日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

通常国会開会!改革を志す政治家・国民は、総理演説をどう斬るべきか?

通常国会が開会しました。

改革派の政治家・国民は、総理の施政方針演説のどこを批判し、どんな対案を主張すべきか、考えてみます。

今日の要点

・総理の施政方針演説の主要な論点について、批判と対案を挙げてみます。
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二 全世代型社会保障への転換
(成長と分配の好循環)

総理は、成長と分配の好循環につき、アベノミクスでの成長の果実を政府が再分配した旨を述べました。そして、子どもの相対的貧困率が初めて低下、保育の受け皿増やした等の成果を示しました。

しかし、これは民間の成長を政府が再分配した、という話です。成長と分配の好循環は、民間経済で起こることを目指していたはずです。そして、アベノミクスが当初目指した好循環は残念ながら、不十分にしか起きていません。

失業率の低下は確かに起きました。しかし、人手不足なのに賃金が十分上がりません。官製春闘も成果は不十分です。ここは、労働分配率を上げることに、政策を総動員すべきです。企業の内部留保が過去最高を更新しています。アメリカの留保課税制度にならって、利益剰余金等に一定の課税を行い、配当や賃金に回るようなインセンティブを与えるべきです。

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また、賃金が十分上がらない中、外国人の単純労働者を受け入れる政策は間違いです。現状で既に250万人以上いる在留外国人の教育・社会保障の環境を整えずに、安易に単純労働の外国人を受け入れることは、外国人の人権状況のためにも、日本のマクロ経済にも悪い結果をもたらします。

(教育無償化)

総理は、幼児教育無償化と待機児童ゼロを目指すと言います。その方向には賛成します。が、現状は不徹底にすぎます。人口減少を抑える、教育の機会均等実現、働きたい女性を働けるようにする、家計消費の刺激、あらゆる面で最も効果の大きい政策が、教育無償化と待機児童ゼロです。ここにこそ、政府は最大の資源を投入し、0~2歳児も、大学教育も、一気に無償化すべきです。

問題は、政府がこの政策のための十分な財源を確保できていないことです。その財源は、消費税増税ではなく、予算組み替えと行政改革によるべきです。予算組み替えについては、後ほど述べる経産省農水省補助金の削減が必要です。

行政改革については、当面の対応としては、まず、政府がムダに保有している流動資産を全て吐き出すべきです。来年度予算案では、預保機構の利益準備金取り崩しが行われます。

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会計検査院からムダを指摘されていたのですから、当たり前のことです。そして、これをやるなら、他の政府埋蔵金も徹底的に利用すべきです。労働保険特別会計の巨額積立金、全て失敗の官民ファンドのほか、補助金で造成された基金も未だにかなりありますし、独立行政法人の純資産も巨額です。

与野党とも通常国会で、あらためて「霞が関埋蔵金」の発掘と国民への還元を!:労働保険特会積立金、官民ファンド等 - 日本の改革

もちろん、ストックだけでなく、フローも切るべきです。天下り法人への支出も切らなければいけません。独立行政法人への運営費交付金をまず削減すべきです。また、政府が出資していない各種公益法人にも天下りが相当あります。そこへの補助金も出来る限り切るべきです。最終的には、国家公務員5兆円、地方公務員20兆円の、公務員人件費の削減を行う必要があります。

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/22.pdf

また、待機児童対策については、地方分権と規制改革が足りません。保育所設置基準を決める権限を、市町村に移譲すべきです。さらに、保育所は施設費等も相当かかるので、政策の中心を、保育ママとベビーシッターに変えるよう、舵を切ることが必要です。将来の需要減少時の撤退も容易な、機動的なサービスを重点支援すべきです。

待機児童解消策:①保育無償化=公金は業者から利用者へ、②自治体による設置基準決定、③ベビーシッター等拡充 - 日本の改革

(一億総活躍)

働き方改革に関して、総理は、罰則付きの時間外労働規制導入に言及しました。これも残念ながら不十分です。そもそも上限が過労死ラインぎりぎりです。しかも、勤務医については、この2倍の水準も許容する案を厚生労働省が議論しています。

医師の残業上限は過労死水準の2倍?⇒医師数を増やし、需給に応じた診療報酬を! - 日本の改革

そのうえ、政府は単純労働者を外国人の単純労働者を受け入れを進めています。これによって、外国人の低賃金労働に依存するブラック企業が温存されることになりかねません。

総理は、「企業経営者の皆さん。改革の時は来ました。準備はよろしいでしょうか」と言いますが、民間へのそんな呼びかけ以前に、政府自身が残業上限時間の規制をより厳しくするとともに、外国人の単純労働者受け入れも見直すべきです。

人手不足解消ではなく、多様化のための外国人受け入れを - 日本の改革

そのように、徹底して労働者を守り、現実に賃上げが実感されるようになって初めて、「雇用の流動化」を語るべきです。日本の労働法では解雇の要件が厳しすぎるので、企業がなかなか正規雇用を増やせない現状は確かにあります。そこはもちろん変えるべきです。しかし、先に見たように、まだまだ労働者の保護が不十分です。まずは、そこを徹底して変えてから、解雇のあり方を変える議論に移るべきです。

(全世代型社会保障

総理は、介護難民問題につき、介護離職ゼロを目指す、十万人分の介護の受け皿の整備、ロボットを活用する、介護士の処遇を改善する、という政策を挙げました。ここでも、規制改革と地方分権が必要です。介護施設の設置基準の決定権限は、保育所同様、市町村に移譲すべきです。

雇用保険労災保険に関連して、勤労統計についてお詫びがありました。言語道断という以前に、もはや政府統計への信頼が地に堕ちています。前国会では、裁量労働制について、労働時間のデータで政府がごまかしを行い、法案を撤回するまでに至りました。今回、基幹統計である勤労統計での重大な違法行為が明らかになりました。現在でも、政府統計について様々な不備が次々に明らかになっています。

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総理が言う「統計の信頼回復に向け、徹底した検証」などというだけでは全く足りません。公的統計全般につき、統計作成機関の独立性を保障する制度改革が必要です。イギリス同様に、政府から独立の統計機関を設立し、会計検査院に近い独立性・中立性・専門性を確保できるよう、政治の影響を完全に遮断すべきです。

政府統計への政治家の介入こそが問題の根源。イギリスにならって、統計行政の独立性の確保を。 - 日本の改革

2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向けての財政健全化に向けて、総理は、十月からの消費税率10%への引上げについて、「国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます」と言います。

国民は全く理解できませんし、断じて賛成できません。まず政府自身が、先ほど述べた通り、無駄な補助金天下り法人への支出をカットし、埋蔵金を吐き出す等、徹底した歳出削減を行うべきです。

総理は、来年度予算では「頂いた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ」ると言います。増税で集めてまたバラまいて、しかも再来年度以降は増税で経済を元の木阿弥にする。何と言う無意味な政策でしょう。財政再建は、増税でなく、まず歳出削減によるべきです。

改革派の財政政策①:増税より歳出削減 - 日本の改革

改革派の財政政策①-2:増税より歳出削減(Part2)⇒増税か歳出削減か、国民が選択できるようにすべき。 - 日本の改革

 

三 成長戦略

第四次産業革命)

総理は、「オンラインで診療から服薬指導まで一貫して受けられるよう、関係制度を見直します」と言いますが、昨年4月に「解禁」のはずのオンライン診療も、今国会に提出の薬機法改正案でのオンライン投薬も、極めて限られた範囲でしか行われません。総理のリーダーシップで、リスクの低い分野では原則として全てオンラインで出来るような制度にすべきです。

オンライン診療・投薬「解禁」かと思ったら・・・ - 日本の改革

総理は、第四次産業革命のため、「大学の力が必要です。若手研究者に大いに活躍の場を与え、民間企業との連携に積極的な大学を後押しするため、運営費交付金の在り方を大きく改革してまいります」と言います。

大学への補助金については、大学の既得権保護と裁量行政の組み合わせが問題です。研究成果と学生数だけで決める仕組みにしたうえで、国民的合意を得て、研究費総額の増加も検討すべきです。

大学への補助金改革の方向:文科省の裁量権撤廃、仕組みを変えて国民の合意得て研究費総額増も検討を。 - 日本の改革

(中小・小規模事業者)

総理は、「新しいチャレンジをものづくり補助金で応援します」と言います。この補助金は、毎年度、補正予算で1000億円計上されていました。もともと、リーマンショック(※「東日本大震災」としていたのを訂正しました。申し訳ありませんでした)の対策で緊急に導入されたものが、補正予算で毎年同額ずつ計上されてきたもので、新しいチャレンジどころか、古い既得権そのものです。

しかも、今回は、今年度補正予算に加え、来年度予算案で100億円が当初予算として計上されます。この補助金は、補正予算から当初予算に移りつつあるようです。既得権の更なる固定化を招くものであり、ゼロベースで見直すべきです。

http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2018/181226yosan08.pdf

四 地方創生
(農林水産新時代)

コメの減反政策が現在も続いています。新設の補助金は二つあり、どちらも、主食用のコメの作付面積が前年より減る都道府県だけが対象です。うち一つは来年度限り、露骨な選挙対策です。消費者・国民・そして、生産性の高い専業農家のため、減反政策全廃すべきです。

安倍政権、来年度予算案で、減反政策を強化。野党は「減反を廃止する」という総理のウソを暴き、減反廃止の実現を。 - 日本の改革

(地方創生)

総理は、地方創生交付金1000億円での引き続いての支援に言及しました。この制度は、政策目標を明示するのが新味だということで導入されましたが、この交付金全体で、結局どの程度の効果が上がったのでしょうか。戦後何度も繰り返された地方振興策の焼き直しにすぎません。

小泉改革では、地方交付税を10%削減しましたが、同時に、権限移譲や重複行政撤廃等も行いました。更に徹底して地方分権と税源移譲を行うことこそが、真の地方創生政策です。

東日本大震災からの復興)

ここでも、地方分権がカギになります。復興特区法でせっかく法律への条令の「上書き権」を認めたのですから、各省庁の同意なく上書きできる分野を出来るだけ多く指定するべきです。そうした大胆な権限移譲とともに、原発ゼロを宣言し、風力発電をはじめとする自然エネルギーを、東北での新たな産業として振興すべきです。

五 戦後日本外交の総決算
(公正な経済ルールづくり)

TPPについては、アメリカが復帰できる環境を作るべきです。そのためには、米中冷戦でともに戦う姿勢が必要です。日本は自由貿易を基本とすべきであり、公正で自由なルールづくりに貢献すべきことは、言うまでもありませんが、安全保障分野では別の考慮が必要です。

対中外交については、総理は選択を誤りました。総理は、「昨年秋の訪中によって、日中関係は完全に正常な軌道へと戻りました。」と言います。ところが、訪中後も、年が明けても、尖閣への中国公船の侵入は止まりません。正常になどなっていません。

南シナ海への進出は言うまでもありません。東トルキスタンではウイグル人100万人が強制収容所に送られるという、本物のジェノサイドが進行中です。そして、アメリカと中国は、新冷戦と言われる対立関係となりました。

総理の言う「自由で開かれたインド太平洋」のためには、このような状況で、中国の進める一帯一路への事実上の協力は撤回すべきです。

米中冷戦と1989年の理念 - 日本の改革

六 おわりに

憲法改正について、「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待いたします」としか述べられませんでした。国民が憲法改正を急ぐことに反対なので、選挙前でもあり、トーンダウンせざるを得ないのでしょう。

なぜ今、国民が憲法改正を支持していないのか。国民が今の政府に信頼を置いていないからです。内閣への支持も、野党がダメだからという消極的なものにすぎません。憲法改正で行われる国民投票は、大阪の都構想住民投票を見ればわかる通り、行政トップへの信任投票としての意味を持ちます。政府が信頼されていない以上、国民は憲法改正にも賛成できません。

まずは、政府が襟を正し、政府統計について独立の機関を設置する抜本的な統計改革の道筋をつけるべきです。公文書管理も現代にふさわしい形で、電子媒体で半永久的に保管、原則として全て公開とするなどの改革が必要です。さらに、消費増税を撤回して、天下り法人のストックもフローも切り、公務員人件費も切り、既得権者への無駄な補助金も切って、保育・教育無償化と待機児童ゼロを実現する。内部留保課税含め政策総動員で賃上げを可能にし、民間経済の好循環を実現する。ここまでやれば、国民の信頼が十分に得られるでしょう。

平成もあとわずかですが、任期の終わりの見えてきた総理が、国民に信頼される行政に邁進することを期待します。