今日の要点
・厚生労働省の進める「地域密着型」薬局の新設、オンライン投薬を原則認めるくらいの規制緩和がないと、国民はメリットを感じにくいでしょう。
・薬局の立地規制は、既にいったん緩和することが決まったのですから、規制緩和を進めるべきです。
・一方、規制強化も必要です。薬局でのタバコ販売は絶対に禁止すべきです。また、チェーンドラッグストアに競争法上の問題等がないか、公取等はチェックすべきです。
「地域密着型」薬局等の新設:成否はオンライン服薬等のICT技術の利用次第
厚労省は、通常国会に提出する薬機法改正案について、薬局の機能を分類する方向の案をまとめたとのことです。薬物療法を一元管理する「地域密着型」と、高い専門性を持つ「高度専門型」の2類型に区分し、それ以外の薬局も認めるようです。
厚労省の報告書が、医薬分業について「患者にとってのメリットが感じられない」との指摘があると強調し、多くの患者が病院前などの「門前薬局」で薬を受け取る中、薬剤師による薬学的管理・指導の不十分さも指摘したーと産経が報じています。
産経は「報告書の全容が13日、分かった」と報じているので、おそらく、去年12月25日に出た以下の報告書「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」を更に詳しくしたものが出たのでしょう。以前、当ブログでも、オンライン診療・投薬の部分について、紹介しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000463479.pdf
オンライン診療・投薬「解禁」かと思ったら・・・ - 日本の改革
「地域密着型」薬局では、患者の薬を一元管理できるようにするということで、「かかりつけ薬局」のイメージのようです。その指定要件として、「他の薬局との輪番制による休日夜間対応や在宅訪問の実施を、高度専門型の要件はプライバシーが確保された個室設置など」を検討中とのことです。
無理やり機能別に分けて定着するかどうか、その他の従来通りの薬局類型も残すなら、実効性はどうか、という疑問は残ります。
とは言え、趣旨は分かります。地域包括ケアシステムで在宅診療を進めるためにも、患者の住む地域に近い、きめ細かなサービスが提供される薬局を作って、薬局に独自の価値を認めてもらえるようにしよう、ということでしょう。
特に、薬局でプライバシーが守られていないことについては、ネット上では相当叩かれていますし、その点を改善しようというのは結構な話です。ツイッターのご意見を紹介します。
いつも処方薬局で思う。
— あすぺさんbot✨ (@asupe_san) October 13, 2018
『プライバシーは、
どないなっとんねん💢』
他の患者がいるところで、病気のことやら何やら確認されて、薬の説明されて、全部、まる聞こえやん💢
診察室でプライバシーとして守られる内容が、薬局では全く守られず筒抜けやん💢
おかしいやろ💢💢
なんで誰も怒らへんねん‼️ https://t.co/sboCPqOKCE
一方、プライバシーを重視するなら、やはりオンライン投薬・診療をもっと幅広く認めるべきです。ネットなら、個室をわざわざ設けなくてもプライバシーが守られます。ツイッターからもう一つ、ご意見を紹介します。
これは薬局内よりプライバシー保護されるしディープに指導できる…チャンス
— 逃げ恥犬 (@keFnAJDegwR9Mu1) June 4, 2018
遠隔服薬指導の実現、「18年度に検討・結論を」 - 医療介護CBnews https://t.co/eax4NJUHAj #cbnews
それに、地域包括ケアシステムでは、患者等の住む場所も出来るだけ自宅に、という発想があるはずで、それなら薬局に出向くより、オンラインで完結する診療・投薬がある意味、理想的なはずです。ICT技術の活用について、一層の規制緩和が望まれます。
薬局の立地規制も緩和すべき
普段使う「地域密着型」薬局は、患者の住む地域で良いでしょうけれど、めったにかからない病気でどうしても通院が必要、というときに、わざわざ病院以外の薬局に行く必要があるでしょうか?もう一つの類型の「高度専門型」薬局は、病院の敷地内にあった方が患者には便利なはずです。更に言えば、「地域密着型」薬局も、オンライン投薬の幅が広がれば、立地には大きな意味はなくなるでしょう。
既に2015年の規制改革推進会議で、医薬分業推進の下での規制の見直しが行われ、場所での規制よりも経営の独立性で医薬分業を行う、という方針となりました。2016年には、規制改革の方向に沿った運用がなされているという報告がなされていました(以下資料の4ページ目です)。
ところが、病院の敷地内に薬局を作ることについて、厚労省は相変わらず「望ましくない」として、厳しく指導している実態があるようです。
このやり方はどう見てもおかしいので、既に決まった規制緩和くらいは、きちんと原則通りに運用すべきです。
薬局への規制強化も必要。タバコ等の販売は全面禁止を。
一方、薬局について、規制強化が必要な分野もあります。特に、成長著しいドラッグストアの中には、タバコを平気で販売しているところがあります。特にひどいのが、ウェルシアのようです。ツイッターからいくつかご意見を紹介します。
日本のドラッグストア
— 稲本望 (@nosmokerider) January 5, 2019
タバコ販売していない禁煙🚭
スギ薬局
ココカラファイン
タバコ販売している🚬
ウェルシア
何を目的にしているか
企業姿勢が伺えます
ウェルシア薬局が「タバコ取扱店」の幟を大きく掲げているんだけど、健康を売る薬局が煙草を売る矛盾。 pic.twitter.com/xeZt9T2HOD
— Makali'i (@Makalii_JPN) July 24, 2018
禁煙補助薬とタバコを一緒に陳列とはウェルシアも売れれば何でもありなんだな。禁煙外来の医療機関は全面禁煙でないと保険診療できないけど。 pic.twitter.com/1opQ3e86k1
— 信二 (@waiwaishin) January 22, 2017
タバコ販売どころか、薬局の店内に喫煙所まで。
タバコを販売し、店内に喫煙所を作るウエルシア。保険薬局(調剤薬局)併設。店内喫煙可能なドラッグストア。薬局やめたら? pic.twitter.com/gSzIomPAuE
— 稲本望 (@nosmokerider) July 9, 2018
なんで、こんな店に、薬局の開設許可が下りているんですか。厚労省も自治体も、薬局制度をいじる前に、この会社への薬局開設許可を真っ先に取り消すよう動くべきです。
ウェルシアはじめ、チェーンドラッグストアについてはもう一つ問題があると思います。小売り業界の中では、一人勝ち状態で、コンビニやスーパーより儲かっているようです。日経(2018年8月19日)によれば、
「背景には「購買頻度の高い日用品や食品を低価格で販売して集客し、他業態から顧客を奪っている」(いちよし経済研究所の柳平孝氏)ことがある。
例えばウエルシアの18年3~5月期の品目別の売上総利益率(粗利益率)をみると、食品や家庭用雑貨は20~25%にとどまる。一方、医薬品や調剤、化粧品では軒並み3~4割と高い。弁当や総菜を置く店を増やしており、来店頻度を高めつつ、利幅の厚い医薬品などで稼ぐ構図だ。」
薬局の開設許可という既得権をテコに、日用品は大幅に値下げして、患者に必要な医薬品や調剤は価格を高くする。競争法上も厚生行政上も、問題ではないでしょうか?公正取引委員会も、厚生労働省も、真剣に考えてほしいと思います。