日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

2004年の年金制度改正で将来世代から420兆円の強奪:世代間不公平の是正を。前提は、身を切る改革と徹底行革。

今日の要点

・現行法の元になる2004年度の年金制度改革で、将来世代の年金資産420兆円が大人達の年金の穴埋めに使われました(高山憲之氏の試算)。

・政府の年金制度改正の方針では不十分です。年金制度改革は、さらに世代間の不公平を是正すべきです。

・世代間公平のためには、高齢者の給付を減らすことが必要。理解を得るには、議員の身を切る改革と徹底行革が必要です。

2004年の年金制度改正で、将来世代から巨額の年金資産収奪が行われた

年金制度の改革は、以前ほどには議論が活発ではない印象です。第一次安倍政権のいわゆる「消えた年金」ほどの大規模なスキャンダルはなく、旧民主党系も、あまり大きな制度改正は主張していないようです。どの党も、2004年の改正で出来た現行制度の基本を前提にしているように見えます。維新は積立方式への移行を掲げていますが、正直、本気度はいまひとつでしょう(機会があれば書きます)。

では、現行の制度がベストかと言うと、私はそうは思いません。特に問題なのは、いま受給している人達も含めた高齢者には有利で、将来世代には不利な制度、つまり、世代間の不公平が大きい制度だからです。

高齢者の生活を守ることはもちろん重要ですが、現役・将来世代の負担が大きすぎれば、共倒れになりかねません。経済・社会の長い目で見た発展のためには、今の水準の年金給付は、現在の受給者も含めて減らして、現役・将来世代の負担を軽くし、彼らの給付も増やす方が良いと思います。

現行の年金給付が、どの程度、高齢者に有利か、以下で見てみます。

今の年金制度は、小泉政権時代の2004年に導入した制度が基本になっています。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/02/dl/tp0212-2b1.pdf#search=%272004%E5%B9%B4%E5%BA%A6+%E5%B9%B4%E9%87%91%E5%88%B6%E5%BA%A6%E6%94%B9%E9%9D%A9%27

それ以来、微修正はあったものの、それほど大きな変化はありません。2004年度改革の要点は、

①保険料率を2017年に固定して(18.3%)、その範囲内でのみ給付

マクロ経済スライドを導入して、賃金・物価次第で給付減を可能に

③基礎年金の国庫負担割合引き上げ(消費税増税

の三つです。

①の保険料固定方式も、②のマクロスライドも、給付減につながるものですから、どちらも世代間公平のために良いことです。これが現行制度のメリットです。

デメリットは、肝心の保険料と給付の実際の水準についてです。一言で言えば、将来世代から旧世代に、巨額の年金資産の移転が行われる結果になるような、保険料・給付水準の決定がなされました。

これについては、高山憲之氏(元・一橋大学教授)が、当時強く批判していました。

http://takayama-online.net/Japanese/pdf/pension/economist0406.pdf#search=%27%E5%B9%B4%E9%87%91+%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%88%27

高山憲之氏はここで、既に年金に入っている人達(説明の便宜上、「旧世代」と名前を付けます)と、これから年金に入る人達(2005年~2100年まで。「将来世代」と名前を付けます)と、年金のバランスシートを比較しています。

結論は、制度改正前には、旧世代は500兆円超の債務超過で、将来世代は資産と負債がほぼ同じだったのに、2004年改正で、旧世代の債務超過の穴埋めのため、これから年金に入る人達から420兆円を奪って旧世代に渡した形になっている、それと同じ結果になるような保険料と給付額が設定されている、ということでした。当然、旧世代のバランスシートの債務超過はほぼ解消、一方で、将来世代のバランスシートは一気に400兆円ほどの債務超過になりました。

つまり、将来世代から旧世代に420兆円もの年金資産の移転が行われたことになります。あえて言えば、今回のブログのタイトルのように、「420兆円の強奪」です。その後、こうした大幅な資産移転を是正するほどの制度改正はありません。

政府の年金制度改正の方針では不十分。一層の世代間公平の重視を。

政府は、昨年2月の高齢者対抗の発表に続け、10月から、厚労省社会保障審議会(年金部会)で、「70歳超」選択制についての議論を開始しています。

www.nikkei.com

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00003.html

やらないよりは良いでしょう。しかし、年金支給開始年齢を遅らせれば、それだけ年金支給額も増えるので、年金財政の改善効果は2000億円程度ということです。毎年の給付額が50兆円超であることを考えれば、小さな効果です。

www.nikkei.com

私は、現在の公的年金制度での世代ごとの年金資産を計算して、各世代が出来るだけ平等になるよう、保険料と給付の額を決め直すべきだと思います。極めてハードルは高いでしょうが、世代間公平のために、議論だけはすべきです。

前提は、身を切る改革と徹底行革

2004年の年金制度改正は、保険料固定方式とマクロ経済スライドの導入という点で、大変画期的なものでした。やはり小泉政権でなければできない、抜本的な制度改正でした。

その一方で、旧世代の債務超過の穴埋めのために、将来世代に大変重い負担を負わせてしまいました。まっさらな未来を用意してあげるべき人達に、年金のバランス上何の問題もなかった世代の人達に、全く説明なしに、意見を言う機会も与えずに、重い保険料負担を負わせ、給付は十分与えないという制度を強制しているのです。現行法に既に潜んでいるこの問題は、やはり提起し続けるべきだと思います。

これが出来るのは、よほど国民の支持がある本格的な改革派の政権でしょう。小泉政権でさえ、このような不平等を強いたのです。安倍政権は周知の通り、年金は鬼門です。選挙に出かける高齢者の反発恐さに手を付けられない年金制度。本当に将来世代のためになる改革をしようと思ったら、やはり議員が身を切る改革を行い、政府が徹底した行革で歳出削減等を行うことで国民の信頼を得て、そのうえでこの問題を提起することが必要です。