日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

改革派の財政政策①:増税より歳出削減

小泉政権の改革や橋下徹氏の大坂維新改革につき、財政的な緊縮政策で望ましくないという批判があります。小泉氏も橋下氏も、確かに多くの分野で歳出削減を行いました。歳出削減や増税は、国民・住民の痛みを伴います。これらの政策は、どのような場合に正しいとされるのでしょうか。一般に、日本の改革を目指す政治家や国民は、財政政策について、何を大事にすべきでしょうか。

経済学者は、効率性と公平を大事にします。現実の政策では、効率性と公平に加えて、民主的正当性が大事です(これも「公平」の一つかもしれませんが、区別します)。

民主的正当性とはつまり、国民の理解が得られるか、その政策で国民を統合し、抵抗を排除して目的を達成する力があるか、ということです。改革の実現には大事な基準です。

効率的で、公平で、民主的正当性のある経済政策は何か。改革派の掲げるべき財政政策の原則を考えてみます。

今日の要点

財政再建や財源捻出のためには、増税より歳出削減を優先すべきです。

・特に、小泉政権の改革は、効率的、公平、かつ民主的正当性のある改革でした。

増税より歳出削減

国・自治体で新たな政策を行うときの財源捻出や、中長期的な財政再建のためには、増税よりも、まず歳出削減を行うべきです。

小泉純一郎氏は総理在任中、周知の通り、自分の任期中は消費税を増税しない、と繰り返し言っていましたし、実際に上げませんでした。たとえば、第二次内閣改造後の記者会見で、こう言っています。

「今回の消費税を上げろという論者は、財源が足りないから上げろというんでしょう。せっかくここまで歯を食いしばって頑張ってきた。無駄な予算を削ろう、不必要な事業を見直そう、削減しようと。そういう中にあって、財源が足りないから先に消費税を上げれば、これは責任ある態度だと、とても私にはそうは思えない。まだまだ削るべき無駄な予算というのはあります」

https://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/09/22press.html

歳出削減につき、小泉政権が予算編成にあたった2002~2006年度一般会計予算について数字も見てみます。

2002年度には公共事業関係費を11%カット、その後も毎年約4%ずつカット。文教科学振興費は2003年度から、地方交付税交付金は2004年度から毎年削減(文教は最大8%、地方交付税は最大10%カット)。その他支出も毎年度平均で2%強マイナス。唯一、社会保障関係費だけは増え続けましたが、伸び率が最初4%だったのを、2005年度には3%、2006年度には1%の伸びに抑えています。歳出全体は毎年度平均でマイナス0.8%。(数字は以下資料のPDF3枚目)

ci.nii.ac.jp

 

結果として、プライマリーバランスの対GDP比は2002年度のマイナス5.5%を底に継続的に改善。これは後継政権でも続き、リーマンショック直前には、PBの対GDP比はマイナス1.2%まで改善しました。

これに対し、消費税増税を行った安倍政権では、PBの対GDP比は2012年度のマイナス5.5%から、一番改善した2015年度でもマイナス3.0%です(数字は以下の資料PDF2枚目によります)。2回目の消費増税を織り込んでも、一番楽観的なシナリオで2020年度にようやくマイナス1.4%です。

https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201704_04.pdf#search=%27%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9+%E6%8E%A8%E7%A7%BB%27

安倍政権は昨年には、2020年度のPB黒字化目標を5年先に先延ばし。今後、安倍政権で更なる改善の見通しも見えません。歳出削減一本槍の小泉政権の方が、増税先行の安倍政権よりも、財政再建に成功していることが分かります。

www.sankei.com

実質GDPについては、アベノミクス初年度の2013年度が2.6%で小泉政権のどの年度も上回っています。しかし、消費税増税した2014年度はマイナス0.4%、その後は年度ごとに、1.3%→0.9%→1.9です。小泉政権では、年度途中で政権発足した初年度だけマイナス0.5%ですが、その後は、0.9%→2.0%→1.7%→2.0%でした。安倍政権は一年度だけ高かった後は低い水準で振れ幅が大きく、小泉政権の方が、おおむね安定した高成長だったと言えるでしょう(数字は以下によります)。

www.esri.cao.go.jp

大坂で橋下徹氏の始めた改革でも、増税は行わずに大阪府・市の財政状況を大幅に改善したうえ、教育支出の大幅な増加や効果的なインフラ投資に成功しています。また、大坂の景気動向指数も全国を上回る改善をしました。
news.yahoo.co.jp

小泉純一郎氏と橋下徹氏という二人の改革派の政治家は、増税は行わずに歳出削減で財政再建や財源捻出に成功していますし、経済成長についても一定の成功をおさめており、おおおむね効率的な経済運営を行っていると言えます。

公平という点について、小泉政権は弱者切り捨ての歳出削減を行ったと言われます。社会保障関係費の計画的な削減を行ったことから、そう叩かれているようです。しかし、世代間の公平ということを考えれば、むしろ必要な削減でもありました。

また、他に一例を挙げれば、医療費削減については、診療報酬本体部分、つまり、医師の取り分をカットしました。それまで患者の自己負担と国民の保険料ばかりが上げられていたことを思えば、「三方一両損」という形で、比較的高所得の医師の報酬を切ったのは、従来よりはるかに公平なやり方だったと言えます。
www.nikkei.com

現役・将来世代と引退世代での世代間公平や、患者・国民(医療サービス利用者)と医師(医療サービス供給者)の公平という点で言えば、全体としては、むしろ公平さを追求した改革が行われていたと言えるはずです。

民主的正当性についてはどうでしょうか。歳出削減を行った小泉純一郎元首相も、橋下徹元知事・前市長も、一貫して高い支持率を保ち続けました。なぜでしょうか?国民・住民は、歳出削減よりも増税の方が負担が重いと感じ、まず徹底した歳出削減という方針に納得したからでしょう。

また、歳出削減のやり方についても、あまり正当性のない形で政治的利権化した支出を切る分には、やはり国民・住民の支持が得られます。個々の既得権者、個々の業界団体等は当然反発して政権に反対するでしょう。現に、小泉政権の診療報酬カットに医師会は猛反発しました。しかし、強力な圧力団体が離れてもなお圧倒的な支持率を得続けるほど、小泉政権は支持されていました。

これは、特殊利益を得ている一部の国民ではなく、統合された統治主体としての「国民」全体の支持を得続けていた、ということになります。橋下徹氏も、あらゆる既得権者から批判を受けながら自治体予算の組み替えを断行、教育や保育の無償化等に支出削減分を回しました。

改革派が行うべきは、正当性なく一部の人々が享受してきた財政支出を削減する一方、統合された主権者・統治主体としての国民・住民が納得できるような予算の組み替え等を行うことです。

次回も、引き続き、改革派の財政政策のあり方について、考えてみます。