日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

大学への補助金改革の方向:文科省の裁量権撤廃、仕組みを変えて国民の合意得て研究費総額増も検討を。

文部科学省が、東京医科大への今年度分の私学助成金をゼロにしました。

www.nikkei.com

これぞ御政道、文部科学省よ、よくやった、という声はほとんど上がらないでしょう。なにしろ、私学助成金不交付を決定した文科省の役人が、自分の息子を裏口入学させようとして、東京医科大への補助金の支出に影響を及ばした疑いがあるのですから。
この件は以前のブログでもふれた話題ですが、

文科省の腐敗、私大医学部の女子差別:私大改革はどうすれば良いのか - 日本の改革

私学助成金ゼロという例が出たこの機会に、国立大学と私立大学の両方への補助金について、あるべき改革の方向を考えてみます。

今日の要点

・大学へのあらゆる補助金について文科省から裁量権を全て奪い、専門家の評価と学生の数のみで補助金額を決定すべきです。

・国立大区運営費交付金私学助成金(私立大学経常費等補助金)も、大学の既得権保護と裁量行政の組み合わせが問題です。研究成果と学生数だけで決める仕組みにしたうえで、国民的合意を得て、研究費総額の増加も検討すべきです。

文科省の裁量行政撤廃。大学の評価は専門家と学生の数という客観的基準で。

大学への補助金について、科研費と経常費に関する補助金につき、文部科学省の裁量の余地が入らないようにすべきです。補助金の決定基準は、学生数と、専門家による研究評価という二つの指標のみで行うべきです。

来年度予算案では、国立大学運営費交付金につき、各国立大学への配分方法の見直しが行われます。原則前年同額で固定して配分してきた仕組みから、 評価に基づく配分を 1,000 億円に拡大します。

そのうち、700 億円は、客観的な共通指標による相対評価に基づく配分を行うとしています。具体的には、(ⅰ)会計マネジメント改革の推進状況、(ⅱ)教員一人当たり外部資金獲得実績、(ⅲ)若手研究者比率、(ⅳ)運営費交付金等コスト当たりトップ 10%論文数、(ⅴ)人事給与・施設マネジメント改革の推進状況、です。そして、300 億円は既存の重点支援評価に基づく配分です(以下資料のp4)。

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/11.pdf

上の指標の(ⅱ)教員一人当たり外部資金獲得実績、(ⅲ)若手研究者比率、(ⅳ)運営費交付金等コスト当たりトップ 10%論文数は、確かに客観的な指標ですね。ただ、若手研究者比率の高さと研究の質との関係については、議論はあり得るところでしょう。

一方、見ればわかる通り、さらっと変な指標が入っています。上の(ⅰ)会計マネジメント改革の推進状況、(ⅴ)人事給与・施設マネジメント改革の推進状況です。この二つがいりません。経営については、学内外の会計・経営監査の強化と、何よりも、学生数と、上の(ⅱ)、(ⅳ)のような純粋に客観的な研究成果に基づく補助金獲得の競争によるプレッシャー、これこそが、大学経営自体を規律付けるものであるべきです。「既存の重点支援評価に基づく」300億円同様、文科省、更には政治家の裁量の余地が入り得るもので、こうした基準は撤廃すべきです。

国立大学職員の方のブログでも、上の(ⅰ)、(ⅴ)の指標がおかしいと批判されています。

kakichirashi.hatenadiary.jp

もともと、国立大学運営費交付金の総額は、国立大学法人制度を導入した2004年度に、その当時の国立大学への公費投入額をもとに決めたものです(以下の資料の19p)。以来、1割強が削減されたとはいえ、今の水準の1兆円強という水準は、もともと既得権そのものでした。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/062/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/10/1353375_3_2.pdf#search=%27%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E6%B3%95%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E7%AD%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%27

2005年度以降は、前年度の算定をベースに、「諸係数を乗じるなどして」交付額を決定する仕組みです(上記資料19p)。この謎係数の奇妙さは、以下の「国立大学法人の運営費交付金算定ルール」からもうかがえます。

www.mext.go.jp

お前の大学は「経営を頑張っている」から予算をつける、効率化の「係数」によって、この予算だ、係数は我々が決めたから文句を言うな。こういう裁量の余地を一切なくして、専門家が納得する研究成果と学生数だけで評価する仕組みにすべきです。

私学助成金=私立大学等経常費補助金について言えば、既得権が問題です。以下のような決定のルールでは、教職員数に応じた補助金になるのだから、なかなか効率化のインセンティブが働きません。

www.mext.go.jp

私大はもともと授業料が収入のほとんどを占めているのですし、こちらも、客観的研究成果と学生数だけで補助金額を決めるべきです。

大学への補助金では、以上が特に大きな部分ですが、他にも細かい変な補助金が色々あります。その一つが、東京医科大学で問題になった私立大学研究ブランディング事業でした。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/08/1364859_4_1.pdf#search=%27%E7%A7%81%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6+%E6%96%87%E9%83%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9C%81%27

この補助金の最悪なところは、「研究」に出す補助金のように見せかけて、実は大学全体への「経常費」補助金になっていることです。うたい文句は「学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に 対し、施設費・装置費・設備費と経常費を一体的に支援」なのですから。汚職事件は論外、それ以前に、補助金として論外の筋悪さです。

全ての問題の本質は、補助金が大学の既得権ベースで決められていること、それに乗じて、文科省や文科族その他の政治家の裁量が大きすぎることです。両者は、悪く言えば、取引を行っているようなものです。現に、国立大学運営費交付金、来年度予算案は改革だ改革だと騒いでいますが、何のことはない、総額は今年度予算と同額です。

役所と政治家が既得権を守るから、大学は裁量行政にしたがう、という、どの業界にも共通する現象がここでも見られます。そんな仕組みとは決別した方が、研究者の方のためにはずっと良いはずです。

国全体での研究費の総額について言えば、既得権でさえなければ、国民的合意が得られるなら、もっと増やすべきではないでしょうか。日本人のノーベル賞受賞のたびに、日本国民はどれほど喜び、誇らしく思い、大学で孜々として研究される方々に、どれほど感謝と尊敬の念を抱いていることか。学問という人間の営みの偉大さを、日本国民は十分理解できます。問題は仕組みを変えて、国民が大学での素晴らしい研究への税金投入に、心から納得するということです。その前提さえあれば、国は大学での研究にもっとお金を使うべきです。

 

研究以外に、学生数に応じた補助金ということが大事ですが、これは大学での教育無償化ということになります。この点については、また別の機会に論じたいと思います。