日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

医師の残業上限は過労死水準の2倍?⇒医師数を増やし、需給に応じた診療報酬を!

今日の要点

厚生労働省は、医師の残業時間の上限を過労死水準の2倍まで認める案を提示しました。これでは、医師と患者両方の命と健康を守れません。

・苛酷な労働環境と医師不足が放置されてきたのは、日本医師会等の団体が、医師の働き方改革にも、医師数増加にも反対してきたからです。

・医師の働き方改革医師不足・偏在の解決のために、医師数を増やし、医師の報酬は地域・診療科ごとの需給を柔軟に反映して決めるようにすべきです。

医師の残業上限2000時間。これでは医師の命と健康が守れず、医療の質が維持できず、国民の命と健康も守れません。

厚生労働省は、医師の残業時間の上限について、案をしましました。

「医師が不足している病院などは、例外として年間で1900時間から2000時間、月の平均に換算して160時間ほどまで認めるとしています。これは過労死ラインとされる月平均80時間のおよそ2倍に当たります。」(NHK

www3.nhk.or.jp

ひどい話で、当然、批判されています。一応、インターバル規制とセットにする方向で議論しているようですが、肝心の残業時間上限の規制がこれでは、勤務医の方々の命と健康を守れません。医療ミス等の原因にもなりますし、無茶な労働に依存した医療体制では、長い目で見て、国民の命と健康も守れません。

この案が示されたのは「医師の働き方改革に関する検討会」で、

www.mhlw.go.jp

厚生労働省の示した資料はこちらです。

「時間外労働規制のあり方について③ (上限時間数について)」

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000467709.pdf

5ページ目に、医師不足の地方での病院勤務医について、年間で1920時間から2000時間の上限とする、とあります。

6ページ目に病院常勤勤務医の勤務時間のデータがありますが、

・年間1,920時間を超える医師が約1割

・年間2,880時間を超える医師が約2%

とあります。今回の案で改善の対象となる医師はわずか1割ということが分かります。

医師の働き方改革にも、医師数の増加にも、日本医師会(開業医中心の団体)等は消極的。役所も言いなりか。

厚生労働省は、なぜこれほどひどい案を白昼堂々と提示したのでしょうか。やはり、日本医師会(開業医が主)や病院の経営者団体が、医師の働き方改革や医師数増加に消極的だからでしょう。

これを端的に表しているのが、「医師の働き方改革に関する検討会」第8回の議論です。ここで、日本医師会の「医師の働き方検討会議」が、意見書を提出しています。意見書はこちらです。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000331104.pdf#search=%27%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81+%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9%E6%94%B9%E9%9D%A9%27

要は、インターバル規制は良いけど、残業時間の上限規制はよろしくない、という内容で、厚労省の事務方が示す案に近いですね。その最後のページには、すごいことが書いてあります。

「現行制度を当然踏まえつつも、「働き方を法令に合わせる」の でなく、「法令を働き方に合わせる」という発想で提言をまとめた。」

「現行法令の枠内における「特例の在り方」だけでなく、必要であれば、その枠組みには必ずしも拘らない「特例の在り方」であっても良いはずである。 」

話し言葉に訳すと、こんな感じでしょうか。

「労働法がどうのと、お前ら役人風情がうるせえんだよ。今の法令通りに働かせるなんて真っ平だから、俺たちのやり方に合わせて法令を変えりゃいいだろうが。」

ブラック企業と同じ価値観ですね。こんな意見書を厚労省の検討会議に出してくるのが、日本医師会です。厚生労働省なんて自分達の下請けだという思いあがった態度です。当日の議事録を見ると、さすがにこの意見書には批判が出ています(以下の議事録の22ページ等)。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000352333.pdf

日本医師会は、医師の数を増やすことにも反対し続けてきました。特に、医学部新設には絶対反対の声明を繰り返し発表しています。

2010年、民主党政権のときには、以下のように医学部新設反対をアピール。

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20100714_1.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A+%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E6%95%B0%E5%A2%97%E5%8A%A0%E5%8F%8D%E5%AF%BE%27

2015年、安倍政権のときにも、国家戦略特区による医学部新設に反対する緊急声明。

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20150513_1.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A+%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E6%95%B0%E5%A2%97%E5%8A%A0%E5%8F%8D%E5%AF%BE%27

さすがに東日本大震災の後だけは、医学部新設をしぶしぶ認めたようですが、例外中の例外です。

医師数を増やし、医師の報酬を地域や診療科で柔軟に変える仕組みを!

開業医中心の団体である日本医師会は、とにかく医師の数が増えるのが嫌ですし、病院の団体は、勤務医の労働コストを出来るだけ低く抑えようとします。だから地方に医学部が増えないし、大学病院の経営者達は勤務医の産休育休を嫌がり、入試でも平気で女性差別をして、男性は過労死ラインの2倍の現状を法的に認めさせようとしています。

医師と患者・国民の命と健康を守るためには、こうしたエゴむき出しの団体の大きな声に負けてはいけません。国民が声を上げるべきです。医師不足を解消し、勤務医の方々が他の国民と平等の権利を認められて働けるようにするためには、医師の数を増やすべきです。もちろん、これにあわせて、技術革新も積極的に利用すべきで、オンライン診療・投薬は、可能な限り認めるべきです。

また、医師の偏在の問題については、地方・診療科ごとに医療の需要と供給を出来るだけリアルタイムで測定し、需要が供給を上回っている地方・診療科では報酬を上げるようにすべきです。今の診療報酬のような、政治力で決めるやり方は見直すべきです。診療報酬については、また機会を改めて書きたいと思います。