日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ゾンビ企業を支援するゾンビ・ファンド:官民ファンドは全廃を

今日の要点

・産業革新投資機構をはじめ、いわゆる官民ファンドは全廃すべきです。

・これまで、公正取引委員会等も問題点を指摘していたのに手つかずでした。去年、会計検査院の報告が出て、産業革新投資機構を中心に官民ファンドを統廃合するという方向で進めていたものの、報酬問題で機構がコケたので頓挫しました。

・政府は、昨年末に決めた工程表で官民ファンドを是正すると言いますが、ファンドの存続ありきのヌルい案。国民負担が増える前に、もう全廃するべきです。

産業革新投資機構はじめ、官民ファンドは全廃すべき

昨年末、産業革新投資機構をめぐって、三菱から「天上がり」?の田中社長と経産省の役人が泥仕合を繰り広げた件。これは、税金と財政投融資の無駄遣いの問題です。

そもそも、産業革新投資機構という長ったらしい名前の会社は、一体何なのか?『FACTA』2018年10月号の大西康之氏の記事を参考に、簡単にまとめます。
facta.co.jp

もともと、この機構の前身は、バブル崩壊後の不良債権処理の最終段階で、2003年にダメ押しのように作られた産業再生機構でした。りそな銀行の救済もあって金融危機モードは去ったとは言え、まだまだ不安に思う国民も多かった頃です。そこで、事業会社に企業再生のための投資をする官製のファンドを、ということで作られました。

上の記事を書いた大西氏は、会社更生法民事再生法も出来ていたのに最初から無駄だ、と断じていますが、あの当時の私は呑気なもので、好ましくないが仕方ないかな、という程度の感覚でした。

それがまさか、16年を経て、これほどひどいことになるとは、恥ずかしながら予想していませんでした。産業再生機構はいったん2007年に解散されましたが、2009年に、地域経済活性化支援機構産業革新機構が出来ました。気が付いたら2つに。これが2013年に安倍政権になったら、12もの官民ファンドが設置され、各省がお相伴に預かることに。

その多くが損失を出す、それ以前に投資自体ろくにしないで巨額の資金を遊ばせている(原資は税金と財投です)、利益相反の疑いもある、民業を圧迫する、情報公開もやらないところは徹底してやらない。もう完全に、役人の財布です。国民負担がこれ以上増える前に官民ファンドは全廃して損切りして、遊んでる資金は全て国庫に返納させるべきです。

官民ファンドの多くの問題点については、薄井繭実「官民ファンドの現状と問題点」(参議院事務局『立法と調査』2016.12. No.383) が2016年頃までの状況を解りやすくまとめています。

www.sangiin.go.jp

公正取引委員会財務省も、官民ファンドの問題点を指摘してきた

上記の資料にも出ている通り、公正取引委員会は(一応は「公的再生支援による事業再生が可能となることを前提」とするものの)、官民ファンドは民業を圧迫するし、資源配分を歪めるし、モラルハザードも起こす可能性がある、と指摘しています(現にそうなっていますが)。そこで、補完性・必要最小限・透明性の三原則の下に、支援の在り方について、相当細かい規律を求めてきました。

www.jftc.go.jp

また、これも上の資料に出ていることですが、財務省も、財政投融資を所掌する立場から、2013年度に旧産業革新機構、2014年度に農林漁業成長産業化支援機構、2015 年度に海外需要開拓支援機構に、それぞれ監査を行い、改善を求めてきたようです。それでも大した変化はありませんでした。

www.mof.go.jp

会計検査院報告⇒革新機構軸の統合案⇒報酬問題で革新機構自体の存在意義問われる

更に昨年4月、会計検査院は、国会と内閣への報告として、「官民ファンドにおける業務運営の状況について」を発表しました。

www.jbaudit.go.jp

www.nikkei.com

2017年3月末時点で全体の4割強にあたる6つが損失を抱えていること、そもそも執行率の極めて低いファンドや投資先事業があること等が報告されています。

そこで、政府は今度は、産業革新投資機構を軸に、官民ファンドの統廃合を進めようとしました。

www.nikkei.com

ところが、革新機構の報酬問題で、この構想は頓挫。それどころか、革新機構自体の存続が問われる事態になっています。

現在の政府の官民ファンド監督は大甘。もう端的に全廃すべき。

官民ファンドについては、一応、「官民ファンドの活用促進に関する 関係閣僚会議」で「官民ファンドの運営に係る ガイドライン」というのを作ってはいるのですが、これによる検証が甘すぎます。

というより、関係閣僚会議というのは、官民ファンドを自分達で運営している役所の大臣が集まって話し合う場です。そもそも有効な監督は期待できないでしょう。これが関係閣僚会議の、そのまた幹事会という役人の集まりになると、更にヒサンなことに。

「官民ファンドの活用促進に関する関係閣僚会議幹事会」という、シン・ゴジラにでも出てきそうな名前の会議体の議事録を紹介します。革新投資機構で大モメだった去年の12月でさえ、各省の局長や審議官が集まって、わあわあ好き勝手言うばかりのように見えます↓ 

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kanmin_fund/dai11/gijigaiyou.pdf

結局、財務省が出てきて、財政制度等審議会財政投融資分科会に、管理強化案を出してきた、と報じられました。

www.nikkei.com

さすがに財務省ならまともな案だろう、と思ったら、これも緩すぎます。官民ファンドはどれも温存する、儲からないのは長期投資だからだ、適切な期中管理をすればいいんだ。そんな風に見えます。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_filp/proceedings/material/zaitoa301109/zaito301109_01.pdf

 そして、この案も参考に、経済財政諮問会議の改革工程表2018原案に官民ファンドに関する方針が入ったようです。下のスライドの28枚目(元の資料のp171)です。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/1210/shiryo_01-1-3.pdf

一応、使用見込みが低い出資金等の国庫納付・配当という文言も入ってはいますが、最終的な評価の物差しであるKPIはあくまで、累積損失のないファンドの数。国民の経済厚生が指標になっておらず、ファンドの数を減らす余地がなさそうに見えます。

もう政策目的と営利目的の矛盾を解消させるのは無理で、今のやり方を続ければ続けるほど損失は増えるだけです。ただちに官民ファンドは全廃すべきです。