日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

待機児童解消策:①保育無償化=公金は業者から利用者へ、②自治体による設置基準決定、③ベビーシッター等拡充

今日の要点

・待機児童対策では、保育サービスの供給者への助成金等は減らし、保育無償化を通じて、サービスの利用者に税金等を渡すべきです。

保育所設置基準については、自治体に決定権限を渡すべきです。

自治体は、より多様な保育サービスを育てるべきです。東京都のベビーシッター補助金の拡充等は期待できます。

企業主導型保育所の混乱:保育サービスの供給者ではなく、利用者にお金を入れるべき。

政府の待機児童対策の目玉だった「企業主導型保育所」が批判されています。

この制度は、子ども子育て拠出金を負担している企業が新規に認可外の保育所を開設する場合、一定の要件の下で、認可保育所同様に助成金が得られる、というものです。

www8.cao.go.jp

この制度だと、自治体の判断なしに入所が決められて、保育士が認可保育所より少なくても認可並みに助成が得られます。規制緩和を含むので、そこだけ見れば良さそうに見えますが、この制度につき、批判が絶えません。先週は、こんな記事が出ました。あとで取り上げますが、世田谷区でのトラブルを挙げています。

gendai.ismedia.jp

既に昨年秋頃から、定員割れや安易な撤退が相次いでいることについて、批判されてきました。以下の2018年11月6日の日経の記事で、何が起きたか詳しく書かれていて、

www.nikkei.com

この日経の記事の中に、問題の本質が書かれています。

「企業主導型保育所は児童の「定員枠」に応じて受け取れる整備費が手厚い。都市部で定員20人なら整備費が8千万円を超える場合もある。実際に預かる子どもの数が定員枠に達しなくても一定の助成が見込めるうえ、様々な加算や運営費への支援もあるので見通しが甘くなりやすい」

企業が決める「定員枠」に応じて整備費が受け取れるのは、事業者に甘すぎます。実際に子どもが預けられなくても、極端な話、需要がゼロでも、整備費だけは受け取れるということになります。

この制度に限らず、こうした弊害を防ぐために、保育所や学校等への交付金補助金は、企業に直接渡す経常費の部分は出来るだけ減らすべきです。そして、サービス利用者の数に応じた金額を、利用者に支払うようにすべきです。

具体的には、公費負担で、サービス利用料をゼロにする「無償化」を行って、どの施設を選ぶかは利用者に任せれば、サービスを供給する保育所や学校は切磋琢磨して、より良いサービスを提供するようになるでしょう。余計な施設整備費が生じないよう、経営効率化もするはずです。

この考え方を導入しているのが、橋下徹氏が大阪府知事時代に大阪府で実現した、私立高校授業料無償化政策です。制度導入当初の以下の資料の24枚目のスライド(22ページ)以降にある通り、経常費補助金を原則として「パーヘッド」、即ち、生徒の人数に応じて配分する、としています。ここまでやれば、理念的に一番徹底します。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/11430/00000000/20110829_1658_mushouka_kakudai.pdf

以上のように、保育・教育の無償化政策では、経常費への補助金はなるべく減らして、公金を渡す相手を、サービス供給主体から、一人一人の利用者・国民に移すようにすべきです。企業主導型保育所は、この経常費への補助金の部分が多すぎました。特に、定員枠に応じて助成金というのは、完全に制度設計の失敗でしょう。このため、見通しの甘い素人事業者が助成金頼みで安易に事業を始めて、すぐ撤退するという弊害が発生しました。

これが、お金を配るのはとにかく企業・団体という、自民党政権の限界です。利用者・国民にお金を配るようにする改革が必要です。

保育所設置基準につき、国は自治体に決定権限を渡すべき。

では、この制度で、保育士の設置基準の規制緩和を行ったことは、どう評価すべきでしょうか。規制緩和が問題だという意見もあります。しかし、問題の本質は、自治体ごとの設置基準の違いが原則として認められていない点です。

現在は、地価も施設工事費も高い都市部も、そうでない地方も面積基準は一律、住民の平均給与の違いにも関わらず保育士設置基準も一律で、厚生労働省が決めています。地域によって保育所設置・運営コストは違いますし、保育の需給バランスも時々刻々と変化するのですから、基礎自治体が設置基準を決めるのが良いに決まっています。

この点、日本維新の会が、「保育所設置基準の分権化法案」を提出しているのはさすがです。教育・保育の分野では、国政維新にも橋下徹氏の哲学が生きているように見えます。自民に対峙する姿勢が見えにくいのは残念ですが…。

https://o-ishin.jp/houan100/pdf/detail018.pdf

では、待機児童の多い自治体の首長が、保育団体の言いなりとなって、国よりも厳しい設置基準を上乗せしている場合は、どうすれば良いでしょうか?現にこれが起きているのが、世田谷区です。一昨年まで堂々たる全国ワーストの待機児童数で、厚生労働省が緩和を要請しても、保坂展人区長は全く聞く耳を持ちません。

www.sankei.com

保坂区長は、世田谷区で企業主導型保育で起きた混乱につき、国に対し、世田谷区が関与できるよう要望しました。国も、おかしな制度によって各地でトラブルを起こしたのは確かなので、重く受け止めると答えています。新たな保育所を作らせたくない区長に、国が押されている構図です。

mainichi.jp

このように、世田谷区では、保育所設置基準を自治体が決めることによって(この場合は上乗せ条例で)、かえって待機児童が高止まりしていますが、このような場合でさえ、国が基準を強制すべきではないでしょう。最終的には、選挙で首長を倒すしかありません。

なお、世田谷区は昨年、ワーストからワースト3位に改善、ただ、東京都が過去最大規模の待機児童対策を2年連続で行い、2018年度予算では市区町村に240億円の支援をしているので、その効果かもしれません。本来、保育は市区町村の仕事ですが、区長が無能どころか害悪のある場合、お金での支援はあっても良いと思います。

自治体は、ベビーシッター等、従来の認可保育所以外の保育サービスを育てるべき。

保育所というのは、以上のように、施設への助成金が問題ある業者に悪用されてしまったり、面積基準や保育士設置基準について国の基準が硬直的に過ぎたり、逆に自治体の首長が勝手に厳しすぎる基準を設けて国と対立までしたり、と、色々な問題を起こしてしまう面があります。もっと自由に柔軟に運営できる保育サービスが普及するよう、自治体は工夫すべきです。

たとえば、東京都は、ベビーシッターの利用支援を始めています。建物や保育士が必要な保育所に比べて、大幅に自由に柔軟に提供できるサービスです。ベビーシッターの利用が、うまく定着して今後も広がってほしいところです。

www.nikkei.com

もう一つ、国の一律基準の認可保育所でもない制度としては、自治体の認証保育所があります。住民の多様な需要を取り込むために、この制度をもっと生かすことも必要です。

小池都知事は年明けに、365日24時間子どもを預けられる認証保育所の制度を作ると発表しました。これも東京には向いた施策でしょう。ベビーシッター補助金とともに、拡充を期待したいと思います。
news.tv-asahi.co.jp