』第4章の分析にもとづいて見ていきます。

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自民党は、確かに2012年の「政権を取り戻す」選挙以降、「相対得票率」=「得票数/有効投票数」では、他党を圧倒する一強政党です。実際に投票した人の取り合いでは強いわけです。

一方、棄権者数も入れて考えた数字の、「絶対得票率」=「得票数/全有権者数」は、かつてよりもかなり減っています。衆議院では、1980~1990代初頭に30~35%だったのが、1990代初頭からは通常25%程度です。自民党を支持する旧来型の各種団体への加入率が下がってきたからです。

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日本の有権者の団体加入状況( 水島治郎「ポピュリズムに揺れる世界(下) 無組織層、「中抜き政治」導く」 日経新聞2019年1月31日)

上記の表の労働組合NPO以外は、自民党支持の多い団体です。自民を支持する団体のメンバーがどんどん減って組織が先細りになり、自民の絶対得票率も下がった、という形です。それでも選挙で強いのは、投票率が低いからです。

要は、自民支持団体が弱体化し、有権者全体の中での自民得票率は下がった。しかし、投票率が低いせいで、投票した人の中での自民党の得票率は高い、ということです。自民党の政治が、選挙には強いけれど、有権者全体、ひいては国民全体の感覚からかけ離れた政治になっているのは、このせいです。

郵政選挙政権交代選挙で投票し、その後、投票所に行かなくなった1400万人

衆議院については、低投票率には例外があります。それが、2005年の郵政選挙と2009年の政権交代選挙でした。下のグラフの上半分が衆院選投票率の推移です。2005年の投票率は67%、2009年は69%です。ところがその後、2012年の選挙では史上最低の59%に激減、2014年には史上最低を更新する52%でした。2017年はわずかに上がって、それでも53%です。

郵政選挙のときの投票率67%から、一昨年2017年の投票率53%を引くと、14%になります。全有権者は1億人強ですから、1400万人にのぼります。郵政選挙のときと比べて、投票した人が1400万人も少ないのが、直近2回の選挙になります。

なお、郵政選挙時の67%から2012年選挙時の59%を引くと、8%になります。郵政選挙政権交代選挙には投票したけれど、2012年時点でもう選挙に行かなかったであろう人が、800万人います。第三極ブームにも何の関心もなかったわけです。その後の直近2回の選挙の投票率は、この2012年をはるかに下回っているので、この人達は、政権交代選挙以後、全く投票していない可能性があります。

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投票率の推移(総務省ウェブサイト http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/

また、2005年の郵政選挙で小泉自民党に投票した、いわゆる浮動票の人達(スウィング・ヴォーターズ)の多くは、2009年の政権交代選挙では、民主党に投票したと言われています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes/26/2/26_5/_pdf

以上、ものすごく荒っぽい単純計算等で考えてみましたが、まとめるとこうなります。

郵政選挙小泉改革を支持して小泉自民に投票し、政権交代選挙で民主党の改革を支持して民主党に投票した人達が、かなりの数でいる。

・この人達のうち、最近2回の選挙で投票しなかった人が1400万人、政権交代選挙以降、一度も投票していない人も、800万人いる。

自民党から政権を奪取する改革を目指すなら、この1400万人の心を動かすべきだ。

郵政選挙以前の3回の選挙では(2003年には既に小泉政権でしたが)、投票率は60%程度。それが郵政選挙では67%に跳ね上がっています。郵政選挙で投票したけれど、それ以前の選挙で投票に行ったことのない人もいるはずです。

そうなると、郵政選挙までは投票せず、郵政選挙政権交代選挙のときだけ投票して、それ以降、全く投票していない人も、数百万人いるでしょう。この人達は、なぜ、2005年と2009年の2回だけ投票したのでしょうか?

この人達は、どういう人達なのでしょう?ほとんど選挙に行かないのだから、公共心の足りない怠け者?郵政選挙では右側に、政権交代選挙では左側に簡単に騙されて、メディアに言われるままに流される「B層」や「情弱」?感情的なポピュリスト?

私は、全くそうは思いません。この人達が郵政選挙まで投票所に行かず、政権交代選挙以降、また行かなくなったのは、十分な理由があります。

この人達は、政治に興味はあるし、意見もあるけれど、自分の間近に見える政治は、少数の既得権団体と自民党が牛耳っていて、自分には全く縁のないもの、自分には力が及ばないもの、そのように感じている人達です。

ところが、2005年、小泉純一郎元総理が、国民に直接呼びかけました。自民党を含む全ての政党が郵政民営化に反対だ。だが、私は郵政民営化をやるべきだと思う。そこで、私は、主権者である国民に直接聞いてみたい。郵政民営化はやめるべきか、やるべきか。

そこで、おそらくは初めて、自分が無視されていない、自分も政治に参加できる、そう感じて、事実上分裂した二つの自民党古い自民党と小泉自民党のうち、改革を掲げる小泉自民党に投票したのです。

その後、三代の自民党政権は、安倍晋三氏も含めて、国民が小泉改革にかけた期待と付託を、徹底的に裏切り続け、否定し続けました。そこに、政権交代が十分可能な候補者 数と支持率と組織を持った民主党が、民主党なりの改革を訴えました。

民主党には行革のように小泉改革との共通点もあるし、何より、古臭い既得権政治に戻った自民党よりマシだと考えて、今度は民主党に投票したのです。ところが、その民主党政権も、統治能力の欠如はもとより、消費増税についての大嘘等によって、また期待を裏切り、下野しました。

その後は、この人達にとっては、何も起きていません。みんなの党も、日本維新の会も、第二次安倍政権も、何も意味がないのです。なぜか。第三極はしょせん第三極、政権を取る力も意思もなかったからです。そして、第二次安倍政権は、また古い既得権者だけの、仲間内の自民党政治に引きこもったからです。

一部の少数の既得権者でない、統合された存在としての「国民」のための改革を掲げる、しかも、自民党を現実に倒す力と意思がある。そのような政党のためなら、喜んで投票に行くけれど、そうでなければ投票に意味がない、そう考えるのは全くもっともなことです。

2017年、わずかに投票率が上がったのは、支持率の十分高い小池百合子氏が「いつまでちんたら安倍政権を続けるんだ」と言って、民進党を丸ごと解体・吸収して、民主党の悪い部分を正した政権交代の期待が一瞬でも生じたから、かもしれません。しかし、小池氏は急な選挙で自民打倒後のビジョンを描き切れず、選挙直前から大失速、結局は、1400万人は投票所に足を運びませんでした。

改革を志す政党・政治家・国民は、この1400万人の心に届く言葉を発しなければいけません。この人達の心を動かすのは、単に言葉だけではなくて、支持率の高いリーダー、十分な数のまともな候補者、政党組織、等々が必要で、容易なことではありません。しかし、まずは、誰に向かって言葉を発するのか、そこをまず認識していくべきだと思います。